有名なピアニストやYouTuberが既存のヒット曲を演奏すると、「作曲家本人へその都度お金を払っているのだろうか」と疑問に思うことがあります。たとえば、ピアニストのハラミちゃんがゴダイゴの『銀河鉄道999』をピアノで演奏する場合も同様です。
音楽には著作権があり、他人が作った楽曲をコンサートやインターネット配信などで利用する場合、利用方法に応じた著作権処理が必要になることがあります。しかし、演奏者が作曲家本人へ演奏するたびに直接現金を支払う、という仕組みとは限りません。
実際には、JASRACなどの著作権管理事業者、コンサートの主催者、YouTubeなどのプラットフォームが関係するケースがあります。誰が手続きを行い、誰が使用料を負担するのかは「どこで、どのように曲を利用したか」によって変わります。
『銀河鉄道999』を弾くとタケカワユキヒデさんへ直接払うの?
ゴダイゴの『銀河鉄道999』はタケカワユキヒデさんが作曲した楽曲として知られています。このような著作権が存続している楽曲を公の場などで利用すると、著作権上の手続きが関係することがあります。
ただし、演奏者が「今日1回弾いたので作曲家へ○円を振り込む」という形になるとは限りません。JASRACは、管理する音楽について利用者へライセンスを行い、徴収した使用料を権利者へ分配する業務を行っています。[参照:JASRAC]
そのため、JASRACなどへ著作権管理が委託されている範囲については、所定の仕組みを通じて処理されるのが基本です。なお、具体的な権利者や管理状況は作品ごとに異なるため、JASRACの作品データベース「J-WID」などで確認することが重要です。
コンサートで演奏する場合は主催者側が手続きすることがある
コンサートやイベントでJASRAC管理楽曲を演奏する場合には、利用許諾の手続きがあります。JASRACはコンサート・イベントで管理楽曲を演奏利用する人向けのオンライン手続きも提供しています。[参照:JASRAC J-OPUS]
ここで重要なのは、ステージ上で実際にピアノを弾く人と、著作権手続きをする人が必ずしも同じではないことです。コンサートでは主催者など利用主体となる側が手続きを行うケースがあるため、出演者が作曲家へ直接支払うとは限りません。
例えば、あるホールで複数のアーティストが既存曲を演奏するイベントなら、出演者一人ひとりが各作曲家の銀行口座へ料金を送るのではなく、主催者側が利用楽曲を報告し、著作権管理事業者との契約・規程に従って使用料を処理するという形が考えられます。
著作権使用料はいくらなのか
「1曲弾いたら作曲家に○円」という全国一律の固定料金があるわけではありません。JASRACの著作物使用料規程では、演奏会などについて入場料、会場の定員、利用形態などを基に使用料を算定する仕組みが定められています。[参照:JASRAC 著作物使用料規程]
したがって「ハラミちゃんが『銀河鉄道999』を1回弾いたらタケカワユキヒデさんへ直接○○円」という単純な金額を示すことはできません。実際の使用料は、コンサートなのか、ライブハウスなのか、動画配信なのかなどによって異なります。
また徴収された使用料がそのまま一人の作曲家へ全額渡るという意味でもありません。作品の権利関係やJASRACの分配規程などに従って権利者へ分配されます。
YouTubeでピアノ演奏を公開する場合は仕組みが違う
コンサートではなく、ピアノ演奏を撮影してYouTubeへ投稿する場合には、インターネット配信に関する著作権が関係します。ただしYouTubeについては、JASRACとの間に利用許諾契約があります。
JASRACは、利用許諾契約を締結しているUGCサービスの一覧を公開しており、その中にYouTubeが含まれています。JASRAC管理楽曲について一定の条件を満たす一般ユーザーであれば、個別にJASRACへ利用許諾手続きを行わなくても動画をアップロードできる仕組みがあります。[参照:JASRAC 利用許諾契約を締結しているUGCサービス]
つまりYouTube上で既存曲をピアノ演奏した場合にも、「投稿者が作曲家へ直接お金を払う」という形とは限りません。プラットフォームと著作権管理事業者との契約によって処理される部分があります。
市販CDの音源を使う場合は「自分で演奏」と同じではない
ここで注意したいのが、自分でピアノを弾いて録音した動画と、市販されているゴダイゴのCD音源などを動画へ使用するケースは権利関係が同じではないことです。
楽曲そのものの作詞・作曲に関する著作権とは別に、市販音源にはレコード製作者や実演家などの権利が関係します。そのため「YouTubeがJASRACと契約しているから、市販CDの音源も自由に動画へ使える」という意味ではありません。
自分自身でピアノを演奏する、原曲の音源をそのまま使用する、編曲して演奏する、歌詞を画面へ掲載する、といった利用方法によって確認すべき権利が変わります。既存曲利用では「曲の著作権」と「録音された音源の権利」を区別すると理解しやすくなります。
ピアノアレンジなら何をしても自由というわけでもない
既存曲をピアノ1台で演奏すると、原曲とはかなり違った雰囲気になることがあります。しかし、ピアノでカバーしたから原曲の著作権が消えるわけではありません。
また、単なる演奏の範囲を超えて楽曲そのものへ大きな改変を加える場合には、編曲に関する権利など別の検討が必要になることがあります。JASRACが管理している権利の範囲と、著作者・音楽出版社などへ個別に確認すべき権利が常に同一とは限りません。
プロのアーティストによるカバー曲がCD、配信、コンサート、YouTubeなど複数の媒体で利用される場合、それぞれの利用形態に応じて必要な権利処理が行われます。
「演奏者が無料で弾けば著作権料も無料」とも限らない
演奏者本人が出演料を受け取っていない場合でも、それだけで著作権上の手続きがすべて不要になるとは限りません。著作権法には非営利・無料の演奏に関する規定がありますが、営利を目的としないこと、聴衆から料金を受けないこと、実演家へ報酬が支払われないことなどの条件があります。
したがって、プロのコンサート、企業イベント、商業施設、ライブ配信などについて「演奏者が無料で弾いたから大丈夫」と単純化するのは避けるべきです。
反対に家庭内で趣味としてピアノを弾くことと、チケットを販売する大規模コンサートで同じ曲を演奏することでは、著作権上の扱いも大きく異なります。
作曲家にはどうやってお金が届くのか
音楽著作権管理の大まかな流れは、「楽曲を利用する側 → 著作権管理事業者 → 権利者」と考えると理解しやすくなります。JASRAC自身も、音楽利用者へのライセンスと使用料の徴収、著作権者への分配を主要な役割として説明しています。[参照:JASRAC]
この仕組みがあるからこそ、コンサートで10曲演奏するとき、演奏者や主催者が10曲それぞれの作詞家・作曲家を探して個別交渉する必要を減らせます。
ただし、すべての楽曲・すべての権利がJASRAC管理というわけではありません。JASRAC管理外の作品については別の著作権管理事業者や権利者への確認が必要になることがあります。
まとめ:『銀河鉄道999』を弾いても作曲家へ直接その場で払うとは限らない
ハラミちゃんのようなピアニストが『銀河鉄道999』を演奏した場合、著作権の処理が必要になる場面はありますが、演奏者本人がタケカワユキヒデさんへ「1回演奏したので○円」と直接支払う仕組みとは限りません。
コンサートなら主催者などがJASRAC等との利用許諾手続きを行う場合があり、YouTubeならプラットフォームがJASRACと締結している包括的な契約によって処理される範囲があります。その後、徴収された使用料が所定の分配ルールに従って権利者へ分配されます。
また、自分でピアノを演奏する場合と原盤音源を使う場合、通常のカバーと大幅な編曲を行う場合でも必要な権利処理は異なります。「有名曲を1回弾く=作曲家へ直接定額を支払う」と考えるより、利用方法ごとに著作権管理の仕組みを通じて権利者へ還元される、と理解するのが分かりやすいでしょう。