トンネル内やカーブで自損事故を起こし、車が自走できなくなって停止しているところへ後続車が追突した場合、最初の自損事故と、その後に発生した追突事故は分けて整理する必要があります。
最初にガードレールや壁などへ衝突して自分の車を損傷させた部分は基本的に自損事故として扱われます。一方、停止後に後続車が追突した二次事故については、後続車側だけでなく、停止車側がどのような場所・状態で停止し、後続車に対する危険防止措置をどこまで行っていたかなどを踏まえて過失割合が検討されます。
「停止車への追突だから必ず0対100」とも、「最初に自損事故を起こした車が原因だから全責任を負う」とも一律にはいえません。特に見通しの悪いトンネル内カーブでは、停止位置、道路の種類、ハザードや停止表示器材、事故から追突までの時間、後続車の速度や前方注視状況などが重要になります。
最初の自損事故と後から起きた追突事故は分けて考える
例えば、カーブでスリップして左前輪やサスペンションを損傷し、その時点で自走不能になったとします。この最初の事故で生じた自車の損害については、相手のいない単独事故であれば原則として自分側の問題になります。車両保険に加入している場合は契約内容に応じて補償対象になる可能性があります。
しかし、その数分後に別の車が停止車へ追突した場合には、新たな交通事故が発生したことになります。そこで生じた追加損害については、二次事故における双方の過失を検討することになります。
したがって修理費を考える際にも、「最初の自損事故で壊れた部分」と「追突によって新たに壊れた部分」を可能な限り区別することが重要です。事故直後の写真、警察への説明、レッカー会社の記録、ドライブレコーダー映像などが後から重要な資料になることがあります。
停止中の車への追突でも0対100とは限らない
信号待ちなどで正常に停止している車へ後続車が追突した典型的な事故では、後続車側の過失が非常に大きくなるのが通常です。しかし、事故や故障によって車道上へ停止しているケースは事情が異なります。
特にカーブの途中、トンネル内、夜間、高速道路など、後続車から発見しにくい場所に車両が停止している場合には、停止車側が適切な危険防止措置を取っていたかが問題になることがあります。
一方、後続車にも前方を確認し、道路状況に応じて安全に停止できるよう運転する義務があります。警察庁も高速道路について、本線車道には故障車などが停止している場合があるため、後続車は危険を予測して走行することが重要だと案内しています。[参照:警察庁 高速道路での緊急事態]
そのため実際の過失割合は「追突した」という一点だけで決まるのではなく、事故現場の具体的状況を確認して判断されます。
ハザードを点灯していたことは重要だが、それだけで決まらない
停止車がハザードランプを点灯していたことは、後続車へ自車の存在を知らせるための重要な事情です。特にトンネル内では周囲が暗いため、非常点滅表示灯によって停止車の存在を知らせる意味は大きくなります。
ただし、ハザードを点灯していたという事実だけで停止車側の過失が必ずゼロになるわけではありません。どの道路だったのか、停止位置を変更できたのか、追突までどの程度の時間があったのか、ほかの警告措置が可能だったのかなども検討材料になります。
逆に、左前輪やストラットが大きく損傷して自走できなかったのであれば、「危険だから移動させるべきだった」と単純に評価できないこともあります。物理的に動かせない車を無理に走らせることは現実的ではなく、さらなる事故や車両損傷を招くおそれもあります。
高速道路・自動車専用道路なら停止表示器材も重要
事故現場が高速道路や自動車専用道路だった場合は、停止後の安全措置が特に重要になります。警察庁は、事故や故障によって本線車道や路肩へ停止した場合、発炎筒、停止表示板または停止表示灯を後方へ設置して後続車からの追突防止に努めるよう案内しています。[参照:警察庁 高速道路]
また、車内や車両付近にとどまることは危険であり、可能であればガードレール外などの安全な場所へ避難し、110番や非常電話などで通報することも案内されています。
一般道路のトンネルと高速道路のトンネルでは適用されるルールや現場状況が異なるため、「トンネル内だった」という情報だけでは過失割合を決められません。まず道路の種類を確認する必要があります。
過失割合を左右しやすいポイント
二次事故の過失割合を検討するときには、次のような事情が重要になります。
- 一般道路・高速道路・自動車専用道路のどれだったか
- 停止場所が直線かカーブか
- 後続車から停止車を何メートル程度手前で確認できたか
- トンネル内の照明や明るさ
- 停止車が車線をどの程度ふさいでいたか
- 路肩などへ移動できる状態だったか
- ハザードランプを点灯していたか
- 発炎筒や停止表示器材などを使用していたか
- 自損事故から追突までの経過時間
- すでに警察や道路管理者へ通報していたか
- 後続車の速度やブレーキ操作、前方不注視の有無
例えば自損事故直後で、足回りが破損して物理的に動かせず、ハザードを点灯して110番通報を行っている最中に追突されたケースと、長時間にわたり警告措置を取らず車線上へ放置していたケースでは評価が同じとは限りません。
またカーブで見通しが悪かったことは双方に関係する事情です。停止車側にとっては後続車から発見されにくい危険な場所である一方、後続車側にも見通しの悪いカーブに応じた速度・注意で走行していたかという問題があります。
相手の車のエンジン故障も二次事故の損害として整理される
追突した後続車のフロント部分やエンジンなどが壊れた場合、その損害についても二次事故の過失割合に応じて賠償関係が検討されます。「追突した側の車だから、壊れてもすべて自己負担」と自動的に決まるわけではありません。
例えば二次事故について停止車側にも一定割合の過失が認定されれば、その割合に応じて相手車両の損害を負担する可能性があります。一方、後続車側の過失が100%と評価されれば、原則として停止車側が相手車の物損を負担する関係にはなりません。
ここで重要なのは、警察が事故処理をしたからといって警察が民事上の過失割合まで最終決定するわけではないという点です。通常は当事者・保険会社間の協議で過失割合を決め、合意できなければADR、調停、訴訟などで争われることがあります。
自分の車の修理費は損傷箇所の切り分けが問題になる
二段階の事故では、自車の修理費について少し複雑になります。例えば最初のスリップ事故で左前のストラット、ホイール、フェンダーなどを損傷し、その後の追突でリアバンパー、バックドア、フレーム周辺などが壊れたのであれば、比較的損害を区別しやすくなります。
しかし最初の事故ですでに車体へ大きな損傷があり、二次事故でも同じ部分に力が加わった場合は、どこまでが一回目、どこからが二回目の損害なのか争いになることがあります。
そのため事故直後に撮影した写真や動画は非常に重要です。二次事故より前の自車の状態が写っていれば、「追突前にはここは壊れていなかった」と説明する資料になります。ドライブレコーダーも上書きされる前に映像を保存しておきましょう。
保険会社には「自損事故+その後の追突」と正確に伝える
任意保険へ連絡するときは、単に「トンネルで事故に遭った」と説明するのではなく、事故が二段階で発生したことを明確に伝えることが大切です。
「最初に単独でスリップして自走不能になった」「ハザードを点灯した」「警察とレッカーを手配した」「待機中に後続車から追突された」というように、時系列で説明します。警察へ通報した時刻、レッカーを依頼した時刻、二次事故が発生した時刻なども分かれば記録しておきます。
過失割合について相手方保険会社から数字を提示されても、その場で即答する必要はありません。自分の保険会社へ事故状況や証拠を共有し、提示された割合の根拠を確認してから判断することが重要です。
二次事故を防ぐため事故後は車から離れることも重要
トンネル内で自走不能になる事故は、二次衝突によって最初の事故以上に重大な結果になる危険があります。警察庁も高速道路では、停止した車内にとどまったり車両付近に立ったりすることは非常に危険だと注意喚起しています。[参照:警察庁]
事故後は、可能な範囲で後続車へ危険を知らせ、110番や道路管理者へ通報し、安全な場所へ避難することが基本です。ただしトンネル内では歩いて移動すること自体が危険な場合もあるため、非常口・避難通路など現場の設備や警察・道路管理者の指示に従います。
車両や荷物より人命を優先することが大切です。特に追突される危険がある場所では、忘れ物を取りに車へ戻ることも避けるべきです。
まとめ:自損部分と二次追突を分け、停止時の状況から過失割合を判断する
トンネル内のカーブで自損事故を起こして自走不能となり、その後に後続車から追突された場合、最初の自損事故と二次的な追突事故は分けて考える必要があります。最初の自損部分は基本的に自分側の負担となりますが、二次事故については別途過失割合が検討されます。
二次事故は「停止車だから必ず0対100」「自損事故を起こした車だから停止車にも必ず大きな過失がある」といった単純な判断はできません。道路の種類、カーブの見通し、停止位置、自走可能性、ハザードや停止表示器材、通報状況、追突までの時間、後続車の速度・前方注視などを総合して判断されます。
事故直後の写真、ドラレコ映像、110番・レッカーの通話履歴、事故時刻、停止位置などを保存し、自分の保険会社へ二つの事故の経緯を時系列で正確に伝えることが重要です。過失割合について相手側から提示があった場合も、事故状況に照らした根拠を確認してから協議するのが適切です。