SNSで知り合った相手にグッズの購入代行を依頼し、代金を先払いした後に商品を受け取れず、相手からブロックされて連絡も取れなくなった――。こうした個人間取引のトラブルでは、「金額が少ないから警察に相談できないのでは」と迷うことがあります。
しかし、被害額が1万円台など比較的少額であっても、詐欺の疑いがあると考える事情があれば警察へ相談して問題ありません。金額だけを理由に相談を諦める必要はありません。
ただし、「代金を払ったのに商品が届かない」という事実だけで直ちに刑事上の詐欺と確定するわけではありません。単なる契約トラブルなのか、最初から商品を渡す意思がなく金銭を受け取った疑いがあるのかなど、具体的な経緯によって判断が変わります。そのため、DM、送金記録、相手のアカウント情報などを保存したうえで相談することが重要です。
13,000円程度の被害でも警察に相談してよい
警察への相談について「○万円以上でなければ受け付けない」という一般的な最低被害額が設定されているわけではありません。SNSでの取引で金銭を支払った直後に連絡が取れなくなった、ブロックされた、約束した商品が渡されないといった事情があるなら、相談する合理的な理由があります。
緊急の事件・事故ではない場合には、最寄りの警察署へ相談するほか、警察相談専用電話の「#9110」を利用できます。金融庁も、振込みを利用した詐欺被害について、警察署または#9110への連絡を案内しています。[参照:金融庁 振り込め詐欺等の被害にあわれた方へ]
相談したからといって、その場で必ず事件として立件されたり、直ちに相手が逮捕されたりするわけではありません。まず事実関係や証拠を確認してもらうことが第一歩です。
「商品が届かない=必ず詐欺」とは限らない
ここは重要なポイントです。刑事上の詐欺と、民事上の契約トラブルは同じではありません。例えば相手が実際に購入するつもりだったものの、何らかの事情で取引を履行できなくなったケースと、最初からグッズを購入・引き渡す意思がないのに代金を送らせたケースでは意味が異なります。
一方、代金を受け取った後に突然ブロックする、説明や返金を一切しない、架空の購入報告をする、複数人から同様に代金を集めている、といった事情が確認できれば、相談時の重要な材料になります。
被害者側で「これは詐欺罪に間違いない」と法律上の結論まで出す必要はありません。「SNSのグッズ代行で代金を支払ったが、商品を受け取れずブロックされ、連絡不能になった」という事実をそのまま警察へ説明するのが適切です。
警察へ行く前に保存しておきたい証拠
SNS上の取引では、相手がアカウントを削除したり、メッセージが確認できなくなったりする可能性があります。そのため、現在確認できる情報は早めに保存しておきましょう。
- 相手のSNSアカウント名・ユーザーID・プロフィール画面
- グッズ代行を募集していた投稿
- 依頼内容について話したDM・チャット
- 商品名、個数、金額について合意したメッセージ
- 支払方法と支払日時が分かる記録
- 銀行振込なら振込先口座・名義・振込明細
- 電子決済なら取引番号・送金履歴
- 相手から提示された本人確認資料
- 会場で受け渡す約束をしていた場合は日時・場所が分かるDM
- 返信が途絶えた時点やブロックされたことが分かる画面
スクリーンショットだけでなく、可能なら会話の前後関係が分かるように保存しておくことが大切です。「8月○日募集投稿を見た→○日に依頼→○日に13,000円送金→○日に会場で受け取る予定→連絡が途絶える→ブロック」というように時系列表を作っておくと説明しやすくなります。
なお、相手から提示された身分証画像は重要な情報ですが、その身分証が本当に相手本人のものとは限りません。第三者の身分証画像を悪用している可能性も考えられるため、SNSへ画像や住所、氏名などを公開して「この人が犯人」と断定することは避け、警察などへ資料として提示するほうが安全です。
銀行振込なら振込先金融機関にも早めに相談する
代金を銀行口座へ振り込んだ場合、警察だけでなく振込先の金融機関への連絡も検討します。金融庁は、預金口座への振込みを利用した詐欺等の被害について、警察と振込先金融機関へ連絡するよう案内しています。[参照:金融庁]
犯罪に利用された預金口座については、振り込め詐欺救済法に基づいて、口座に残っている資金から被害回復分配金が支払われる可能性があります。ただし、すべての個人間トラブルが対象になるわけではなく、口座に資金が残っていなければ十分な回復ができないこともあります。
そのため「しばらく様子を見てから」と先延ばしにするより、詐欺の疑いが強いと感じた段階で警察と金融機関へ事情を伝えることが重要です。電子マネーや決済サービスを利用した場合も、利用したサービスの問い合わせ窓口で不正・取引トラブル時の対応を確認します。
警察への相談とお金を取り戻す手続きは別に考える
警察へ相談すれば自動的に13,000円が返金されるわけではありません。警察が扱う刑事上の問題と、支払った代金を取り戻す民事上の問題は分けて考える必要があります。
相手の氏名や住所が正確に分かっている場合には、返金を求める意思を記録が残る形で伝えることも考えられます。ただし、相手方の住所へ直接押しかけたり、SNSで個人情報を拡散したり、脅すようなメッセージを送ったりするのは避けましょう。
どのように返金を求めればよいか分からない場合には、消費者ホットライン188への相談も選択肢です。消費者庁では、インターネット取引で商品が届かないなどのトラブルについて消費生活相談窓口を案内しています。[参照:消費者庁 消費者ホットライン188]
相手の身分証をSNSで晒すのは避ける
被害に遭うと、「身分証を持っているのでSNSに公開して探したい」と考えることがあります。しかし、これは慎重になる必要があります。
身分証が偽造されている可能性だけでなく、まったく無関係な第三者から盗まれた画像が使われている可能性もあります。仮に身分証自体が本物でも、住所や生年月日、顔写真などを不特定多数へ公開すれば、新たなトラブルにつながりかねません。
身分証画像は公開するためではなく、相手を特定するための資料として警察へ提出・提示するという扱いが安全です。相手のSNSアカウントについても、まずURLやID、画面を証拠として保存してください。
「少額だから諦める」が危険な理由
1件あたりの金額が13,000円程度だと、「警察へ行くほどではない」と感じることもあるでしょう。しかし同じ人物が複数の利用者から同様の方法で代金を受け取っている可能性は、被害者側からは分かりません。
例えば1人あたり1万円程度でも、同じ手口が多数繰り返されていれば全体の被害は大きくなります。そのため、自分の被害額だけを見て相談する価値がないと判断する必要はありません。
一方で、SNS上で「この人は詐欺師です」と断定して独自に追及するより、保存した客観的資料を警察や決済事業者などへ提示するほうが適切です。警察庁も、詐欺かもしれないと不安を感じた場合の相談先として#9110を案内しています。[参照:警察庁]
今すぐ行うことを順番に整理
グッズ代行で代金を支払った後にブロックされた場合は、感情的に相手を追及するより、証拠を消さずに手続きを進めることが重要です。
- DM・募集投稿・プロフィール・送金履歴を保存する
- 相手から提示された身分証画像をそのまま保管する
- 取引開始からブロックまでを時系列で整理する
- 銀行振込なら振込先金融機関へ事情を相談する
- 決済サービスなら運営会社へ取引トラブルを報告する
- 最寄りの警察署または#9110へ相談する
- 必要に応じて消費者ホットライン188にも相談する
警察へ相談するときは「13,000円しかないのですが」と遠慮するより、「SNSでグッズ購入代行を依頼し、13,000円を支払った後、商品を受け取れないまま相手にブロックされた。DM、送金記録、提示された身分証情報が残っている」と事実を簡潔に説明すると状況が伝わりやすくなります。
まとめ:13,000円でも警察へ相談して問題ない。証拠を消さず早めに行動する
SNSのグッズ購入代行で代金を先払いした後、商品を受け取れず相手からブロックされて連絡不能になった場合、被害額が13,000円程度であっても警察へ相談して問題ありません。最寄りの警察署のほか、緊急性のない相談であれば警察相談専用電話#9110も利用できます。
ただし、商品が届かないという事実だけで直ちに詐欺と確定するわけではありません。だからこそ、取引のDM、募集投稿、送金記録、アカウント情報、本人確認として提示された資料、ブロックまでの経緯を保存し、事実をそのまま相談することが重要です。
銀行振込を利用した場合は振込先金融機関へも早めに相談し、必要に応じて消費者ホットライン188も利用しましょう。身分証などの個人情報をSNSへ晒して自力で追跡するのではなく、証拠として保全したうえで警察・金融機関・決済事業者など正規の窓口を通じて対応することが、安全かつ現実的な解決への第一歩です。