スーパー店内で拾った財布は交番とサービスカウンターどちらに届ける?遺失物法と勤務中の対応を解説

スーパー、ショッピングモール、駅、ホテルなどで財布を拾った場合、「落とし物だから直接交番へ届ければよい」と考える人は少なくありません。しかし、道路上で拾った場合と、管理者がいる施設内で拾った場合では、遺失物法上の基本的な手続が異なります。

特にスーパーの従業員が勤務中に売り場で財布を拾ったケースでは、財布を善意で警察へ届けたことと、勤務先が定める拾得物の処理手順や勤務中の外出ルールを守ったかは別々に考える必要があります。警察へ届けたから勤務上の対応も必ず正しい、という関係にはなりません。

警察庁は、店や駅など管理者のいる施設内で落とし物を拾った場合には、速やかに従業員や施設管理者へ届けるよう案内しています。つまり、スーパー内の財布については「とにかく自分で交番へ持って行く」のが法律上の唯一の正解ではありません。ここでは、遺失物法の仕組みと、従業員が勤務中に拾った場合に店側から注意される理由を分けて解説します。

スーパー内で拾った財布は原則として施設の管理者へ届ける

警察庁の遺失物に関する案内では、落とし物を拾った人は、速やかに落とした本人へ返すか警察へ届けるのが基本とされています。ただし、駅、デパート、ホテル、病院、店舗など管理者がいる施設内で拾った場合については、施設の管理者へ届けるという別のルールが示されています。

警察庁は「お店等の施設で落とし物を拾った」場合について、駅係員、従業員、店員など施設の管理者に速やかに届けるよう明記しています。スーパーの売り場に落ちていた財布であれば、この「施設内で拾った場合」に該当するのが通常です。[参照:警察庁「お店等の施設で落とし物を拾った場合」]

したがって、「財布を拾ったら法律上必ず本人が直接交番へ持って行かなければならない」という理解は正確ではありません。スーパーのような施設では、まず店側へ引き渡し、その後に施設側が法律に沿って警察へ提出するのが原則的な流れです。

遺失物法では「施設占有者」という仕組みがある

遺失物法では、駅や店舗など一定の施設を管理している者を「施設占有者」として扱います。施設内で一般の人が物件を拾った場合には、その物件を施設占有者へ交付する仕組みになっています。

財布を受け取った施設占有者は、落とし主へ返還できる場合を除き、原則として警察へ提出することになります。つまり、施設内の落とし物では、拾った人→施設側→警察という経路が法律上予定されています。

警察庁の運用資料でも、施設内で拾得した人が直接警察署や交番へ持参した場合について特別な取扱いが定められており、施設占有者の同意が得られれば、施設占有者へ交付したものとみなして処理できるとされています。裏を返せば、施設内で拾った物について「施設には知らせなくても、自分の判断で直接警察へ持って行けば常に同じ」とされているわけではありません。[参照:警察庁「遺失物法等の解釈運用基準について」]

直接交番へ届けたこと自体が直ちに悪い行為になるわけではない

もっとも、財布を自分のものにしたのではなく、落とし主へ返す目的で交番へ持参し、そのまま警察官へ提出したのであれば、その行動を単純に「財布を盗んだ」と考えるのも適切ではありません。善意で落とし物を警察へ届けようとしたという事情は重要です。

警察庁の運用基準も、施設内の拾得物を拾得者本人が警察へ直接持参するケースが現実にあることを前提にしています。その場合、施設占有者から同意が得られれば、拾得者が施設側へ交付し、施設側の使者として警察へ提出したものとみなす取扱いができます。

ただし、これは「施設内でも施設側を無視して自由に警察へ持ち込むのが原則」という意味ではありません。善意で警察へ届けたことと、遺失物法が予定している施設内での手順を正確に守ったことは、分けて評価する必要があります。

なぜ店側はサービスカウンターへの届出を求めるのか

スーパーにとって、店内で拾われた財布をサービスカウンターなどに集約することには実務上の理由があります。財布をなくした客は、まず「店内で落としたかもしれない」とスーパーへ問い合わせる可能性が高いからです。

施設内の落とし物を従業員が店へ知らせないまま直接交番へ持って行くと、落とし主がサービスカウンターへ尋ねても、店側は一時的に「届いていません」と回答することになります。その後警察への確認が必要となり、落とし主・店舗・警察それぞれの連絡が増える可能性があります。

また店舗では、拾得日時、場所、財布の特徴、現金などの内容、拾得者などを記録し、一定の社内手続に従って管理している場合があります。店員が独自の判断で持ち出すと、その管理記録を作れないため、後になって「本当にその場所で拾われたのか」「店外へ持ち出している間に中身に変化がなかったか」といった確認も必要になり得ます。

勤務中のアルバイトなら「無断で店を離れたこと」も別問題になる

従業員の場合に特に重要なのが、遺失物法とは別に労働者として勤務中だったという点です。財布を届ける目的が善意であったとしても、勤務時間中に上司などへ知らせず店舗を離れて約20分間交番へ行ったのであれば、店長が勤務上の行動を問題にすることは十分考えられます。

厚生労働省のモデル就業規則では、勤務時間中に私用で事業場から外出する場合、事前に申し出て承認を得るという規程例が示されています。どのような外出ルールを採用するかは各事業場の就業規則等によりますが、勤務中の外出を会社の管理下に置くこと自体は一般的な考え方です。[参照:厚生労働省「モデル就業規則について」]

例えば品出し担当者が突然20分以上いなくなれば、その間の仕事をほかの従業員が補う必要が生じます。財布を届ける必要があったとしても、「サービス係がいなかった→自分の判断だけで勤務場所を離れて交番へ行く」ではなく、店長、社員、責任者などへ報告して指示を求めるという選択肢が考えられます。

サービスカウンターに人がいなければどうするのが適切だった?

サービスカウンターに誰もいなかったからといって、その場で無期限に待ち続ける必要があるわけではありません。しかしスーパーには通常、サービス係以外にも店長、副店長、売り場責任者、社員、事務所などがあります。

従業員が勤務中に財布を拾ったのであれば、「○○売り場で財布を拾いました。サービスカウンターが無人ですが、どうすればよいですか」と上司へ報告するのが分かりやすい対応です。店のマニュアルがあれば、それに従います。

例えばサービス係が戻るまで責任者が財布を預かる、別の社員がカウンター処理をする、会社側の担当者が後から警察へ届ける、といった対応が考えられます。警察に渡す必要があるとしても、「誰が警察へ届けるか」までアルバイト従業員が独断で決める必要は通常ありません。

店内の拾得物を店外へ持ち出すことにはリスクもある

現金数万円が入った財布を店外へ持ち出す場合、善意であっても慎重さが必要です。拾得時には3万円入っていたのか、5万円入っていたのか、カードが何枚あったのかなどについて、後から落とし主との認識が食い違う可能性があるからです。

店舗の決められた手続を利用すれば、複数人で内容を確認したり、拾得日時や場所を記録したりして、後日のトラブルを防止できます。従業員自身にとっても、「自分は一切抜き取っていない」ことを説明しやすくなります。

特に従業員は店側から一定の信頼を受けて業務をしているため、高額な現金入り財布を無断で施設外へ持ち出すという行為だけを見れば、管理上の心配をされる可能性があります。結果として交番へ提出していたとしても、「今後は勝手に持ち出さず責任者へ報告してください」と注意されることは不自然ではありません。

財布の中身を確認するのは問題?

落とし物の財布を拾った際、中身を必要以上に詳しく調べることも避けたほうが無難です。所有者を特定するため必要な範囲の確認が問題になるとは限りませんが、施設内であれば基本的にはそのまま管理者へ届ければ足ります。

現金の枚数やカードなどを確認する必要があるなら、店の定めた手続に従い、責任者や別の従業員がいる状態で確認したほうがトラブル防止になります。

財布に数万円入っていたことが分かったとしても、それを理由に通常の社内ルールを飛ばして自ら交番へ行かなければならないわけではありません。重要なのは財布を安全に管理し、正規のルートで落とし主へ戻せる状態にすることです。

「法律を守った」と「職場での対応が適切だった」は別の話

この種のトラブルで混同されやすいのが、法令上の問題と職場内の服務上の問題です。仮に警察へ財布を届けた行為そのものに犯罪性がなかったとしても、それだけで勤務中のすべての行動が適切だったことにはなりません。

論点 確認するポイント
落とし物の処理 施設内なら原則として施設管理者へ交付する
交番への提出 施設側が警察へ提出するのが基本。直接提出には別途の取扱いもある
勤務中の外出 勤務先の就業規則・上司への報告や許可が問題になる
財布の持出し 店の拾得物管理ルールに従ったか
同僚への対応 怒鳴るなどの言動は拾得物処理とは別に評価される

つまり「財布を着服せず警察へ渡したのだから何をしても問題ない」とはなりません。反対に、社内手順を誤ったからといって、善意で警察へ届けた意図まで否定されるわけでもありません。両方を切り分けることが大切です。

同僚に怒鳴ったことを店長から注意されるのも別問題

もう一つ切り分ける必要があるのが、サービスカウンター担当者との口論です。相手の説明に納得できなかったとしても、大声で怒鳴ったことについて店長から注意される可能性はあります。

これは「警察へ財布を届けたことが悪いから怒られた」とは限りません。店長から見れば、①店内拾得物を責任者に報告せず持ち出したこと、②勤務中に職場を離れたこと、③同僚に対して大声で威圧的な応答をしたこと、という複数の問題を見ていた可能性があります。

相手のサービス係の言い方にも問題があった可能性はありますが、それによって怒鳴ることが職場内で当然に正当化されるわけではありません。不満があれば、「カウンターで待ったが誰も来なかったため交番へ届けた。今後はどうすればよいのか」と責任者を交えて確認するほうが実務的です。

施設内で拾った場合は24時間という重要なルールもある

警察庁によると、管理者のいる施設で落とし物を拾った人が拾得者としての権利を得るためには、拾得から24時間以内に施設の管理者へ届ける必要があります。路上などで拾った場合に拾得者の権利を維持するための期間が7日であるのに対し、施設内では24時間と短くなっています。[参照:警察庁「お店等の施設で落とし物を拾った場合」]

拾得者には、一定の場合に落とし主へ報労金を請求する権利や、3か月経過しても所有者が判明しない場合に物件を受け取る権利があります。ただし施設内の拾得物では、報労金について施設側との関係も生じます。

この点からも、施設内の拾得物について施設管理者を介在させることが、遺失物法の仕組み上重要であることが分かります。

一般客がスーパーで財布を拾った場合も同じ?

従業員ではなく買い物客がスーパーの売り場で財布を拾った場合も、基本的にはサービスカウンターや店員などへ届けます。一般客の場合には勤務中の外出という問題はありませんが、拾得場所が「管理者のいる施設」である点は同じです。

例えばレジ近くで財布を拾ったなら、近くの店員へ「ここに落ちていました」と渡せば足ります。サービスカウンターが無人なら、別の店員を呼んでもらう方法があります。

逆にスーパーを出た後の公道や歩道で財布を拾ったのであれば、施設内拾得とは事情が変わり、警察署・交番などへの届出が基本的な選択肢となります。重要なのは財布の種類ではなく「どこで拾ったのか」です。

従業員なら最初に店の落とし物マニュアルを確認する

スーパー、百貨店、ホテル、駅など落とし物が多い施設では、独自の拾得物処理マニュアルが設けられていることがあります。従業員であれば、法律の一般論に加えてその業務手順を確認する必要があります。

例えば「拾ったら触らず責任者を呼ぶ」「サービスカウンターへ持参する」「現金入りの場合は社員2名で確認する」「台帳へ記録する」など、店舗ごとに手続が定められている可能性があります。

マニュアルが分からない場合は、独断で処理せず上司に確認するのが安全です。今回のようにサービス係が不在という例についても、事前に「カウンターが無人なら誰へ渡すのか」を確認しておけば、次回から迷わず対応できます。

まとめ|スーパーの財布は店側へ届けるのが原則。警察への届出と勤務上の行動は分けて考える

スーパーの売り場で財布を拾った場合、「落とし物だから自分で直接交番へ持って行くことが法律上の義務」と理解するのは正確ではありません。警察庁は、店舗など管理者がいる施設内で拾った落とし物については、速やかに従業員や施設管理者へ届けるよう案内しています。[参照:警察庁]

拾得者が直接警察へ持参する場合についても警察庁の運用上の取扱いはありますが、施設占有者の同意などが関係します。したがって、店側から「まずサービスカウンターや責任者へ届けてほしい」と言われることには、遺失物法上も店舗運営上も理由があります。

さらに勤務中の従業員であれば、財布を善意で警察へ届けたこととは別に、責任者へ報告せず店舗を離れたこと、店の拾得物処理ルールに従ったか、同僚へ怒鳴ったことなどが職場上の注意対象になる可能性があります。店長に注意されたからといって「落とし物を届けた善意そのものを否定された」とは限りません。

今後同様のことが起きた場合は、サービスカウンターが無人でも自分だけで店外へ持ち出さず、店長・社員・売り場責任者などへ「財布を拾ったがカウンターに担当者がいない」と報告し、店舗の手順に従うのが安全です。これなら落とし主への返還、法律上の処理、勤務先の管理のいずれについてもトラブルを避けやすくなります。

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