SNSの誹謗中傷で発信者情報開示の意見照会は届く?対象となる投稿・届くまでの期間・届いた場合の対応を解説

SNSのDMや投稿で他人を誹謗中傷した場合、後になって気になるのが「発信者情報開示請求をされる可能性があるのか」「プロバイダから意見照会書が届くのか」という点です。特に、相手を侮辱する表現、性的な評価、犯罪や虐待をするかのような表現、過去の動画を添えた批判などは、単なる感想との境界が問題になることがあります。

発信者情報開示の制度は、インターネット上の投稿によって権利を侵害されたと主張する人が、一定の要件のもとで投稿者を特定するための情報開示を求める仕組みです。現在は旧「プロバイダ責任制限法」が改正され、2025年4月1日から「情報流通プラットフォーム対処法」として施行されています。[参照]

この記事では、SNS上の誹謗中傷と発信者情報開示の関係、意見照会が行われる場面、届くまでの期間、DMと公開投稿の違い、実際に通知が来た場合の対応まで整理します。

SNSの誹謗中傷で発信者情報開示が問題になる仕組み

発信者情報開示は、「不快なことを書かれたら必ず投稿者を特定できる」という制度ではありません。開示には法的な要件があり、問題となった情報によって名誉権やプライバシーなどの権利が侵害されたことが明らかであるかなど、具体的な事情が検討されます。

名誉毀損に当たるかどうかについても、単語だけで機械的に決まるわけではありません。投稿内容、前後の文脈、公開範囲、対象者が特定できるか、事実を示した表現なのか単なる意見・論評なのかといった事情によって判断が変わります。情報流通プラットフォーム対処法関連のガイドラインでも、最終的な法的判断は裁判所によって行われることが示されています。[参照]

そのため、SNSで強い言葉を使ったから即座に開示されるとも、個人的な感想だから絶対に開示されないとも言い切れません。投稿全体の内容と、それによって具体的にどの権利が侵害されたと評価されるかが重要です。

どのような投稿が開示請求の対象になり得るのか

典型的に問題になりやすいのは、特定の人物について社会的評価を低下させるような具体的事実を示す投稿や、人格を強く攻撃する侮辱的な投稿です。また、私生活上の事実を本人の意思に反して公開すれば、プライバシー侵害が問題になる場合もあります。

例えば、特定できる人物について「この人は子どもに暴力を振るいそうだ」と投稿した場合でも、単なる将来への懸念として読まれるのか、その人物に危険性があるとの印象を与える表現なのかなど、文脈によって評価は変わります。さらに過去の動画を添付すれば、動画の内容や投稿文との組み合わせも含めて判断される可能性があります。

配偶者などについて性的に奔放であることを意味する蔑称を使った場合も注意が必要です。単なる悪口なのか、具体的な性的行動について事実を示していると受け取られるのかによって、侮辱や名誉毀損などの評価が変わり得ます。

また、対象者が実名でなくても、アカウント名、写真、動画、プロフィール、過去の投稿などを組み合わせることで「誰について書かれたものなのか」が第三者に分かるケースがあります。匿名アカウント同士だから法的問題にならないとは限りません。

DMでの誹謗中傷と公開投稿は同じなのか

ここは重要なポイントです。SNS上の公開投稿と、相手本人だけに送った1対1のDMでは法的な検討事項が同じとは限りません。

名誉毀損では、不特定または多数の人に伝わり得る状態だったかという「公然性」が重要になります。本人だけに送った完全な1対1のメッセージであれば、公開投稿と同じ形で名誉毀損が成立するとは限りません。一方、DMだから何を書いても法的責任が発生しないという意味でもありません。内容によっては侮辱、不法行為、脅迫など別の問題が検討される可能性があります。

さらに、「本人へのDM」と「その人物についてSNS上で公開した投稿」の両方が存在する場合は分けて考える必要があります。公開投稿については第三者が閲覧できるため、名誉やプライバシーなどへの影響がより直接的に問題になりやすくなります。

意見照会書はプロバイダが勝手に送ってくるものではない

発信者情報開示について誤解されやすいのが、「問題のある投稿をするとプロバイダが発見し、自動的に意見照会書を送ってくる」というイメージです。通常はそのような仕組みではありません。

基本的には、権利を侵害されたと考える人が発信者情報の開示を求め、それを受けた事業者が法令や手続に従って対応していく流れになります。裁判所を利用した発信者情報開示命令という手続も設けられています。裁判所にも発信者情報開示命令事件の手続が用意されています。[参照]

したがって、「この表現なら必ず意見照会が来る」という基準が存在するわけではありません。そもそも相手が開示を求める行動を取るか、対象となる投稿について開示の要件が認められるか、必要な通信記録が残っているかなど、複数の条件が関係します。

意見照会は投稿から何日後に届くのか

「投稿から○日後に届く」という一律の期間はありません。これは、相手がいつ手続きを始めるのか、SNS運営会社への手続がどの程度かかるのか、裁判手続を利用するのか、アクセスプロバイダがいつ情報を受け取るのかなどによって大きく変わるためです。

例えば、投稿直後に相手が弁護士へ相談して速やかに手続きを開始するケースと、数週間・数か月経過してから相談するケースでは当然スケジュールが異なります。また、SNS事業者から接続情報を得た後にアクセスプロバイダへ手続きを進めるケースなど、複数段階の処理が必要になることもあります。

そのため「1か月経って何も来なかったから大丈夫」「3か月来なければ開示されない」といった判断はできません。裁判所が案内している発信者情報開示命令事件でも、コンテンツプロバイダとアクセスプロバイダが関係する手続が想定されています。[参照]

投稿を削除すれば開示請求されなくなるのか

問題の投稿に気付いた時点で削除することは、被害の拡大を防ぐという意味では重要です。しかし、削除したから過去の投稿について開示請求や損害賠償請求が絶対にできなくなるわけではありません。

相手がすでにスクリーンショット、URL、投稿日時などを保存している可能性があります。また、サービス事業者側に一定期間の記録が残っている可能性もあります。したがって「消したので最初から存在しなかったことになる」という理解は避けるべきです。

一方で、問題があると認識しながら同様の投稿を続けたり、相手への攻撃を繰り返したりすれば状況を悪化させる可能性があります。新たな投稿やDMで反論を続けるより、まず問題となり得る行為を止めることが重要です。

意見照会書が届いた場合にやってはいけないこと

実際にプロバイダなどから発信者情報開示に関する意見照会書が届いた場合、驚いて放置したくなるかもしれません。しかし、書類を無視することが有利になるとは限りません。

意見照会では、開示に同意するか否か、その理由などについて回答を求められることがあります。開示に同意しない場合でも、法的に意味のある理由を整理して回答する必要が生じます。感情的に「悪口ではない」「相手も悪い」とだけ書けば十分というものではありません。

また、相手本人へ直接連絡して「開示請求を取り下げてほしい」と迫ったり、証拠になりそうなものを慌てて消したりする行動は避けた方が安全です。書類が届いた段階では、投稿内容、投稿日時、相手とのやり取り、届いた書類を保存したうえで、インターネット上の誹謗中傷や発信者情報開示を扱う弁護士に相談する方法があります。

相手にも問題発言があった場合はどうなる?

ネット上のトラブルでは、「相手も以前ひどい発言をしていた」というケースが珍しくありません。しかし、相手に過去の問題発言があったことと、自分の投稿が適法かどうかは原則として別の問題です。

例えば、相手が以前暴言を吐いていた動画が存在するとしても、それだけで第三者が自由に侮辱したり、根拠のない事実を付け加えたりしてよいことにはなりません。一方で、その動画を根拠として社会的に意味のあるテーマについて批評した場合には、投稿の目的、根拠、表現方法などを含めた別の法的評価が必要になります。

つまり「相手にも非があるから開示されない」と単純化することも、「批判したら必ず開示される」と考えることも適切ではありません。個別の投稿について具体的に判断する必要があります。

発信者情報開示と損害賠償請求は別の段階

発信者情報が開示されたからといって、その時点で損害賠償額まで自動的に確定するわけではありません。発信者情報開示は、匿名の投稿者を特定するための手続です。

投稿者が特定された後、相手から損害賠償を請求されたり、示談交渉が行われたりする可能性があります。そこで合意できなければ民事訴訟に発展する場合もあります。反対に、開示されたすべてのケースが必ず裁判まで進むわけでもありません。

ネット上では「この言葉なら慰謝料○万円」「この投稿なら100%開示」といった断定的な情報も見かけますが、実際には投稿内容、拡散規模、投稿回数、被害の程度、削除や謝罪の有無などさまざまな事情が関係します。

まとめ:誹謗中傷の意見照会は「何日で来る」とは決まっていない

SNS上の誹謗中傷について発信者情報開示の対象となるかどうかは、使用した言葉だけでは判断できません。投稿によって誰のどのような権利が侵害されたのか、公開範囲、文脈、対象者の特定可能性などを総合的に確認する必要があります。

特に、本人だけへのDMと一般公開された投稿では法的な論点が異なります。また、プロバイダからの意見照会について「投稿から○日以内」という一律の期限はなく、被害を訴える側が手続きを始める時期や手続方法などによって到着時期は変わります。

問題になりそうな投稿をしてしまった場合は、同様の投稿や接触を繰り返さないことが重要です。実際に発信者情報開示に関する意見照会書、裁判所からの書類、弁護士名義の通知などが届いた場合には、放置せず、書類と投稿記録を保存したうえで専門家への相談を検討してください。制度そのものについては、情報流通プラットフォーム対処法関連情報サイトや裁判所の公式情報を確認すると、ネット上の断片的な情報より正確に理解できます。[参照]

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