駅や商業施設などの階段でスカート内を盗撮された疑いがあり、犯人がその場から逃走した場合でも、逃げられたから捜査できない、泣き寝入りになると決まっているわけではありません。犯行現場の防犯カメラに行為そのものが映っており、さらに逃走経路にも複数の防犯カメラがあるのであれば、犯人特定につながる重要な手掛かりになり得ます。顔、服装、所持品、移動方向などを映像から確認し、周辺映像やその他の証拠と組み合わせて捜査される可能性があります。一方で、防犯カメラがあるから必ず特定・逮捕できるとまでは断言できません。重要なのは、すでに警察へ申告しているなら、見たこと・覚えていることをできるだけ正確に伝え、追加で思い出した情報も担当警察へ伝えることです。警察庁も痴漢・盗撮被害について、現場確認、事情聴取、衣服などの証拠確認、被害状況の再現見分などを行うことがあると案内しています。[参照]
防犯カメラに犯行現場が映っていれば有力な証拠になり得る
盗撮や痴漢事件では、被害者の説明だけでなく、防犯カメラ、目撃者、犯人の行動、所持品など複数の情報を組み合わせて捜査が行われます。
特に、スカートの下へスマートフォンなどを差し入れる様子が犯行現場のカメラに映っている場合には、単に「その場所にいた」という映像よりも、事件そのものを裏付ける重要な材料になる可能性があります。
さらに逃走した方向にも防犯カメラが複数ある場合、別の場所で顔がより鮮明に映っていたり、服装、靴、バッグ、スマートフォン、移動経路などが確認できたりすることがあります。犯行現場では顔が映っていなくても、前後の移動映像が手掛かりになることがあります。
逃げた犯人でも特定される可能性はある
現場で取り押さえられなかったからといって、その時点で事件が終わるわけではありません。警察が事件として捜査する場合、防犯カメラ映像や目撃情報などから人物を追うことがあります。
例えば、犯行場所から路地へ逃げた人物が、数十メートル先の店舗カメラ、その先の交差点カメラ、駅や施設のカメラなどに連続して映っていれば、逃走経路を確認できる可能性があります。
逆に、顔がまったく映っていない、周囲にカメラが少ない、映像が不鮮明、同じような服装の人物が多いなどの場合には、特定が難しくなることもあります。したがって、「特定できる可能性はあるが、映像があるだけで必ず特定できるとは限らない」というのが現実的な答えです。
防犯カメラ以外にも服装・時間・逃走方向が重要
犯人を特定する際には、映像だけでなく被害者自身が覚えている情報も重要です。事件が起きた正確な時刻、場所、犯人の身長の印象、髪型、服の色、バッグ、靴、スマートフォンの種類、逃げた方向などは捜査の手掛かりになります。
例えば「黒い上着だった」だけでは対象が多くても、「黒い上着、白いスニーカー、肩掛けバッグ、スマートフォンは青色、○○通り方向へ走った」と複数の特徴が重なると映像上の人物を追いやすくなります。
時間が経つと記憶が曖昧になりやすいため、思い出せることはスマートフォンのメモなどへ記録しておき、警察へまだ伝えていない情報があれば担当者へ追加で伝えるとよいでしょう。
「スマホのフォルダーを開いていた」は警察へ伝えておく価値がある
追いかけた際、相手のスマートフォン画面に写真フォルダーのようなものが表示されていたのであれば、その状況も警察へ伝えておく価値があります。
ただし、画面を見ただけで「写真を消していた」と断定するのは避けた方がよいでしょう。実際に削除操作をしていたのか、単に写真アプリを開いていただけなのかは外からは判断できないためです。
警察へは「追いついたときに写真フォルダーのような画面が開いているのを見た」「削除しているようにも見えた」というように、自分が実際に見た事実と推測を分けて説明すると捜査資料として扱いやすくなります。
仮に画像を消されていても事件が消えるわけではない
仮に犯人が撮影した画像をその場で削除していたとしても、それだけで事件そのものが存在しなかったことになるわけではありません。
犯行現場の防犯カメラに撮影行為が映っていたり、被害者の供述、犯人の行動、所持していた端末などから事実関係を裏付けられたりする可能性があります。
捜査上必要で、法的な手続を経て端末が押収された場合には、端末の内容などが調べられることも考えられます。ただし、削除データを必ず復元できるとは限らず、どのような解析を行うかも個別事件の捜査判断になります。
スカート内を盗撮すると性的姿態等撮影罪になる可能性がある
2023年7月13日から、全国共通の法律として「性的姿態撮影等処罰法」が施行されています。法務省によると、正当な理由なく、ひそかに性的な部位やそれを覆う下着などを撮影する行為は性的姿態等撮影罪の対象になります。[参照]
階段などで本人に気付かれないようスマートフォンをスカートの下へ差し入れ、下着などを撮影する典型的な盗撮行為は、この法律の対象になり得ます。
法定刑は3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金です。実際にどの罪が成立するかは撮影内容や行為態様、証拠などを踏まえて捜査機関・裁判所が判断します。[参照]
撮影ではなく身体を触られた場合は別の犯罪が問題になることもある
「痴漢」という言葉には、スカート内を撮影されたケースと、臀部や脚など身体を直接触られたケースの両方が含まれることがあります。
実際に身体へ触れられた場合は、行為の内容や状況によって不同意わいせつ罪や各都道府県の迷惑防止条例など、盗撮とは別の犯罪が問題になる可能性があります。
そのため警察には「スマートフォンを差し入れられた」「身体にも触れられた」「触られた感覚はなかった」など、できる限り具体的に説明することが重要です。罪名を被害者自身が判断する必要はありません。
逮捕される可能性はあるが、必ず逮捕されるとは限らない
防犯カメラなどから人物が特定され、犯罪の嫌疑が認められれば捜査が進み、状況によっては逮捕される可能性があります。
ただし刑事事件では、犯人が特定されたら必ずその場で逮捕されるという仕組みではありません。逃亡や証拠隠滅のおそれなどを踏まえ、逮捕せず任意で事情聴取を行う「在宅捜査」になる場合もあります。
そのため「逮捕されたかどうか」だけで捜査が進んでいるか判断しない方がよいでしょう。身柄を拘束されていなくても、警察が事情聴取や証拠収集を行い、事件を検察庁へ送る可能性があります。
警察がすでに防犯カメラを確認しているのは重要な状況
警察を呼び、すでに犯行場所の防犯カメラを確認してもらっている場合には、少なくとも事件発生直後から客観的資料へアクセスできていることになります。
防犯カメラ映像は保存期間が限られていることもあるため、事件直後に警察へ通報したことには大きな意味があります。早期であれば周辺施設の映像が残っている可能性も高くなります。
逃走先の路地や付近の店などに別のカメラがあることを把握している場合は、「あの角の店舗にもカメラがあった」「この方向へ逃げた」など、担当警察官へ伝えておくとよいでしょう。
自分で周辺店舗へ映像を見せてもらおうとしなくてもよい
犯人を捕まえたい気持ちから、自分で周辺店舗を回り防犯カメラ映像を集めようと考えることがあります。しかし、すでに警察が捜査しているのであれば、基本的には警察へ情報を伝えて任せる方法が安全です。
防犯カメラ映像には他の利用者も映っており、店舗側が一般の個人へ映像を直接見せられない場合があります。また、自分で犯人と思われる人物を探して接触するとトラブルや再被害につながる可能性があります。
「この場所にもカメラがある」と警察へ情報提供し、その映像を確認する必要があるかどうかは担当捜査員へ任せるのがよいでしょう。
SNSで犯人と思われる人物の画像を公開するのは避ける
防犯カメラや自分で撮った写真に犯人らしい人物が写っていたとしても、警察の確認を待たずSNSへ顔写真を公開して「この人が犯人です」と拡散することはおすすめできません。
別人だった場合に取り返しのつかない被害を与える可能性があります。また、捜査に影響を与えたり、犯人本人へ捜査状況を知らせて証拠隠滅や逃亡を促したりする可能性もあります。
手元に写真・動画・スクリーンショットなどがある場合は、加工やSNS投稿をせず、そのまま警察へ提供するのが適切です。
着ていた服や持ち物が証拠になる場合もある
警察庁は痴漢・盗撮被害について、被害時に着ていた衣服や持ち物から検挙につながる証拠が見つかることがあるため、警察が確認したり預かったりする場合があると案内しています。[参照]
身体接触を伴う痴漢であれば、衣服などに証拠が残る可能性があります。盗撮だけの場合でも、事件当時の服装を確認することが防犯カメラとの照合などに役立つ場合があります。
警察から保存や提出について指示を受けている場合は、その指示に従いましょう。まだ聞いていない場合でも、必要かどうか担当警察官へ確認できます。
警察では被害状況の再現を行う場合がある
警察庁によると、痴漢・盗撮事件の捜査では、被害者が立ち会い、被害当時の状況を再現する見分が行われる場合があります。[参照]
例えば階段のどの位置にいたか、犯人がどちらから来たか、スマートフォンをどのように差し出したように見えたかなどを確認することがあります。
こうした確認が精神的につらい場合には、我慢せず警察官へ伝えて構いません。警察庁も、被害状況の再現見分について「つらいと思ったら、すぐに言ってください」と案内しています。
事情聴取で「うまく説明できなかった」と思っても心配しすぎなくてよい
突然被害に遭った直後は、動揺して出来事を順番通り説明できなかったり、一部を思い出せなかったりすることがあります。
後から「犯人は右手にスマホを持っていた」「このブランドのバッグだった」などと思い出した場合は、その時点で担当警察官へ追加で伝えることができます。
逆に、覚えていないことを無理に埋める必要はありません。「そこは覚えていない」「こう見えたが確信はない」と正確に話すことが大切です。
被害届を出したか分からない場合は担当警察へ確認する
110番通報して警察官へ事情を説明したことと、被害届などの事件処理上の手続きがどの段階まで進んでいるかは別の場合があります。
「事件として捜査してほしい」「犯人を処罰してほしい」という意向がある場合には、担当している警察署へ、現在どのような扱いになっているか確認して構いません。
事件番号や担当部署、担当者名などを教えてもらっている場合は控えておくと、追加情報を伝えたいときに連絡しやすくなります。
捜査の進み具合はすぐ分からないこともある
防犯カメラが多数ある場合でも、それぞれの映像の確認、人物の照合、関係先への確認などに時間がかかることがあります。
数日連絡がないからといって、「何も捜査していない」「諦められた」とは限りません。一方で、長く連絡がなく状況が気になる場合には、担当警察署へ問い合わせることができます。
捜査上の理由からすべての捜査内容を教えてもらえるとは限りませんが、被害者として確認できる範囲について説明を受けられる場合があります。
防犯カメラ映像があっても不起訴になる場合はある
犯人が特定された場合でも、最終的に必ず起訴・有罪になるとは限りません。刑事事件では、警察の捜査後に検察官が証拠関係などを確認して起訴するかどうかを判断します。
映像だけでは撮影行為が明確に確認できない、端末に画像が残っていない、本人が否認しているなど、証拠状況によって結論が変わることがあります。
一方で、画像そのものが残っていなければ絶対に事件化できないという意味でもありません。防犯カメラ、被害者の説明、目撃情報、端末など、証拠は総合的に判断されます。
性犯罪・性暴力被害相談は#8103を利用できる
事件について警察へ相談したいものの、担当警察署以外にも相談先がほしい場合には、警察庁の性犯罪被害相談電話全国共通番号「#8103(ハートさん)」があります。発信地域を管轄する都道府県警察の相談窓口につながります。[参照]
警察庁の案内では、性別や年齢を問わず利用でき、匿名での相談も可能です。緊急性がある場合には110番が案内されています。
すでに事件を警察へ届けている場合でも、精神的につらい、今後の手続きについて相談したいといった場合に利用できます。
ワンストップ支援センター「#8891」も利用できる
性犯罪・性暴力の被害後には、警察への相談だけでなく、心理的な支援や法律相談などを受けたい場合もあります。その場合は「#8891(はやくワンストップ)」で最寄りの性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センターにつながります。[参照]
警察庁によると、ワンストップ支援センターでは医療的支援、法的支援、カウンセリングなどの心理的支援を提供しています。
身体的な被害がなくても、盗撮被害によって外出や階段、人混みが怖くなるなど精神的な負担が続くことがあります。必要ならこうした支援を利用できます。
警察では希望する性別の捜査員をお願いできる場合がある
性犯罪について事情を説明すること自体が大きな負担になることがあります。警察庁では、性犯罪被害者について希望する性別の捜査員が対応できるよう配慮する取り組みを行っています。[参照]
今後改めて事情聴取などがあり、男性または女性の警察官には話しにくいという希望がある場合は、担当警察へ伝えて構いません。
すべての場面で必ず希望どおりになるとは限りませんが、精神的な負担を我慢してまで黙っておく必要はありません。
犯人を自分で再び探したり追いかけたりしない
逃げた犯人を捕まえたいという気持ちがあっても、再び同じ場所へ行き、自分で人物を探して問い詰めることはおすすめできません。
犯人がどのような人物か分からず、逆上されたり、暴力を受けたりする危険があります。また、別人を犯人だと思い込んでトラブルになる可能性もあります。
すでに警察が映像を確認しているのであれば、犯人探しは警察へ任せ、追加の目撃情報やカメラの場所など、自分だけが知っている情報を伝えることに集中する方が安全です。
今後のために整理しておきたい情報
事件後に記録しておくと役立つ可能性がある事項を整理すると次のようになります。
| 項目 | 記録しておきたい内容 |
|---|---|
| 日時 | 被害に遭った日・おおよその時刻 |
| 場所 | 施設名、駅名、階段の位置など |
| 犯人の特徴 | 身長、体格、髪型、服、靴、バッグなど |
| 所持品 | スマートフォンの色・形など覚えている範囲 |
| 行為 | どのように近づき、何をされたか |
| スマホ画面 | 写真フォルダーのような画面を見たなど |
| 逃走方向 | どの道・路地へ逃げたか |
| 防犯カメラ | 犯行場所・逃走経路で見つけたカメラの位置 |
| 目撃者 | 近くにいた人や声をかけてくれた人 |
分からない項目は空欄で構いません。記憶を補うために想像で書くのではなく、確実に覚えていることと「たぶんそうだった」という情報を分けておくのがポイントです。
まとめ:犯行映像と複数の防犯カメラがあるなら特定の可能性はある
スカート内を盗撮された疑いがある事件で犯人に逃げられた場合でも、犯行現場を映した防犯カメラがあり、逃走経路にも複数のカメラがあるのであれば、人物特定につながる可能性は十分考えられます。犯行現場で顔が不鮮明でも、別の場所の映像、服装、所持品、移動経路などから捜査が進む場合があります。
ただし、防犯カメラがあるから必ず犯人が特定され、必ず逮捕されると保証することはできません。逮捕せず任意で捜査されるケースもあり、特定後にどのような刑事手続になるかは証拠状況によって異なります。
スカート内の下着などをひそかに撮影した場合は、現在の法律では性的姿態等撮影罪が成立する可能性があり、法定刑は3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金です。[参照]
すでに警察が犯行現場の防犯カメラを確認しているのであれば、事件直後に通報したことは重要な一歩です。写真フォルダーのような画面を見たこと、逃走方向、周囲にほかの防犯カメラがあることなど、まだ伝えていない情報があれば担当警察へ追加で伝えましょう。自分で犯人を探したりSNSで人物を公開したりするのは避け、捜査は警察へ任せるのが安全です。
今後の事情聴取や事件への不安が強い場合には、警察の性犯罪被害相談「#8103」や、性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター「#8891」も利用できます。[参照]