電車内で顔や上半身をしつこく撮影されたら違法?盗撮罪にならない場合の相談先・見回り依頼・対処法を解説

電車内で知らない人からスマートフォンを向けられ、顔や上半身を動画で繰り返し撮影されたり、場所を移動しても追いかけるように撮影されたりすると、強い不安や恐怖を感じることがあります。

一方、日本の法律では、一般に「本人の許可なく撮影した行為」のすべてが刑事事件としての盗撮に当たるわけではありません。特に、通常の衣服を着た人の顔や上半身を公共の場所で撮影したという事情だけでは、いわゆる盗撮犯罪として直ちに処罰できない場合があります。

しかし、顔を撮影しただけなら何をしても合法、警察にも鉄道会社にも相談できない、という意味ではありません。逃げても追いかける、何度も撮影を続ける、進路を妨害する、同じ人物が繰り返し現れる、脅すような言動を伴うといった事情があれば、撮影そのものとは別の法令や都道府県の迷惑防止条例などが問題になる可能性があります。

また、犯罪として直ちに立件できるかどうかと、防犯上の相談を受けてもらえるかどうかは別問題です。警察の相談窓口や駅員・鉄道会社へ状況を伝え、同様の行為への警戒や見回りについて相談することもできます。

この記事では、電車内で顔や上半身をしつこく撮影された場合について、2026年8月時点の法律や警察庁・警視庁の公式情報をもとに、なぜ一般的な「盗撮罪」と扱われないことがあるのか、悪質な場合に何が問題になり得るのか、どこへ相談すればよいのかを整理します。

顔や普通に服を着た上半身の撮影は「性的姿態等撮影罪」とは限らない

現在、日本には「性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律」があり、一定の盗撮行為を「性的姿態等撮影罪」として処罰しています。

法務省によると、対象になる「性的姿態等」には、性器や臀部、胸部などの性的な部位、通常衣服で覆われている下着、わいせつな行為などの姿態が含まれます。これらを正当な理由なくひそかに撮影するなど、法律が定める方法で撮影した場合が処罰対象になります。[参照:法務省 性犯罪関係の法改正等Q&A]

そのため、電車内で通常の服を着ている人の顔だけを撮影したケースや、一般的な意味での上半身全体を撮影したケースが、必ずこの犯罪に該当するわけではありません。[参照:e-Gov法令検索]

警察から「顔を撮られただけでは盗撮として取り締まれない」と説明される場合、このように刑事法上の盗撮犯罪の対象が限定されていることが背景の一つとして考えられます。

「盗撮罪にならない」ことと「どんな撮影でも問題ない」ことは別

ここで重要なのは、性的姿態等撮影罪に該当しないからといって、撮影者がどのような行動をしても問題にならないわけではないことです。

例えば、知らない相手が一度スマートフォンを向けて顔を撮影した場合と、撮影を嫌がって移動した相手を追いかけ、何度もカメラを向け続けた場合とでは状況が大きく異なります。

後者では、撮影された部位だけではなく、追いかけたのか、何回繰り返したのか、進路を塞いだのか、威圧的な言動があったのか、以前から同じ人物につきまとわれているのかといった一連の行動が重要になります。

警察へ再度相談するときは「顔を撮影された」という一点だけではなく、「逃げても追ってきて動画撮影を続けた」など具体的な行動を時系列で伝えることが大切です。

しつこく追いかける行為は都道府県の迷惑防止条例が問題になることもある

都道府県によっては、盗撮とは別に、悪意に基づくつきまとい行為などを迷惑防止条例で規制しています。実際に適用される条例は、行為が起きた都道府県によって異なります。

例えば東京都の迷惑防止条例第5条の2では、正当な理由なく、特定の人に対する妬み、恨みその他の悪意の感情を満たす目的で、不安を覚えさせる方法による一定のつきまとい行為などを反復することを禁止しています。[参照:東京都迷惑防止条例]

警視庁も、規制対象となり得る例として、相手の後方から追随する行為や、相手を隠し撮りした写真を送りつける行為などを紹介しています。[参照:警視庁]

ただし、東京都のこの規定には「悪意の感情を充足する目的」「反復」など複数の要件があります。一度の電車内での出来事だけで当然に条例違反になるとは限りません。

また東京都以外では条例の文言や規制内容が異なるため、「追いかけながら撮影された=必ず迷惑防止条例違反」と断定せず、発生地域を管轄する警察へ具体的状況を伝えて判断してもらう必要があります。

ストーカー規制法が使えるケースも限定されている

「追いかけられたのならストーカーではないか」と考えることもありますが、ストーカー規制法にも要件があります。

ストーカー規制法上の「つきまとい等」は、基本的に特定の人に対する恋愛感情その他の好意の感情、またはその感情が満たされなかったことに対する怨恨を充足する目的で行われる一定の行為を対象としています。[参照:e-Gov ストーカー規制法]

そのため、電車内で初めて遭遇した知らない人物が、理由不明のまま一度だけ追いながら撮影したという事情だけでは、ストーカー規制法の要件を満たすとは限りません。

一方、同じ人物が別の日にも駅や電車で待ち伏せする、学校や勤務先付近までついて来る、SNSなどでも接触してくるといったことが続く場合には状況が変わります。

同じ人が再び現れた場合は「前にもあったから気のせいではないか」と放置せず、日時・場所・行動を記録して警察へ相談してください。

警察で「事件にはできない」と言われても#9110へ相談できる

一度警察へ相談して「現時点では盗撮事件として扱うのは難しい」と言われた場合でも、相談そのものを諦める必要はありません。

警察庁は、犯罪に当たるかどうか分からないものの警察へ相談したい場合の窓口として、全国共通の警察相談専用電話「#9110」を案内しています。電話をかけた地域を管轄する警察本部などの相談窓口につながります。[参照:警察庁]

政府広報でも、#9110は「犯罪や事故に当たるのか分からないけれど警察に相談したい」という場合に利用する窓口として案内されています。相談内容によって専門部署を紹介される場合もあります。[参照:政府広報オンライン]

最初に対応した警察官へ「盗撮に該当しますか」と尋ねるだけでなく、#9110などでは「今後も同じ人物が現れそうで不安」「利用する路線なので防犯上の相談をしたい」「見回りについて相談したい」という目的まで具体的に伝えるとよいでしょう。

見回りを希望するなら警察だけでなく駅員・鉄道会社にも相談する

特定の路線や駅で起きた行為について「犯人を逮捕してほしいというより、同じことが起きないよう警戒してほしい」という希望なら、鉄道会社へ情報提供する方法もあります。

まず利用駅の駅員へ、何月何日の何時ごろ、どの路線・方向の列車で、どのような人物から、どのような撮影をされたのかを伝えます。鉄道会社によっては、お客様相談窓口や問い合わせフォームから防犯上の情報を伝えることもできます。

ただし、個人から「この時間に必ず巡回してください」と依頼したからといって、必ず特別な巡回が実施されるとは限りません。それでも、不審な行為が起きた場所・時間帯について鉄道事業者へ情報を残すことには意味があります。

同じ人物について複数の相談が寄せられている可能性もあるため、「犯罪として立件されなければ何も伝えない」と考える必要はありません。

その場で撮影が続いているなら駅員のいる場所へ移動する

実際に撮影されている最中は、法律上の罪名を考えるより安全の確保を優先してください。

車両を移動しても相手がついて来る場合は、可能であれば一人きりの場所へ逃げるのではなく、ほかの乗客がいる車両や駅員・乗務員へ助けを求められる場所へ移動します。

駅へ到着したら改札や駅事務室付近で駅員へ「この人に動画を撮られ続けていて、移動してもついて来る」と具体的に伝えます。危険を感じる行動、暴力、脅迫、進路妨害などがあり、今すぐ警察官に来てもらう必要がある状況なら110番です。

緊急の事件・事故ではないものの、その後の対応について相談したい場合は#9110を利用する、という使い分けができます。[参照:警察庁]

相手を自分で追いかけたりスマホを奪ったりしない

撮影されたことに気付くと「データを削除させたい」「証拠として相手のスマホを取り上げたい」と思うこともありますが、自分で相手を取り押さえたり、スマートフォンを奪ったりする行動には別のトラブルにつながる危険があります。

特に相手が興奮している、執拗について来る、体格差があるなどの場合は、直接対決を避けたほうが安全です。

駅員や警察官が近くにいるなら、自分で相手の行動を止めようとせず、第三者へ状況を説明してください。

また、相手の顔をネット上へ公開して「この盗撮犯を特定してください」と呼びかけることも、人物を取り違えた場合などに新たな問題を生む可能性があります。記録はまず警察や鉄道会社への相談資料として扱うのが安全です。

後日相談するときに残しておきたい情報

時間が経ってから警察や鉄道会社へ相談すると、「いつ・どこで・どのようなことが起きたか」を正確に説明することが重要になります。

可能であれば、直後に次の情報をメモしておきましょう。

  • 発生日とおおよその時刻
  • 利用した鉄道会社・路線名
  • 乗車駅と降車駅
  • 列車の行き先・進行方向
  • 乗っていた車両番号や位置
  • 撮影者の服装・年齢層・髪型など
  • 静止画か動画か
  • どのくらいの時間撮影されたか
  • 移動後もついて来たか
  • 相手から何か言われたか
  • 目撃者や一緒にいた人がいるか
  • 駅員や警察へ相談した日時・対応内容

例えば「18時ごろの電車」とだけ伝えるより、「8月28日18時15分ごろ、○○駅発△△方面、前から3両目で撮影され、隣の車両へ移動しても男性が追ってきて動画を撮り続けた」と説明したほうが、状況を伝えやすくなります。

特に「嫌だった」という感情だけでなく、相手が具体的に何をしたかをできるだけ客観的に記録しておくことがポイントです。

駅や電車の防犯カメラを確認してもらえる可能性は?

鉄道駅や車両には防犯カメラが設置されている場合があります。そのため相談時には、「その時間帯の防犯カメラが残っている可能性はありますか」と駅員や警察へ伝えてみる方法があります。

ただし、利用者本人が鉄道会社へ申し出れば自由に防犯カメラ映像を見せてもらえるとは限りません。映像にはほかの乗客も映っており、個人情報や防犯上の管理が必要だからです。

また、防犯カメラの設置状況や映像の保存期間は事業者・設備によって異なります。

そのため、同じ人物が繰り返し現れるなど重大な不安がある場合は、できるだけ早く警察や鉄道会社へ日時と場所を伝え、必要な確認が可能か相談するのがよいでしょう。

「見回りをしてほしい」という相談はしてよい

警察への相談は、必ずしも「相手を逮捕してほしい」「被害届を出したい」という目的だけに限られません。

警察庁の犯罪被害者向け案内では、#9110に寄せられた相談について、内容に応じて関係部署が連携し、指導、助言、相手方への警告、検挙など、相談者の不安を解消するために必要な措置を講じると説明しています。[参照:警察庁 犯罪被害者等施策]

したがって、「毎日利用する路線なので再び遭遇することが怖い」「この時間帯で同じようなことが起きていないか気になる」「可能なら警戒や見回りについて検討してほしい」と相談すること自体に問題はありません。

もちろん、実際にどのような警戒活動を行うかは警察や鉄道事業者が状況を踏まえて判断するため、希望した内容がそのまま実施されるとは限りません。

それでも、「逮捕できないなら相談しても意味がない」ということではありません。防犯上の不安として相談記録を残すという選択肢があります。

一度相談した警察の対応に納得できない場合はどうする?

最初に話した警察官から簡単な説明だけを受け、行為全体を十分に説明できなかった場合には、最寄りの警察署や#9110へ改めて相談できます。

その際には「盗撮として捕まえてほしい」とだけ伝えるより、「顔を撮影された後、こちらが逃げても追ってきて動画を撮影し続けた。今後も同じ路線を利用するので安全面を相談したい」という形で、撮影以外の行動も含めて説明すると内容が伝わりやすくなります。

また警察庁は、都道府県警察職員の職務執行について苦情がある場合、警察法第79条に基づいて当該都道府県の公安委員会へ文書で苦情を申し出る制度があることも案内しています。[参照:警察庁]

ただし、「自分が望む罪名で捜査してもらえなかった」というだけで直ちに職務上の問題になるわけではありません。まずは相談窓口で、行為の全体像と今後の安全への不安を伝えることを優先するとよいでしょう。

もし撮影した動画をSNSなどへ公開されたら別の問題が生じることもある

電車内で撮影されたことと、その映像がインターネット上へ投稿されることは分けて考える必要があります。

撮影者が顔が分かる状態で動画をSNSや動画サイトへ公開し、氏名・学校・勤務先などを添えたり、誹謗中傷する内容を投稿したりすれば、撮影行為だけの場合とは異なる法的問題が生じる可能性があります。

投稿を発見した場合は、慌てて投稿者と直接やり取りする前に、URL、アカウント名、投稿日時、投稿内容が分かるスクリーンショットなどを保存してください。

削除請求や発信者情報の開示などを検討する場合には、弁護士や法務局など専門的な相談先を利用する方法があります。公開の態様によって評価が変わるため、「顔が映った時点で必ず違法」「公共の場所だから何を公開しても自由」のどちらとも一概には言えません。

同じ人物に再び会った場合の行動を決めておく

同じ路線を日常的に利用する場合は、再遭遇したときにどう動くか決めておくと安心につながります。

相手を見つけたら直接問い詰めるのではなく、駅員や乗務員にすぐ相談できる場所へ移動し、前回も同じ人物から撮影されたことを伝えましょう。

再び後をついて来る、駅を降りても追って来る、進路を塞ぐ、脅迫的な言動をするなど危険が迫っている場合は、110番を利用することも検討してください。

複数回の出来事があれば、「○月○日にも同じ人物、○月○日にも同じ人物」という記録が、単発の出来事とは異なる重要な情報になります。

まとめ:顔の撮影だけで盗撮犯罪にならなくても、しつこい追随や撮影は改めて相談できる

通常の衣服を着た人の顔や一般的な上半身を電車内で撮影したという事情だけでは、性的姿態等撮影罪など、一般に「盗撮」と呼ばれる刑事犯罪に該当しない場合があります。性的姿態等撮影罪が対象とする撮影は、法律で一定の性的な部位・下着・姿態などに限定されています。[参照:法務省]

しかし、「顔の撮影だから取り締まれない」という一点だけで、逃げる相手を追いかけながら何度も動画撮影するような一連の行動まで、必ず何の問題にもならないと決まるわけではありません。つきまとい、脅迫、進路妨害、反復性、撮影の目的などによって、別の法律や都道府県の迷惑防止条例が検討される可能性があります。

緊急性はないものの今後が不安な場合は、警察相談専用電話#9110や最寄りの警察署へ相談できます。警察庁も、犯罪に当たるか分からない相談を#9110で受け付けています。[参照:政府広報オンライン]

また、「犯人を捕まえることより、同じ場所で再発しないよう警戒してほしい」という場合には、発生した路線の駅員や鉄道会社へ、日時・列車・車両・人物の特徴・行動内容を伝えて防犯上の相談をする方法もあります。

相談するときは「顔を撮られた」だけではなく、「移動して逃げてもついて来た」「何分間も動画を撮り続けた」「同じ人物が以前にもいた」など、相手が実際に取った行動を具体的に伝えることが重要です。日時、路線、車両、人物の特徴なども記録しておけば、その後の相談に役立ちます。

そして、再び同じ人物が現れて追いかけられるなど危険を感じた場合は、一人で対処しようとせず駅員や周囲へ助けを求め、緊急性がある場合には110番を利用してください。「典型的な盗撮罪に当たらない」という説明と、「安全についてこれ以上相談できない」ということは同じではありません。

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