任意整理で和解した借金を返済している途中でも、収入の減少などによって支払いを続けられなくなることがあります。数か月滞納すると、「一括請求されるのでは」「任意整理から自己破産へ変更できるのか」「自己破産の費用まで払えない」と不安になる人も少なくありません。
任意整理後に返済不能となった場合、自己破産を検討すること自体は可能です。また、自己破産費用についても、法律事務所独自の分割払いに対応している場合があるほか、一定の収入・資産要件を満たせば法テラスの民事法律扶助制度を利用できる可能性があります。重要なのは、滞納をさらに重ねる前に現在の収入・生活費・債務総額から「今後、本当に返済を継続できるのか」を再検討することです。
任意整理を3~4か月滞納すると一括請求される?
任意整理では、債権者との和解書に毎月の返済額だけでなく、返済を滞納した場合の取り扱いが定められているのが一般的です。そのため、「何か月滞納したら必ず一括請求」という全国共通の数字があるわけではなく、まず現在の和解契約を確認する必要があります。
和解条項には、一定回数・一定額以上の支払いを怠った場合に「期限の利益」を失う旨が定められていることがあります。期限の利益を失えば、それまで認められていた分割払いを続けられず、残額について一括での支払いを求められる可能性があります。
したがって「4か月目になった瞬間、必ず80万円を今すぐ払うよう言われる」とは断定できません。一方で、すでに3か月程度滞納しているなら、和解条件に抵触している可能性を考え、依頼中の弁護士・司法書士へ早急に確認すべき段階です。
任意整理中でも自己破産へ切り替えることはできる
任意整理を選択したからといって、その後ずっと任意整理を続けなければならないわけではありません。収入や生活状況が変わり、返済継続が困難になった場合には、自己破産など別の債務整理を検討できます。
自己破産は、債務者の財産を清算する破産手続と、一定の債務について支払責任を免除してもらう免責手続を組み合わせて進めるのが一般的です。免責が許可・確定すれば、税金などの非免責債権を除き、対象となる借金について支払責任が免除されます。
ただし「借金が80万円だから自己破産できる・できない」と金額だけで決まるものではありません。裁判所は収入、資産、負債、生活状況などを踏まえて支払不能かどうかを判断します。毎月いくらなら返せるのかという家計状況が重要になります。
自己破産の費用は分割払いにできる?
弁護士・司法書士事務所の費用を分割払いにできるかは、各事務所の契約条件によります。そのため「任意整理を滞納した人は自己破産費用を分割できない」という一律のルールはありません。ただし、毎月の分割費用を実際に支払える家計なのかを確認されることは当然考えられます。
費用の準備が難しい場合には、法テラスの民事法律扶助制度も重要な選択肢です。法テラスでは、収入や資産が一定基準以下であることなどの条件を満たす人を対象に、弁護士・司法書士費用等を立て替える制度を設けています。立替費用は原則として法テラスへ分割で返済します。[参照]
法テラスによると、立替制度には審査があり、立替金は分割払いとなり利息等はありません。なお、自己破産事件の予納金については、生活保護受給者を除き原則として立替対象外とされているため、「自己破産に必要なすべてのお金を法テラスが立て替えてくれる」と考えないよう注意が必要です。[参照]
自己破産の主なメリットとデメリット
最大のメリットは、免責許可決定が確定すれば、原則として対象となる借金の支払責任から解放されることです。任意整理では元本を分割返済するケースが一般的ですが、自己破産では支払不能な状態から生活を立て直すことを目的としています。
一方、自己破産では一定の価値を持つ財産が処分対象になる可能性があります。また破産手続中は、警備員など一部の資格・職業について法律上の制限が生じる場合があります。ただし裁判所の案内では、免責決定が確定すればこの資格制限は解除されると説明されています。[参照]
さらに破産者の氏名・住所は官報に掲載されます。また、破産後の一定期間は信用情報の影響により、新たなクレジットカードやローンなどの審査が難しくなることがあります。スマートフォンについては、端末代金を完済しているか、分割払いが残っているかなど契約状況によって扱いが変わるため、申立てを依頼する専門家へ契約内容を伝えて確認する必要があります。
実家暮らしなら親の収入や給与明細も必要になる?
自己破産は本人の手続なので、親が保証人・連帯保証人になっていない限り、本人が破産したという理由だけで親の借金になるわけではありません。ただし、実家で同居している場合には、家計の実態を説明するため同居家族に関する資料を求められることがあります。
必要書類は裁判所によって異なります。たとえば裁判所が公開している個人破産申立ての資料には、家計収支表や資産関係資料に加え、一定の場合に同居親族の収入を確認できる資料などを求める例があります。そのため「自分の破産なのだから親の収入資料は絶対に不要」とは言い切れません。[参照]
家族の給与明細や家計資料を提出する必要があるかは、申立先の裁判所、世帯の家計状況、誰が生活費を負担しているかなどによって異なります。父親の破産時に家族全員の給与資料や家計関係資料を集めた経験があったとしても、自分のケースでまったく同じ資料が必要になるとは限りません。
親の仕事や自分の勤務先に連絡が行く?
自己破産しただけで、裁判所が通常、本人の勤務先や家族の勤務先へ「この人は自己破産しました」と通知する制度ではありません。裁判所の破産手続Q&Aでも、勤務先や家族が破産債権者でない限り、裁判所から勤務先や家族へ通知することはないと案内されています。[参照]
ただし、勤務先から借金をしていて勤務先自体が債権者になっている場合など、個別事情によっては知られる可能性があります。また、申立てに必要な書類を勤務先から取得する過程で事情を尋ねられる可能性など、事実上知られる可能性までゼロとはいえません。
親についても、本人の自己破産によって親の仕事が当然に制限されるものではありません。ただし同居家族の収入資料などが必要になれば、書類を用意するため家族の協力が必要になる場合はあります。
任意整理を続けるか自己破産するかは「今後払えるか」で考える
数か月分を滞納していても、債権者が再度の分割払いに応じる可能性まで否定することはできません。しかし、それは債権者との交渉次第であり、従来の和解条件で返済を続けられる権利が当然に残っているとは限りません。
さらに重要なのは、滞納分だけを何とか用意できるかではなく、その後も毎月の返済を安定して継続できるかです。たとえば滞納分を家族から借りて解消しても、翌月から再び返済できなくなる家計なら、問題を先送りするだけになりかねません。
任意整理を依頼している事務所には、「3か月滞納している」「今後も現在の返済額を継続するのは難しい」「自己破産へ変更した場合の費用と必要書類を知りたい」とそのまま伝えることが重要です。返済できないことを隠して滞納を続けるより、自己破産やその他の方法を含めて早い段階で方針を再検討するほうが選択肢を整理しやすくなります。
まとめ:4か月目を待たず、現在の依頼先か法テラスへ相談を
任意整理を3~4か月滞納した場合に一括請求となるかは、債権者との和解内容によります。「4か月目になれば必ず一括請求」という共通ルールはありませんが、すでに期限の利益を失う条件に該当している可能性もあるため、和解書を確認する必要があります。
任意整理後でも、返済継続が困難になれば自己破産を検討できます。自己破産費用についても分割対応する事務所はあり、一定の条件を満たせば法テラスによる費用立替制度を利用できる可能性があります。任意整理を滞納したという事実だけで、自己破産の相談そのものを諦める必要はありません。
実家暮らしの場合、親の借金になるわけではありませんが、家計を説明するため同居家族の収入関係資料などが必要になる場合があります。一方、通常は裁判所から本人や親の勤務先へ破産を通知するわけではありません。すでに返済の見通しが立たないのであれば、一括請求が来るまで待つのではなく、現在依頼している専門家へ自己破産への方針変更を相談し、費用が難しければ法テラスの利用条件も確認することが現実的な対応です。