亡くなった兄の預金・株・不動産は誰のものになる?疎遠な兄弟が確認すべき相続人・財産調査・相続放棄を解説

離れて暮らしていた兄弟が亡くなったと突然知らされた場合、「銀行預金はどうなるのか」「株は誰が受け取るのか」「実家の土地や建物が亡くなった兄名義だったらどうなるのか」と疑問に感じることがあります。

結論からいうと、亡くなった人の預金・株式・土地・建物などが、葬儀や納骨を行った親族のものへ自動的に移るわけではありません。遺言があれば原則としてその内容を確認し、遺言がなければ民法で定められた相続人が相続することになります。

また、「亡くなった人の兄弟姉妹だから必ず相続人」というわけでもありません。亡くなった人に配偶者や子がいるか、両親・祖父母が存命かによって、兄弟姉妹が相続人になるかどうかが変わります。

この記事では、兄が遠方で亡くなり、実家とも疎遠になっているケースを想定し、預金通帳・証券口座・実家の不動産がどう扱われるのか、兄弟姉妹が相続人になる条件、財産の調べ方、相続放棄で注意すべき3か月の期間まで整理します。

亡くなった兄の財産は勝手に誰かのものになるわけではない

人が死亡すると相続が開始し、その人が所有していた財産上の権利義務は、民法のルールに従って相続人へ承継されます。民法896条は、相続人が相続開始の時から被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継することを原則としています。[参照:e-Gov法令検索 民法]

したがって、亡くなった兄の銀行預金、株式、投資信託、土地、建物などが存在すれば、原則として相続財産として扱われます。

葬儀、火葬、納骨などを従妹や別の親族が手配したとしても、葬儀を行ったという理由だけで、その人が銀行預金や不動産を相続するわけではありません。

誰が財産を取得するかは、遺言の有無と法律上の相続関係によって判断されます。まずは「誰が葬儀をしたか」と「誰が相続人か」を分けて考える必要があります。

兄弟姉妹が相続人になるのは一定の場合だけ

亡くなった人の兄弟姉妹は法定相続人になり得ますが、相続順位は子や親より後です。

民法では、亡くなった人の子が第1順位の相続人となり、子などの直系卑属がいなければ父母・祖父母などの直系尊属、これらもいなければ兄弟姉妹が相続人となる仕組みです。配偶者がいる場合、配偶者はこれらの相続人とともに常に相続人になります。[参照:e-Gov法令検索 民法887条・889条・890条]

つまり、兄が亡くなったからといって弟や妹が当然に財産を受け取れるわけではありません。

亡くなった兄の家族関係 基本的な相続人
妻と子がいる 妻と子
子がいて妻はいない
子がおらず妻と両親がいる 妻と両親
子がおらず両親等も亡くなり、妻と兄弟姉妹がいる 妻と兄弟姉妹
配偶者・子・直系尊属がおらず兄弟姉妹がいる 兄弟姉妹

したがって、兄の財産について確認したい場合は、まず兄に配偶者や子がいたかどうか、父母などが存命かどうかを確認する必要があります。

従妹は通常、法定相続人にはならない

亡くなった兄の従妹が葬儀や納骨を担当していたとしても、従妹という関係だけで通常の法定相続人になるわけではありません。

民法上の法定相続人は、基本的に配偶者、子などの直系卑属、父母などの直系尊属、兄弟姉妹と、その一定の代襲者です。一般的な「いとこ」はこの法定相続順位には入りません。

もっとも、兄が遺言を作成して従妹へ財産を遺贈していた場合などは別です。また、葬儀費用等を誰が負担したかという問題と、遺産を誰が相続するかという問題も別に検討されます。

「従妹が全部手続きをしているから、兄の財産も従妹のものになる」と推測するのは早計です。財産の行方を知るには遺言と戸籍上の相続関係を確認する必要があります。

兄の銀行預金はどうなる?

亡くなった人の銀行預金は、死亡したからといって銀行が取得するわけでも、通帳を持っている人が取得するわけでもありません。相続財産として相続手続の対象になります。

全国銀行協会によると、口座名義人が死亡した場合、遺族や遺言執行者などが金融機関へ相続手続を申し出ます。金融機関へ死亡の連絡がされると、原則として預金の入出金などが制限され、その後、必要な相続関係書類を提出して払戻し等の手続きを進めます。[参照:全国銀行協会]

遺言書がない場合には、遺産分割協議書や戸籍、相続人の印鑑証明書などが求められることがあります。具体的な必要書類は金融機関や相続の状況によって異なります。[参照:全国銀行協会]

つまり、預金通帳そのものを誰が保管しているかより、預金の名義人が誰で、誰が法律上その預金を相続するのかが重要です。

通帳を持っていなくても相続権がなくなるわけではない

実家と疎遠で、兄の預金通帳を見たことがなくても、法律上相続人であれば、それだけで相続権がなくなるわけではありません。

逆に、親族の誰かが兄の通帳やキャッシュカードを持っているとしても、その人が預金の所有者になったという意味ではありません。

相続手続では、戸籍等で相続人を確認し、遺言の有無や遺産分割の内容に応じて銀行が払戻し等を行います。

兄弟姉妹が相続人になるケースで、遺言もなく遺産分割協議を行う場合には、原則として相続人全員を確認して手続きを進めることになります。

兄が持っていた株式はどうなる?

株式や投資信託なども相続財産です。現在の上場株式は証券会社などの口座で電子的に管理されているものが中心で、昔のイメージのような紙の「株券」が自宅にあるとは限りません。

証券口座に株式が残っている場合、相続人が証券会社へ死亡の連絡を行い、必要書類を提出して相続手続きを進めます。

例えば日本証券業協会は、亡くなった人のNISA口座に上場株式等がある場合、相続人が証券会社へ死亡届出書を提出し、相続する株式等について所定の移管手続を行うことを案内しています。[参照:日本証券業協会]

したがって、兄が株式を保有していた場合も、誰かが勝手に売って取得するものではなく、相続関係を確認したうえで証券会社等で手続きを行うことになります。

どこの証券会社に口座があるか分からない場合も調査方法がある

疎遠だった家族の場合、「株を持っていたらしいが、どこの証券会社なのか分からない」ということがあります。

証券保管振替機構(ほふり)には、亡くなった人の株式等について、口座が開設されている証券会社等を確認するための「登録済加入者情報の開示請求」という制度があります。相続人等から所定の書類を提出して有料で調査できます。[参照:証券保管振替機構]

ただし、この制度で分かるのは基本的に口座の開設先であり、実際の保有残高については、開示結果をもとに各証券会社や信託銀行などへ問い合わせる必要があります。[参照:証券保管振替機構]

そのため、「株券が見つからない=株式を持っていなかった」とは限りません。証券会社から届いた郵便物、配当金計算書、確定申告書なども口座を探す手掛かりになります。

実家の土地・建物が兄名義なら相続財産になる

中国地方にある実家の土地や建物が、登記上亡くなった兄の単独名義になっている場合、その不動産も原則として兄の相続財産になります。

不動産が中国地方にあり、兄の最後の住所が千葉県だったとしても、兄名義の不動産であることに変わりはありません。

遺言があればその内容を確認し、遺言がなければ法定相続人間で遺産分割を行うなどして、最終的に誰が取得するかを決めることになります。

例えば兄に配偶者も子もおらず、両親・祖父母もすでに亡くなっていて、兄弟姉妹2人だけが相続人だった場合には、その兄弟姉妹が相続に関与する可能性があります。一方、兄に子がいるなら、原則として兄弟姉妹は法定相続人になりません。

不動産は登記簿を確認すれば現在の名義を調べられる

「実家は兄名義だったと思う」という記憶だけでは、相続財産かどうかを確定できません。不動産については法務局の登記事項証明書を取得して所有者を確認できます。

土地と建物はそれぞれ別の不動産なので、土地は兄名義だが建物は親名義、あるいは兄と親族の共有名義ということもあります。

そのため実家の相続関係を調べる場合は、土地と建物の登記名義をそれぞれ確認することが重要です。

固定資産税の納税通知書などが残っていれば不動産を探す手掛かりになりますが、疎遠で資料が手元にない場合には司法書士などへ財産調査を相談する方法もあります。

相続登記は2024年4月から義務化されている

不動産を相続した場合には、相続登記にも注意が必要です。2024年4月1日から相続登記の申請が義務化されています。

法務省によると、相続によって不動産を取得した相続人は、原則としてその所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請する必要があります。正当な理由なく義務に違反すると、10万円以下の過料の対象となる可能性があります。[参照:法務局 相続登記の義務化]

遺産分割が成立して不動産を取得した場合にも、遺産分割成立の日から3年以内に、その内容を踏まえた登記を行う必要があります。

したがって、実家が兄名義だったことが判明した場合は、相続人を確定してそのまま放置しないことが重要です。

まず「遺言書があるか」を確認する

兄の財産を調べる前提として重要なのが、遺言書の有無です。

有効な遺言が存在すれば、財産を誰へ承継させるかについて遺言内容が大きく影響します。兄弟姉妹が法定相続人になるケースでも、遺言によって別の人へ財産を遺贈している可能性があります。

なお、兄弟姉妹には遺留分がありません。そのため、兄弟姉妹しか法定相続人がいないケースで、有効な遺言によって全財産を別人へ遺贈していた場合には、兄弟姉妹が遺留分を請求することはできません。

自宅に遺言書がある可能性だけでなく、公正証書遺言や法務局で保管された自筆証書遺言が存在する可能性も考慮する必要があります。

兄弟姉妹が相続人になるかは戸籍をたどって確認する

相続手続では、家族の記憶だけで相続人を決定するのではなく、戸籍によって確認します。

法務局の法定相続情報証明制度でも、被相続人の出生から死亡までの戸除籍謄本などを収集し、その記録をもとに法定相続人を明らかにします。[参照:法務局 法定相続情報証明制度]

疎遠だった兄については、「結婚していないと思っていたが実は婚姻していた」「知らない子がいた」といった可能性もあります。そのため、相続人になるかを確認するには戸籍調査が重要です。

法定相続情報一覧図を取得すると、銀行預金の払戻しや相続登記など複数の相続手続に利用できる場合があります。[参照:法務局]

兄の住所が千葉、実家が中国地方、自分が東京でも相続はできる

相続財産や相続人が全国の別々の地域にいることは珍しくありません。亡くなった兄の最後の住所が千葉県、相続人が東京都、実家の不動産が中国地方という状況でも、それだけで相続できなくなることはありません。

法定相続情報証明制度の場合、被相続人の本籍地、最後の住所地、申出人の住所地、被相続人名義の不動産所在地を管轄する登記所のいずれかへ申出でき、郵送による手続も用意されています。[参照:法務局]

一方、相続放棄など家庭裁判所で行う手続には別の管轄ルールがあります。

遠方だからと放置するのではなく、自分が相続人である可能性があるなら必要な確認を早めに始めることが大切です。

財産だけでなく借金も相続の対象になる

亡くなった人の相続を考えるときに最も注意したいのが、預金・株式・不動産などプラスの財産だけを見ることです。

相続では、原則として借入金などの債務も承継の対象になります。兄に預金500万円があっても、それとは別に借金1,000万円が残っている可能性もあります。

そのため、「実家の土地が兄名義なら欲しい」「株があるらしいから相続したい」と財産の一部だけを見て判断するのは危険です。

銀行預金、証券口座、不動産だけでなく、ローン、消費者金融、クレジットカード、税金、保証債務などがないかも可能な範囲で確認する必要があります。

相続したくない場合は「3か月」の相続放棄期限に注意

借金が多い場合や、実家との関係も含めて相続に一切関与したくない場合には、家庭裁判所へ相続放棄を申し立てる方法があります。

裁判所によると、相続放棄は原則として、被相続人が死亡したことと、それによって自分が法律上の相続人になったことを知ったときから3か月以内に申述する必要があります。[参照:裁判所 家事事件Q&A]

ここで重要なのは、単純に「兄が亡くなった日から必ず3か月」とは限らない点です。例えば兄に子がいると考えていたため自分が相続人ではないと思っていたものの、その子が相続放棄し、後から自分が相続人になったことを知ったケースなどでは事情が異なります。

もっとも、具体的な起算日は個別事情によって判断されるため、相続放棄を検討しているなら期限ぎりぎりまで待たず、家庭裁判所や弁護士・司法書士へ早めに確認することが重要です。

相続人か分からない段階で遺産を勝手に処分しない

自分が相続人になる可能性がある場合でも、状況が分からないまま兄の預金を引き出したり、株式を売却したり、不動産を処分したりするのは避けたほうが安全です。

特に相続放棄を検討している場合、相続財産の処分行為によって単純承認をしたものと扱われる可能性があり、相続放棄に影響することがあります。

兄の自宅に通帳や証券会社の書類があったとしても、「相続人らしいから使ってよい」と自己判断するのではなく、まず法定相続人と遺言の有無を確認しましょう。

財産の保全と、自分のために使ったり売却したりする行為は意味が異なるため、判断に迷う場合は専門家への確認が安全です。

遺産分割がまとまるまでは不動産はどうなる?

遺言がなく複数の相続人がいる場合、誰が最終的に不動産を取得するかは遺産分割によって決めることができます。

法務局は、不動産所有者が死亡し遺産分割がまとまるまでの間について、相続人が法律で定められた持分の割合で共有した状態になると案内しています。[参照:法務局]

例えば実家の土地建物が兄単独名義であり、兄弟姉妹2人だけが相続人だった場合、最終的に「兄弟の一人が不動産を取得し、もう一人は預金を取得する」といった遺産分割をすることも考えられます。

反対に、相続人間で話し合いがまとまらなければ、家庭裁判所の遺産分割調停などを利用する場合があります。

家族と疎遠でも相続財産を確認する方法はある

実家と事情があって疎遠な場合、「親族に連絡しなければ何も調べられない」と考える必要はありません。法律上の相続人であることを証明できれば、利用できる各種手続があります。

不動産であれば登記事項証明書、証券会社の開設先については証券保管振替機構の開示制度、銀行が判明している場合はその金融機関への相続手続の照会などが考えられます。

また、戸籍を取得して法定相続関係を整理するために法定相続情報証明制度を利用することもできます。

ただし、全国すべての銀行預金・不動産・金融資産を一度の手続で完全に一覧化できるわけではありません。自宅の郵便物、確定申告書、固定資産税関係書類、銀行・証券会社からの通知なども重要な手掛かりになります。

まず確認することを順番に整理

突然兄の死亡を知らされ、財産状況が何も分からない場合には、次のような順番で確認すると整理しやすくなります。

  1. 兄の死亡日と最後の住所を確認する
  2. 兄の出生から死亡までの戸籍等を調べる
  3. 配偶者・子・父母などがいるか確認し、自分が相続人になるのか確定する
  4. 遺言書の有無を確認する
  5. 銀行・証券会社・不動産などプラスの財産を調べる
  6. 借金・ローンなどマイナスの財産も調べる
  7. 相続するか相続放棄するかを検討する
  8. 相続する場合は遺産分割や名義変更を進める

特に最初から「預金はいくらあるか」だけを調べようとすると、自分がそもそも相続人なのかという重要な点を見落とします。

まず相続関係、その次に遺言、その後に財産と負債という順番で確認するのが基本です。

専門家に相談したほうがよいケース

兄弟間の相続は、配偶者と子だけの一般的な相続より戸籍調査が複雑になりやすい傾向があります。

特に、実家と長年疎遠、兄の家族関係が分からない、亡くなった兄が遠方に住んでいた、不動産が複数県にある、証券口座の所在が分からない、借金の有無も不明といった場合には専門家へ相談する価値があります。

不動産登記や戸籍収集などは司法書士、相続争い・遺産分割・相続放棄など法律上の紛争や複雑な判断を伴う場合には弁護士、相続税については税理士が主な相談先になります。

とりわけ相続放棄の3か月という期間が進んでいる場合は、財産調査が全部終わってから相談しようとせず、早めに専門家へ相談したほうが安全です。

まとめ:兄の預金・株・不動産は相続財産。まず自分が相続人か確認する

亡くなった兄に預金、株式、土地、建物などがあれば、原則として相続財産になります。通帳や証券関係書類を誰が保管しているか、誰が葬儀や納骨を行ったかによって所有者が自動的に決まるわけではありません。

最初に確認すべきなのは「兄の財産がどこへ行ったか」より、「兄に配偶者や子がいるか、父母等が存命か、自分が法定相続人になるのか」という点です。兄弟姉妹が相続人になるのは、原則として亡くなった人に子などの直系卑属がおらず、父母・祖父母などの直系尊属もいない場合です。配偶者がいれば配偶者も相続人になります。[参照:e-Gov法令検索 民法]

銀行預金については、銀行へ死亡が伝わると原則として取引が制限され、その後、戸籍や遺言書、遺産分割協議書など必要な書類を使って相続手続きを行います。[参照:全国銀行協会]

株式も相続財産で、証券会社を通じて相続手続きを行います。どこの証券会社に口座があったか分からない場合には、相続人等が証券保管振替機構へ開示請求し、口座の開設先を調べられる制度もあります。[参照:証券保管振替機構]

中国地方にある実家の土地・建物が兄名義なら、それも原則として兄の相続財産です。2024年4月から相続登記は義務化されているため、誰が不動産を取得するか決まった後も登記を放置しないことが重要です。[参照:法務局]

そして忘れてはいけないのが借金です。預金や不動産だけでなく債務も相続の対象になり得ます。自分が相続人であり、相続を望まない場合には、原則として自分が相続人になったことを知った時から3か月以内の相続放棄を検討する必要があります。[参照:裁判所]

実家と疎遠であっても相続関係を調べる方法はあります。まず戸籍から兄の配偶者・子・直系尊属などを確認して自分が相続人なのかを確定し、遺言、預金、証券、不動産、借金の順に調査していくことが、亡くなった兄の財産の行方を確認する第一歩になります。

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