電気料金の見直しや電力会社の乗り換えを勧める訪問販売で、「今契約している電力会社のマイページを見せてください」と言われ、スマートフォンの画面を撮影されるケースがあります。契約を途中で断ったとしても、氏名や住所、お客様番号、供給地点特定番号などが写っていたのではないかと不安になることもあるでしょう。
結論から整理すると、マイページを撮影されたという事実だけで、電力契約が直ちに勝手に切り替わるとは限りません。電力・ガス取引監視等委員会も、契約の申込みをしていないのであれば、切替手続が勝手に進められることは基本的にないと案内しています。
ただし、電力会社のマイページや検針情報には、電力会社の切替えに利用される「お客様番号」や「供給地点特定番号」など重要な情報が表示されることがあります。さらに、訪問時に申込書へ途中まで記入していた場合は、単に「写真を撮られただけ」のケースより慎重に確認したほうが安心です。ここでは、どの情報が重要なのか、今すぐ何をすればよいのか、契約が進んでしまった場合のクーリング・オフまで具体的に解説します。
電気のマイページには切替えに必要な情報が表示されることがある
電力会社を変更するときには、現在契約している会社のお客様番号や、電気を使用している場所を識別する「供給地点特定番号」などが必要になります。資源エネルギー庁も、電力会社の切替えに必要となる主な情報として、お客様番号や供給地点特定番号を挙げています。[参照:資源エネルギー庁「電力会社の切り替え方法」]
以前は紙の検針票で確認することが多かった情報ですが、現在は電力会社のウェブサイトやアプリのマイページに表示されることもあります。営業担当者がマイページを撮影した場合、写真の範囲によっては氏名、住所、契約プラン、電気使用量、お客様番号、供給地点特定番号などが記録されている可能性があります。
これらはクレジットカードの暗証番号や銀行口座のパスワードと同じものではありませんが、電力契約の手続に使われる重要な契約情報です。知らない相手へ安易に見せないほうがよい情報であることは間違いありません。
情報を撮影されただけで勝手に電力会社を変更されるのか
この点については、公的機関からかなり明確な案内があります。電力・ガス取引監視等委員会の消費者向けQ&Aでは、「電気代・ガス代が安くなる。検針票を見せてください」と勧誘され、個人情報や供給地点特定番号を教えてしまった場合について説明しています。
同委員会は、契約の申込みをしていないのであれば、切替えの手続が勝手に進められてしまうことは基本的にないとしています。一方、不安な場合には、勧誘してきた会社へ連絡し、「契約するつもりがない」と改めて明確に伝えることを勧めています。[参照:電力・ガス取引監視等委員会「消費者向けQ&A」]
したがって、「マイページの写真を撮られた=もう勝手に契約変更される」と考えて必要以上に慌てる必要はありません。ただし、申込書へ氏名や住所などを書いた、署名した、タブレットで同意操作をした、といった事情がある場合には、申込みがどこまで進んだのか確認する必要があります。
途中まで申込書を書いた場合は「申込みをしていない」と決めつけない
訪問販売で注意したいのは、「最終的には断ったから契約していないはず」と本人が考えていても、事業者側の記録上どの段階まで手続が進んでいるか分からない場合があることです。
例えば、氏名、住所、電話番号、現在の電力会社、お客様番号、供給地点特定番号などを記入し、最後の署名前に中止した場合と、いったん署名までした後で「やっぱりやめます」と伝えた場合では意味が違います。また、紙そのものを手元へ取り戻したとしても、訪問担当者がすでに入力内容や紙面を撮影・送信していなかったかまでは、手元の紙だけから判断できません。
そのため、申込書へある程度記入した後に中止した場合は、勧誘会社へ連絡し、「電気の切替えを申し込む意思はなく、先ほどの申込みは撤回する。手続を進めないでほしい」と明確に伝えることをおすすめします。
マイページの写真で特に確認したい情報
撮影された画面に何が表示されていたか思い出せる場合は、情報の種類ごとにリスクを整理すると冷静に対応できます。
| 撮影された可能性のある情報 | 主な注意点 | 対応 |
|---|---|---|
| 氏名・住所 | 個人情報として営業などに利用される可能性 | 利用しないよう事業者へ申し入れる |
| お客様番号 | 電力切替えに使用される情報 | 切替手続がないか確認する |
| 供給地点特定番号 | 電気の供給場所を特定する22桁の番号 | 第三者へ安易に教えない |
| 契約プラン・使用量 | 料金比較や営業に利用できる | 不要な営業への利用を断る |
| メールアドレス・ログインID | アカウント情報の一部となる場合がある | 不審なログイン通知に注意する |
| パスワード・認証コード | アカウントへアクセスされる危険性が高まる | 直ちに変更する |
| 決済情報 | 表示内容によっては追加の注意が必要 | カード・口座の履歴も確認する |
消費者庁と電力・ガス取引監視等委員会も、検針票には氏名、住所、お客様番号、供給地点特定番号など重要な情報が含まれているとして、契約する意思のない事業者には見せないことを勧めています。[参照:消費者庁・電力・ガス取引監視等委員会「電気・ガスの契約トラブルなどに気をつけましょう」]
まず勧誘会社へ「契約しない・写真を利用しない」と伝える
契約を中止した直後であれば、最初に行いたいのは勧誘してきた事業者への意思表示です。訪問担当者個人の携帯番号しか分からない場合でも、できれば名刺、パンフレット、事業者の公式ウェブサイトなどから会社の正式な問い合わせ先を確認します。
連絡する内容は複雑である必要はありません。「本日訪問を受けたが、電気の乗り換え契約をする意思はない」「途中まで記入した申込手続はすべて撤回する」「現在の電力会社のマイページを撮影されたが、撮影データを契約手続や営業目的に利用しないでほしい」「可能であれば写真を削除してほしい」と伝えます。
電話だけよりも、メールや問い合わせフォームなど日時と内容が残る方法を併用すると後から説明しやすくなります。送信画面や返信メールも保存しておきましょう。
「写真を削除してください」と求めてもよい
マイページの写真に氏名、住所、お客様番号など本人を識別できる情報が含まれていれば、個人情報として取り扱われる可能性があります。契約をしないことが確定したのであれば、事業者へ写真の削除や利用停止を申し入れること自体は可能です。
個人情報保護法では、一定の要件のもと、本人が事業者に対して保有個人データの利用停止・消去などを請求できる制度があります。また個人情報取扱事業者には、利用する必要がなくなった個人データについて遅滞なく消去するよう努める規定もあります。[参照:個人情報保護委員会「個人情報保護法ガイドライン」]
ただし、「本人が削除と言えば、どんな情報でも必ずその場ですべて消去しなければならない」という単純な制度ではありません。事業者側に法令上の保存義務や正当な保存理由がある場合なども考えられるため、まず「何の目的で撮影したのか」「どこに保存しているのか」「契約しないので削除できるか」を正式な窓口へ確認するとよいでしょう。
現在契約中の電力会社にも確認しておくと安心
不安が強い場合は、現在利用している電力会社の公式問い合わせ窓口へ連絡し、「訪問販売員にお客様番号や供給地点特定番号が表示されたマイページを撮影された可能性がある」と相談しておく方法があります。
その時点で他社への切替えに関する処理や解約情報が確認できるか、今後何らかの通知が来た場合にどう対応すればよいかを聞いておきます。ただし、現在の電力会社が将来のあらゆる切替申請を事前に完全ブロックできるとは限らないため、「連絡しておけば絶対に大丈夫」という意味ではありません。
その後しばらくは、現在の電力会社のマイページ、メール、郵便物を確認してください。「解約のお知らせ」「電力会社切替えのお知らせ」「新しい電力会社からの契約書面」など身に覚えのない通知が来た場合は、すぐに記載事業者へ確認します。
訪問販売で契約が成立していた場合はクーリング・オフを確認する
確認した結果、すでに電力契約の申込みとして処理されていた場合でも、訪問販売であればクーリング・オフを利用できる可能性があります。特定商取引法では、訪問販売について法定書面を受け取った日から数えて原則8日以内であれば、書面または電子メールなどの電磁的記録によって申込みの撤回や契約解除ができます。[参照:消費者庁「特定商取引法ガイド・訪問販売」]
消費者庁も電気・ガスの訪問販売について、不要であればはっきり断り、契約してしまった場合でも書面受領日から8日以内ならクーリング・オフできると注意喚起しています。[参照:消費者庁「電気・ガス『料金が安くなる』などの不適切な勧誘に要注意」]
「契約したつもりはないから何もしなくてよい」と放置するより、申込みが登録されていると分かった段階で、クーリング・オフも含めて明確に解除の意思を通知するほうが安全です。
マイページのパスワードまで知られた可能性があるなら変更する
単に料金や契約番号が表示された画面を写真に撮られただけで、通常はその写真だけから電力会社のマイページへログインできるとは限りません。しかし、営業担当者の前でID・パスワードを入力した、パスワードが画面に表示されていた、認証コードを見せた、といった事情があれば別です。
その場合は、念のためマイページのパスワードを変更してください。同じパスワードをメールやほかのサービスでも使い回している場合は、そちらも変更します。可能であれば二段階認証などのセキュリティ機能も設定します。
なお、お客様番号や供給地点特定番号が知られたからといって、それだけでマイページのパスワードを破られるという意味ではありません。「契約切替えに使う情報」と「アカウントへログインする認証情報」は区別して考える必要があります。
訪問してきた会社名と実際の電力会社名は確認しておく
電気の訪問販売では、家を訪れた営業会社と、実際に電気を供給する小売電気事業者が別会社であるケースがあります。「○○社の者です」と名乗ったとしても、その会社自身が新しい電力会社とは限らず、販売代理店として勧誘している場合もあります。
電力・ガス取引監視等委員会は、勧誘を受けた際には、担当者の連絡先を記録し、誰が何のために勧誘しているのか確認するよう案内しています。[参照:電力・ガス取引監視等委員会]
「日本通信社」「○○電力の関係会社」などと名乗った場合でも、名称だけからその事業者の身元や勧誘内容が正当だったかを断定することはできません。名刺や申込書、パンフレットが残っているなら、訪問会社の正式名称、所在地、電話番号、代理店なのか、実際の契約先となる電力会社はどこなのかを確認しておきましょう。
今後かかってくる電話やSMSにも注意する
訪問時に氏名や電話番号も伝えている場合、その後「契約確認です」「電気の切替え確認です」と電話やSMSが来る可能性があります。本当に契約を希望していないのであれば、曖昧に同意せず「契約しません。申込みは撤回します」と明確に伝えます。
特に、「本人確認のため認証コードを教えてください」「手続を取り消すためにURLを開いてカード情報を入力してください」など、新しい情報の提供を求められた場合は慎重に対応してください。その連絡先をそのまま信用せず、会社の公式サイトに掲載されている電話番号へ自分から問い合わせるほうが安全です。
また、今後の勧誘が不要なら、その旨もはっきり伝えます。事業者名、訪問日時、担当者名、電話番号、何を撮影されたかをメモにしておくと、トラブルが生じた場合の相談材料になります。
不安な場合は消費者ホットライン188へ相談できる
「契約が成立したのか分からない」「事業者へ連絡したが話が通じない」「写真を消してほしいのに対応してもらえない」といった場合は、消費生活センターへ相談できます。全国共通の消費者ホットラインは局番なしの188で、地域の消費生活センターや消費生活相談窓口につながります。[参照:消費者庁「消費者ホットライン」]
電気・ガスの契約制度や小売事業者とのトラブルについては、電力・ガス取引監視等委員会にも相談窓口があります。2026年8月時点では電話番号は03-3501-5725、平日9時30分~18時15分の受付と案内されています。[参照:電力・ガス取引監視等委員会「相談窓口」]
相談するときは、「訪問日時」「事業者名」「担当者名」「どのような説明を受けたか」「申込書のどこまで書いたか」「紙は手元に戻ったか」「どのマイページ画面を撮影されたか」を整理して伝えると状況を判断してもらいやすくなります。
今すぐ行う対応を順番に整理
訪問販売員に電力会社のマイページを撮影されたものの、最終的には契約しないことにした場合は、次の順番で対応すると分かりやすいでしょう。
- 撮影されたマイページに何が表示されていたか確認する
- 訪問した会社の正式名称・連絡先・担当者名を記録する
- 事業者へ「契約する意思はない。申込みは撤回する」と記録が残る方法で伝える
- 撮影したマイページ画像を契約手続や営業に利用しないこと、可能なら削除することを求める
- 現在の電力会社へ事情を説明し、不審な切替手続の確認方法を聞く
- メール・郵便・マイページで契約変更の通知が来ないか確認する
- パスワードや認証情報まで見られた可能性があれば変更する
- すでに申込みが成立していればクーリング・オフを検討する
- 解決しなければ188や電力・ガス取引監視等委員会へ相談する
特に「紙を取り戻したから完全に終わった」とだけ考えるのではなく、事業者側のシステムへ申込情報が入力されていないことを確認できれば、より安心できます。
反対に、単にマイページを撮影されたことだけを理由に、現在の電力会社を解約したり銀行口座を止めたりする必要が通常あるわけではありません。撮影された情報の内容に応じて必要な対策を取ることが大切です。
まとめ|勝手な切替えは基本的に起きないが、申込途中なら明確に撤回して確認する
電気の訪問販売で現在の電力会社のマイページを撮影された場合、写真にお客様番号や供給地点特定番号など、電力会社の切替えに利用される重要な情報が含まれている可能性があります。そのため、契約するつもりがない事業者には本来見せないほうが安全な情報です。
ただし、電力・ガス取引監視等委員会は、契約の申込みをしていないのであれば、情報を教えただけで切替手続が勝手に進められることは基本的にないと案内しています。[参照:電力・ガス取引監視等委員会「消費者向けQ&A」]
一方、訪問時に申込書へ途中まで記入していた場合は、「契約する意思はない」「申込みを撤回する」「撮影した情報を契約手続に使用しないでほしい」と勧誘事業者へ明確に伝えておくことが重要です。可能であればメールなど記録の残る方法を使い、画像の削除についても申し入れます。
その後は現在契約している電力会社にも事情を伝え、新しい電力会社への切替えや解約に関する不審な通知が来ていないか確認します。もしすでに訪問販売による契約が成立していたとしても、法定書面を受け取ってから原則8日以内であればクーリング・オフを利用できる可能性があります。
「写真を撮られたから必ず悪用される」と断定する必要はありませんが、何もしないで不安を抱え続ける必要もありません。契約しない意思を記録に残す、撮影情報の利用停止・削除を申し入れる、現在の契約状況を確認するという3点を行えば、トラブルを早い段階で把握しやすくなります。不審な対応が続く場合は消費者ホットライン188や電力・ガス取引監視等委員会へ相談するとよいでしょう。