当て逃げした相手が後から謝罪に来たら処罰されない?物損事故・報告義務・飲酒運転の疑いと警察対応を解説

自宅の塀やブロックなどを車に壊され、運転者がその場から立ち去った後、数時間たってから謝罪に来るケースがあります。被害者からすれば「なぜその場で警察へ連絡しなかったのか」「時間を置いたのは飲酒を隠すためではないか」と疑問を持つのも自然です。

ただし、後から謝罪に来たという事実だけで事故当時の飲酒運転を立証できるわけではありません。また、警察が事故を物損事故として扱うことと、事故後の報告義務違反などを捜査・処分するかどうかは別の問題です。

重要なのは「物損事故になったから逃げた事実が消える」「後から謝れば当て逃げではなくなる」と単純に考えないことです。事故発生時の状況、運転者が事故を認識していたか、警察への報告をしたか、飲酒を裏付ける証拠があるかなどによって判断されます。

物損事故と「当て逃げ」は同じ分類の話ではない

まず整理しておきたいのが、「物損事故」と「当て逃げ」は完全に対立する言葉ではないという点です。塀やブロック、門扉、駐車車両などを壊し、人が死傷していなければ、損害の種類としては基本的に物損事故です。

一方で事故を起こした運転者には、事故発生時に停止して必要な措置を取り、警察へ事故の日時・場所や損壊した物などを報告する義務があります。したがって、物損事故であることと、事故後に必要な報告をせず現場から立ち去ったことは別々に検討されます。

そのため「当て逃げから物損事故へ変更された」という説明を受けた場合も、それだけでは警察が報告義務違反の可能性を完全に否定したのか、単に事故証明などの事故区分を説明しただけなのか判断できません。担当警察官へ具体的な意味を確認する必要があります。

夜になって謝罪しただけで飲酒運転とは断定できない

早朝に事故を起こした人が現場を離れ、その日の夜になって名乗り出た場合、「飲酒していたから酒が抜けるまで待ったのでは」と疑いたくなるケースはあります。しかし、時間経過だけから飲酒運転だったと断定することはできません。

飲酒運転を処分するには、事故当時に酒気帯び・酒酔い運転の要件を満たしていたことを証拠によって認定する必要があります。警察庁は酒気帯び運転・酒酔い運転について厳しい刑事・行政処分を定めています。[参照:警察庁 飲酒運転を絶対にしない、させない]

事故直後なら呼気検査が有力な証拠になりますが、長時間経過してからでは事故当時のアルコール濃度を直接測定できません。ただし、時間が経過したから絶対に立証できないわけでもありません。警察庁の公表事例には、事故後のアルコール濃度の推定や参考人の供述などを組み合わせて事故当時の飲酒状態を立証した事例もあります。[参照:警察庁 交通事故事件捜査]

「警察が面倒だから刑事処分しなかった」とは事実確認なしに断定できない

被害者として納得できない対応を受けたとしても、「警察が面倒なので事件にしなかった」と理由を推測して断定するのは避けたほうがよいでしょう。警察内部でどのような証拠を確認し、どのような判断をしたのかは外部からは分からないためです。

例えば、運転者が事故を認識していたことを裏付けられるか、本人がいつ警察へ連絡したか、事故現場が道路交通法上の「道路」に該当する状況だったか、飲酒を示す客観的証拠が存在するかなど、法的評価には複数の事情が関係します。

したがって納得できない場合には、推測で批判するより「事故後に立ち去った行為についてどのように扱われているのか」「相手は警察へいつ報告したのか」「報告義務違反について確認したのか」など、具体的な質問を担当警察署へ行うほうが問題点を明確にできます。

後から謝罪や保険対応をしても事故直後の行動とは別問題

事故を起こした本人が後から被害者宅へ謝罪し、保険会社がブロック塀などの修理費を支払うことになれば、民事上の損害賠償については解決へ向かうことがあります。しかし、これは事故直後の道路交通法上の義務とは別の問題です。

例えば午前6時に塀へ衝突して立ち去り、午後8時に謝罪したという場合、午後8時に謝罪した事実だけで「午前6時に適切な事故報告を行った」ことになるわけではありません。反対に、後から謝罪したという事実だけで直ちに特定の犯罪が成立すると決まるわけでもありません。

「修理代を払うこと」「被害者へ謝ること」「事故直後に法律上必要な措置・報告を行ったか」は分けて考える必要があります。保険会社による賠償が始まったからといって、事故時の事実関係まで書き換わるわけではありません。

飲酒運転を疑うなら推測ではなく証拠を残す

事故当時の飲酒を疑う事情があるなら、「夜に来たから飲酒に違いない」と推測するより、事故当時の状況を示す証拠を確保することが重要です。

具体的には、防犯カメラやドライブレコーダーの映像、事故発生時刻が分かる記録、車両のナンバー、事故直後の写真、目撃者、相手との会話・メッセージ、相手が事故時刻や事故後の行動について説明した内容などを保存します。近隣店舗などに防犯カメラがある場合は、映像が上書きされる前に警察へその存在を伝えることも有用です。

特に相手自身が「酒を飲んでいた」「飲酒していたので帰った」などと発言した場合には、その日時・場所・発言内容を正確に記録し、警察へ伝えます。事実と推測を分離して説明することが大切です。

警察の説明に納得できないときの確認方法

警察の対応について疑問が残る場合は、まず事故を担当している警察官または交通事故を担当する部署へ、事故の現在の取扱いについて説明を求める方法があります。その際には感情的な評価ではなく、確認したい項目を整理すると話が進みやすくなります。

  • 事故は現在どのような扱いになっているのか
  • 運転者が現場を離れた事実は確認されているのか
  • 運転者はいつ警察へ事故を報告したのか
  • 事故後の報告義務についてどのような確認をしたのか
  • 飲酒を疑う事情を伝えた場合、その情報は記録されているか

担当者から十分な説明を得られない場合は、警察署の上席者や都道府県警察本部へ相談する方法があります。警察庁も、個別の事件・事故については当該事案を扱った都道府県警察へ相談するよう案内しており、緊急ではない警察相談には全国共通の「#9110」が利用できます。[参照:警察庁 ご意見、各種相談・情報提供等]

警察の職務執行そのものに不満がある場合は苦情申出制度もある

単に期待した処分にならなかったというだけではなく、警察官の説明や職務執行そのものについて具体的な不満がある場合には、正式な苦情申出制度も用意されています。

警察庁によると、都道府県警察職員の職務執行については警察本部へ苦情を申し出ることができるほか、警察法第79条に基づき、都道府県公安委員会へ文書で苦情を申し出る制度があります。公安委員会への苦情については、原則として処理結果が文書で通知されます。[参照:警察庁 警察法第79条に係る解釈・運用基準]

苦情を申し出る場合は、「処罰してくれなかった」という結論だけを書くより、事故日時、警察へ届けた日時、担当部署、どのような説明を受けたか、何を質問して何について回答がなかったかなどを時系列で整理すると具体的になります。

修理については警察対応と並行して進める

ブロック塀や門柱などが破損している場合、刑事・行政上の問題とは別に、修理費の賠償を進める必要があります。相手の自動車保険で対物賠償が行われるのであれば、保険会社の担当者、事故受付番号、連絡先などを確認しておきます。

修理前には破損箇所を複数方向から撮影し、可能なら事故前の写真も保存します。見積書、領収書、応急処置に必要だった費用などの資料も残しておくとよいでしょう。

ただし、保険会社との示談内容によっては後から追加請求することが難しくなる場合があります。損傷範囲が分からない段階で急いで最終的な示談をするのではなく、必要に応じて修理業者や保険会社へ確認してください。

まとめ:物損事故として処理されても「逃げた事実」が自動的になくなるわけではない

塀やブロックへ車を衝突させた運転者が現場から立ち去り、当日の夜になって謝罪した場合でも、後から謝罪・保険対応をしたという理由だけで、事故直後に必要だった措置や報告の問題が当然になくなるわけではありません。一方、夜になって現れたことだけを根拠に飲酒運転だったと断定することもできません。

また「物損事故として処理された」という説明だけでは、警察が事故後の立ち去りについてどのように判断したのかは分かりません。まず担当警察署へ、事故区分だけでなく、運転者が現場を離れた事実や報告義務についてどのような取扱いになっているのかを具体的に確認することが重要です。

その説明や警察官の職務執行について具体的な疑問が解消されない場合には、都道府県警察本部への相談や、都道府県公安委員会への苦情申出という制度もあります。飲酒の疑いについても憶測だけで結論を出さず、防犯カメラ、目撃者、事故時刻、相手の発言など客観的な材料を保存して警察へ伝えることが、事実関係を明らかにするための現実的な対応です。

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