任意整理の返済を滞納して自己破産を検討するときのポイント|費用の分割・家族や勤務先への影響・必要書類を解説

任意整理で決めた返済を続けることが難しくなり、数か月の滞納が発生した場合、自己破産への切り替えを検討するケースがあります。任意整理を一度選んだからといって、その後に自己破産を選べなくなるわけではありません。

自己破産は、借金額が一定額以上なら利用できるという制度ではなく、収入・資産・生活費・債務総額などから継続して借金を返済できない「支払不能」の状態かが重要になります。たとえば債務が約80万円でも、収入や生活状況によっては自己破産が選択肢になる一方、別の解決方法が適している場合もあります。

また、自己破産の費用を一括で用意できなくても、法律事務所の分割払い、法テラスの費用立替制度などを利用できる可能性があります。「任意整理を滞納したから自己破産費用の分割も認められない」と一律に決まっているわけではありません。

任意整理を3か月滞納した後でも自己破産は検討できる

任意整理では、債権者との和解内容に「2回分以上支払いを怠った場合は期限の利益を失い、残額を一括して支払う」といった条項が定められていることがあります。実際に何回の滞納で一括請求になるかは、自分が締結した和解書を確認する必要があります。

しかし、一括請求を受けたからといって、その全額を何とか用意しなければ自己破産できないわけではありません。裁判所は、破産・再生手続を「債務を負った人が経済的に苦しい状況になり、返済が事実上できなくなったときに経済的に立ち直るための裁判手続」と説明しています。[参照]

任意整理を始めた時点では月々の返済が可能だったものの、収入減少や生活費の増加などによって返済不能になったのであれば、方針を見直すこと自体は不自然ではありません。むしろ支払えない状態で新たな借入れをして返済を続けるより、早めに専門家へ状況を伝えることが重要です。

自己破産費用は分割払いにできる?

自己破産を弁護士へ依頼する費用については、法律事務所によって分割払いに対応していることがあります。ただし分割回数、毎月の金額、申立てを開始する時期などは事務所ごとに異なるため、「どの事務所でも必ず分割できる」とは限りません。

費用を用意するのが難しい場合には、法テラスの民事法律扶助制度も重要な選択肢です。法テラスでは、収入・資産などが一定基準以下の人を対象として、弁護士・司法書士費用などを立て替え、原則として立替金を分割で返済する制度があります。立替金には利息等がないことも案内されています。[参照]

法テラスが公表する自己破産事件の費用目安では、債権者1~10社の場合、着手金13万2,000円、実費2万3,000円、合計15万5,000円が一つの目安とされています。ただし事件内容によって金額は変わります。また、生活保護受給者を除き、自己破産事件の予納金は原則として立替対象外とされています。[参照]

「任意整理を滞納した人が分割費用を払えるのか」と言われるとは限らない

任意整理の返済を3か月滞納していることと、自己破産手続のための費用を分割で積み立てられるかどうかは、同じ問題ではありません。任意整理では毎月の返済額が生活余力を超えていたとしても、自己破産へ方針変更して債権者への返済を止めることで、一定額を手続費用として積み立てられる場合があります。

たとえば任意整理で毎月4万円を返済する必要があり、それが払えない状態でも、家計を見直すと毎月1万5,000円なら積み立てられるというケースは考えられます。その場合、専門家と相談しながら自己破産費用を準備する余地があります。

逆に毎月の収支自体が大幅な赤字で、数千円も捻出できない状態なら、法テラスを含め別の方法を検討する必要があります。支払能力を恥ずかしがって多めに申告するのではなく、家賃、食費、通信費、交通費などを含む実際の家計をそのまま相談することが大切です。

自己破産の大きなメリットは免責を受ければ多くの借金の返済義務がなくなること

個人の自己破産では、破産手続開始決定だけで借金が自動的になくなるわけではありません。その後に免責許可を受けることで、原則として対象となる債務の返済義務を免れる仕組みです。裁判所も、税金、罰金、養育費など一部を除き、免責許可決定によって返済を免れると説明しています。[参照]

毎月返済しても生活費が足りず、任意整理の返済まで滞納している場合には、返済そのものを続ける前提から離れて生活を立て直せることが自己破産の大きなメリットです。

また「借金が80万円しかないから自己破産できない」という最低金額の決まりがあるわけではありません。ただし80万円という金額だけを見るのではなく、収入、必要生活費、財産、今後の収入見込みなどを踏まえて、本当に支払不能なのかが判断されます。

自己破産には財産処分や信用情報などのデメリットもある

自己破産では、一定の価値を超える財産がある場合、破産管財人によって換価され、債権者への配当に充てられることがあります。一方、生活に必要なすべての物を取り上げられる制度ではありません。自分名義の住宅や高価な車などがないケースでは、処分対象となる資産が少ない可能性がありますが、預貯金、保険、退職金見込額、スマートフォンを含む財産などについては正確に申告する必要があります。

もう一つ大きいのが信用情報への影響です。自己破産後は一定期間、新しいクレジットカードやローン、分割払いなどの審査に通りにくくなります。期間を一律に断定することはできず、信用情報機関や契約会社の審査によって扱いが異なります。

さらに破産手続中には一部の資格・職業について法律上の制限が生じることがあります。裁判所は、選挙権や被選挙権は失わない一方、法律上の資格制限を受ける場合があると案内しています。[参照]

実家暮らしでも親の財産まで失うわけではない

自己破産するのは申立人本人です。親が保証人や連帯保証人になっていない限り、本人の借金だからという理由だけで親に返済義務が移るわけではありません。また、実家が親名義であれば、原則として本人の自己破産だけを理由に親の家が破産財団へ組み込まれるものではありません。

同様に、親の勤務先に「子どもが自己破産したので何か処分をしてください」といった連絡が裁判所から通常行われる制度でもありません。家族が自己破産した事実だけで親の仕事上の地位に法律上当然の影響が生じるわけではありません。

ただし、本人が親へ多額のお金を渡していた、親名義の財産を実質的には本人が所有している、破産直前に本人の財産を親へ移した、といった事情があれば別です。財産隠しと疑われるような処理はせず、専門家へ正確に説明する必要があります。

実家暮らしでは親の収入資料を求められることがある

「自分の自己破産なのになぜ親の給料まで関係するのか」と疑問に感じやすい部分ですが、同居家族と家計が一体になっている場合、裁判所は世帯全体の収支を確認することがあります。

実際に裁判所が公開している家計収支表には、申立人だけでなく「同居者分」の給与や年金などを記入する書式があります。また別の裁判所の記載例でも、家計収支表には申立人を含む同居世帯・家族の収入と支出を記載し、通帳、給与明細、領収書などを参考に正確に作成するよう案内されています。[参照]

ただし、全国一律に「実家暮らしなら家族全員の給与明細を必ず何か月分提出する」というルールではありません。裁判所によって必要書類が異なることは裁判所自身も案内しています。[参照] 家計を完全に分けているのか、親から生活費の援助を受けているのかなどによっても必要な説明は変わります。

レシートを全部提出しなければならないとは限らない

自己破産では通常、家計の状況を示す家計収支表を作成します。食費、光熱費、通信費、交通費、娯楽費などを記載し、「毎月の収入に対して生活費がいくら必要なのか」「不自然な支出がないか」を説明します。

裁判所によっては、領収書や給与明細、通帳などを確認しながら家計収支表を作るよう求めています。しかしスーパーやコンビニで買ったすべての商品について、全国の自己破産申立人が必ず全レシートを裁判所へ提出するという統一ルールではありません。

特定の支出について説明を求められたり、家計内容を裏付けるため追加資料を要求されたりすることはあります。以前家族が自己破産した際に多くのレシートを提出していたとしても、その事案・裁判所・手続内容による可能性があります。今回必要な資料は申立先の裁判所と依頼する専門家の指示に従うのが確実です。

勤務先に自己破産の連絡が行くのが通常というわけではない

一般的な会社員の場合、自己破産を申し立てたことを裁判所が勤務先へ一律に通知する仕組みはありません。そのため、勤務先が債権者ではなく、給与差押えなど別の事情もなければ、自己破産したことが勤務先へ直接通知されるとは限りません。

ただし、勤務先から借入れをしていて勤務先自体が債権者になっている場合などは別です。また、退職金見込額などの財産状況を確認する資料が必要となり、その取得方法によって会社とのやり取りが必要になるケースもあります。

さらに一定の資格・職業では破産手続中の資格制限が仕事に関係する可能性があります。勤務先への影響が心配なら、職種を弁護士へ伝えたうえで確認しておくと安心です。

スマホは自己破産すると必ず没収される?

日常使用している一般的なスマートフォンがあるだけで、直ちに自己破産できなくなるわけではありません。端末の中古価値や契約状態などによって扱いを確認します。

特に注意が必要なのは、スマートフォン本体の分割代金が残っているケースです。端末代金の分割債務も債務として扱われる可能性があり、通信料金とは分けて確認する必要があります。「スマホを残したいから端末代だけ先に全額返す」といった特定債権者への返済は、偏頗弁済の問題が生じる可能性があるため、自己判断で行わず専門家へ相談してください。

携帯電話については、端末代の残額、通信料金の滞納の有無、契約会社などを相談時に伝えておけば、実際の契約を前提に対応方法を説明してもらえます。

自己破産を一人だけで進めることは法律上可能でも、専門家への相談が現実的

本人が自分で地方裁判所へ自己破産を申し立てること自体は可能です。裁判所の公式ページにも本人申立てを前提とした書式を公開している地域があります。ただし、債権者一覧、財産目録、家計収支表、通帳履歴、借金が増えた経緯など多数の資料を準備しなければなりません。

特に任意整理から自己破産へ変更するケースでは、現在の和解内容、滞納状況、これまでの返済、口座履歴などを整理する必要があります。また免責不許可事由の有無や、同時廃止になるのか管財事件になるのかといった判断も関係します。

裁判所自身も、破産などの倒産手続を検討している個人に対して、弁護士への相談を検討するよう案内しています。[参照] 特に現在すでに司法書士事務所へ任意整理を依頼している場合は、まず現状を伝えたうえで、自己破産へ切り替えるなら弁護士への相談も含めて検討するとよいでしょう。

まとめ:任意整理を払えなくなったら、滞納を重ねる前に自己破産を含めて再検討する

任意整理を数か月滞納していて今後も返済の見込みがない場合、自己破産を検討することは可能です。約80万円という債務額だけで利用の可否が決まるのではなく、現在の収入、生活費、資産、返済可能額を含めて「支払不能」といえるかが重要になります。

自己破産費用を一括で用意できなくても、分割払いに対応する法律事務所があります。また一定の収入・資産基準を満たせば、法テラスが弁護士等費用を立て替え、それを分割で返済する制度を利用できる可能性があります。[参照]

実家暮らしでも、親が保証人等でない限り本人の借金が親の借金になるわけではありません。しかし同居して家計を共有している場合には、裁判所から親など同居家族の収入を含む世帯収支の説明や資料を求められることがあります。これは家族にも自己破産させるためではなく、本人の生活実態を確認するためです。

任意整理の返済を維持するために新たな借入れをしたり、一部の債権者だけへ無理に返済したりする前に、現在の和解書、給与明細、通帳、債権者一覧、毎月の生活費が分かる資料を持って相談するのが適切です。「自己破産費用すら払えない」と感じる状況ほど、費用の立替制度も含めて早い段階で弁護士や法テラスへ相談する意味があります。

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