電車内で同じ人物から繰り返し近づかれる、身体や股間を不自然に寄せられる、車両を移動しても追ってくる、改札を出た後までついてくる――。こうした状況では、実際に身体へ触れられたかどうかだけで危険性を判断するべきではありません。特に、乗車時間や車両を変えても同じ人物が現れる場合には、偶然と決めつけず、安全確保を最優先にして警察や鉄道会社へ相談することが重要です。
つきまとい行為は状況によってストーカー規制法その他の法令に関係する可能性があります。ただし、どの法律が適用されるかは、行為の内容、反復性、目的、証拠などによって異なります。この記事では、電車内から駅の外までつきまとわれる場合に、本人が直接対決せずに取れる現実的な対策を、公的機関の情報を踏まえて整理します。
触られていなくても「相談するほどではない」と考える必要はない
痴漢という言葉から、身体を直接触られる行為だけをイメージする人も少なくありません。しかし、安全上重要なのは名称ではなく、相手がどのような行動を繰り返しているかです。
例えば、空席があるのに毎回すぐ目の前へ立つ、身体の特定部分を繰り返し近づける、避けても別の車両まで追ってくる、降車後も尾行する、といった行動が続いているなら、単発の偶然とは異なる事情として警察へ具体的に伝える価値があります。
政府広報では、ストーカー規制法上の行為として、つきまとい、待ち伏せ、立ちふさがり、見張り、押し掛け、付近をうろつく行為などが示されています。ただし、法律上の「ストーカー行為」に該当するかどうかには法定の要件があるため、被害者自身が法律名を判断する必要はありません。日時・場所・相手の行動をそのまま警察へ伝えることが大切です。[参照:政府広報オンライン]
車両を変えても追ってくる場合は「その場から逃げ続ける」以外の対策も必要
相手を避けるために乗車時間や車両を変えることは安全対策の一つですが、それでも同じ人物が現れる場合、被害者だけが行動パターンを変更し続ける方法には限界があります。
特に、駅で降りた後まで追跡される場合には、人気のない道や自宅方向へそのまま移動することを避け、駅員のいる改札、交番、警察署、営業中の店舗など人がおり助けを求められる場所へ移動する方が安全です。危険が目前に迫っている場合や、相手が追跡をやめないなど緊急性がある場合は110番通報を検討します。緊急ではない継続的な相談には警察相談専用電話「#9110」も利用できます。[参照:警察庁]
例えば電車内で相手が追ってきた場合、「次の車両へ逃げれば大丈夫」と考えるだけではなく、可能であれば駅員や乗務員に「同じ人物に何度もついてこられている」「降りても追われる可能性がある」と伝えます。自分から相手を問い詰めたり、取り押さえたりする必要はありません。
すでに警察へ相談している場合に追加で伝えたい情報
一度警察へ相談していても、その後につきまといが続いたり、行動が変化したりした場合には、その都度追加情報として伝えることが重要です。特に「電車内だけだった行為が改札の外まで続くようになった」「乗る時間を変更したのに再び現れた」といった変化は、安全上重要な情報になります。
政府広報では、警察へ相談する際、被害の日時、場所、状況などを記録し、証拠となる物や記録を残して持参することが案内されています。メッセージや着信がある場合は保存し、つきまといなどについても可能な範囲で記録することが示されています。[参照:政府広報オンライン]
そこで、無理のない範囲で次のような記録を作っておくと、継続性を説明しやすくなります。
- 遭遇した年月日と時刻
- 路線名、駅名、乗車した車両
- 相手が乗ってきた駅・降りた駅
- 相手の服装や外見上の特徴
- どのように近づいてきたか
- 車両を変えた後にも追ってきたか
- 改札の外までついてきたか
- 駅員や第三者に助けを求めた日時
- 警察へ相談した日時や相談内容
ただし、証拠を撮影するために相手へ近づいたり、相手に気付かれるような撮影を無理に行ったりする必要はありません。証拠より自分の安全が優先です。
鉄道会社にも「継続的につきまとわれている」と相談する
警察への相談と並行して、利用している鉄道会社や駅員へ状況を伝える方法もあります。「痴漢かどうか分からない」という説明だけではなく、「同じ人物が繰り返し同じ電車に現れる」「車両を変えると追ってくる」「改札を出てもついてくる」と、確認できている行動を具体的に説明するのがポイントです。
また、いつも利用する駅や列車が決まっている場合には、事前に駅員へ相談しておくことで、実際に相手が現れたときに助けを求めやすくなります。具体的にどのような対応が可能かは鉄道会社や状況によって異なるため、駅員や鉄道会社の相談窓口へ確認してください。
駅構内や車内には防犯カメラが設置されている場合もあります。映像の保存期間や警察への提供方法などは事業者によって異なるため、事件性が疑われる状況では、必要性を警察や鉄道会社へ早めに相談することが重要です。
自宅を知られないための行動も重要
駅から自宅まで尾行される可能性がある場合、相手がいると分かった状態で自宅へ向かうのは避けたいところです。家族やパートナーなど信頼できる人に迎えを依頼することは一つの方法ですが、それだけに頼らず警察とも安全確保の方法を相談しましょう。
相手が追ってきている最中なら、人気のない場所へ逃げ込むのではなく、駅員のいる場所や交番などへ移動します。相手をまくことよりも、第三者のいる安全な場所へ移動して助けを求めることを優先します。
また、勤務先や学校などにも影響が及んでいる場合には、必要に応じて事情を共有する選択肢があります。2025年のストーカー規制法改正を紹介する政府広報でも、職場や学校による被害者への援助について触れられています。[参照:政府広報オンライン]
「逆上されるのが怖い」なら相手と直接対決しなくてよい
つきまとってくる人物に対し、「やめてください」と自分で注意しなければ警察へ相談できないわけではありません。相手の性格や意図が分からず、逆上されることへの恐怖があるなら、直接対決を避ける判断には十分な理由があります。
警察庁は、ストーカーなど「犯罪にあたるかわからない」段階でも#9110などで相談できると案内しています。また、相談内容に応じ、関係部署が連携して指導、助言、相手方への警告、検挙など必要な措置を講じるとしています。[参照:警察庁 犯罪被害者等施策]
そのため、「まだ直接触られていないから何もできない」と一人で判断する必要はありません。法的にどの対応が可能なのかを判断するのは警察などの専門機関です。相談時には「相手を刺激することが怖い」「自宅を知られることが怖い」といった懸念も具体的に伝えてください。
強い恐怖や過呼吸などが出ている場合は心身のケアも並行する
継続的につきまとわれる経験では、電車に乗るだけで強い恐怖を感じたり、動悸、震え、息苦しさなどが現れたりすることがあります。実生活に支障が出ている場合、安全対策とは別に、医療機関や被害者支援機関へ相談することも選択肢になります。
性犯罪・性暴力に関する相談については、内閣府が「性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター」を案内しており、全国共通番号#8891から最寄りのセンターにつながります。センターでは、地域に応じて医療、心理、法律などの支援機関との連携が行われています。[参照:内閣府男女共同参画局]
「もっと重大な被害に遭った人が利用する場所なのでは」と遠慮する必要はありません。利用できる支援の範囲について問い合わせ、必要なサポートにつなげてもらうことができます。
危険を感じたときの行動をあらかじめ決めておく
恐怖が強い状況では、その場になってから冷静に判断することが難しくなります。そのため、相手を見つけた場合の行動を事前に決めておくと対応しやすくなります。
| 状況 | 行動の例 |
|---|---|
| 駅で相手を見つけた | 一人で近づかず駅員へ知らせる |
| 車内で近づかれた | 周囲の乗客や乗務員・駅員に助けを求める |
| 車両を変えても追われる | 駅員のいる駅で助けを求め、状況を説明する |
| 改札外まで追われる | 自宅へ向かわず、駅員・交番など安全な場所へ移動する |
| 身の危険が迫っている | 110番通報する |
| 継続的な相談をしたい | 最寄りの警察署または#9110へ相談する |
スマートフォンの充電を確保する、家族など信頼できる人と状況を共有する、緊急連絡先をすぐ呼び出せるようにするといった準備も役立ちます。ただし、個々の状況に最適な安全計画は異なるため、すでに警察へ相談している場合は、今後どのように行動すべきか担当者へ具体的に確認することが重要です。
まとめ|「触られてから」ではなく、つきまといが続く段階で安全確保を
電車内で身体を不自然に近づけられるだけでなく、避けても追ってくる、乗車時間を変えても現れる、改札の外までついてくるといった状況では、直接触られているかどうかだけを基準に対応を遅らせないことが大切です。
日時・場所・相手の行動を記録し、警察と鉄道会社へ継続的な事案として伝えること、自分から相手と対決しないこと、自宅へ尾行されそうなときは安全な場所へ移動することが重要なポイントです。緊急の場合は110番、緊急ではない警察相談は#9110を利用できます。
また、恐怖によって過呼吸や震えなどが生じるほど心身への影響が出ている場合、安全対策だけで抱え込まず、医療機関や被害者支援機関への相談も検討してください。つきまといは状況が変化することがあるため、「前回警察に相談したから終わり」ではなく、新しい行動があれば追加で警察へ伝え、専門機関と連携しながら安全を確保していくことが重要です。