国道などの優先道路を直進中、側道から出てきた車に側面を衝突された場合、「相手が一時停止を無視したのだから当然10対0では」と感じることがあります。しかし交通事故の過失割合は、道路の優先関係、一時停止規制、衝突位置、双方の速度や回避可能性などを確認して決めるため、事故状況の説明だけで最終的な割合を断定することはできません。
事故直後に警察への届出が済んでいるなら、次に行いたいのは自分の任意保険会社への事故連絡、ドライブレコーダー映像などの証拠保存、相手側保険会社の確認、修理工場での見積もりです。日本損害保険協会も、事故現場での対応後は速やかに保険会社・代理店へ連絡し、修理前にも保険会社へ連絡するよう案内しています。[参照]
また「警察が来たから賠償まで決めてくれる」というものではありません。警察への事故届出と、修理費や過失割合を決める民事上の損害賠償は別の手続です。
事故後はまず自分の任意保険会社へ連絡する
相手側に明らかな落ち度があると思っていても、自分が加入している任意保険会社には事故を報告しておくのが基本です。事故日時、場所、道路状況、相手の氏名・連絡先・車両情報、警察へ届け出たことなどを伝えます。
ドライブレコーダーがある場合は、映像が上書きされないよう早めに保存します。衝突した車体側面、道路全体、一時停止標識や停止線、側道と国道の位置関係などの写真も残しておくと、後の事故状況確認に役立ちます。
そして修理工場へ車を持ち込む前後に、保険会社へ修理方法を確認します。先に修理を完了してしまうより、損傷状態と修理見積もりを相手側保険会社にも確認してもらってから進めるほうがトラブルを避けやすくなります。
側道から一時停止せず出てきた事故でも10対0とは限らない
過失割合は「どちらが腹立たしい運転をしたか」ではなく、事故態様をもとに判断されます。一時停止規制のある側道から出てきた車と、優先側を直進していた車との事故であれば、側道側の過失が大きく評価される可能性がありますが、それだけで直進車側が必ず0になるとは限りません。
たとえば相手車がすでに交差部分へ進入しているのを十分前から確認できた、直進車にも速度超過があった、回避できる状況だったなどの事情があれば修正要素になる可能性があります。反対に、相手が突然飛び出してきて自車の側面へ衝突し、回避する時間がほとんどなかったことを客観的資料で確認できれば、直進車側の無過失を主張する材料になります。
「制限速度内だった」という事情も重要ですが、それだけで0%が確定するわけではありません。ドライブレコーダー映像、道路標識、衝突位置、双方の損傷箇所などを基に保険会社が事故状況を確認し、相手側と協議していくことになります。
10対0なら自分の保険会社が示談交渉できないことがある
意外に感じやすいのが、完全な「もらい事故」では、自分の任意保険会社が相手との示談交渉を代行できない場合があることです。日本損害保険協会によると、被害者にまったく過失がなく賠償責任が生じない場合、自分の対人・対物賠償保険を使わないため、自分の保険会社による示談交渉サービスも利用できません。[参照]
その場合でも、自分の保険会社へ事故を連絡する意味はあります。契約内容の確認や事故対応について助言を受けられるほか、車両保険や弁護士費用特約など利用できる補償がないか確認できるからです。
特に弁護士費用特約が付いていれば、0対100を主張する事故で相手側保険会社との交渉がまとまらない場合に役立つ可能性があります。日本損害保険協会も、無過失事故では弁護士費用特約を利用して弁護士へ示談交渉を依頼できる場合があると説明しています。利用条件は契約ごとに異なるため、自分の保険会社へ確認しましょう。[参照]
「修理して相手に請求する」のも損害賠償だが、先に話を通したほうがよい
物損事故では、自動車の修理費などが損害賠償の対象になります。日本損害保険協会も、物損事故の損害として自動車や家屋などの修理費を挙げています。[参照]
そのため、法的な考え方としては事故で生じた必要かつ相当な修理費を相手へ請求することになります。ただし「好きな工場で全部直して、後から請求書だけ相手へ渡せば必ず全額払ってもらえる」とは限りません。修理範囲や金額、事故との因果関係、車の時価額、過失割合などについて争いになる可能性があります。
通常は相手が対物賠償責任保険に加入していれば、相手側保険会社が窓口となり、損傷状態や修理見積もりを確認したうえで賠償交渉を進めます。自賠責保険は物損を補償しないため、車の修理について重要なのは相手の任意保険の対物賠償です。[参照]
示談とは「誰がいくら払えば事故を解決とするか」を合意すること
交通事故の示談とは、裁判をせず、当事者間の話し合いで事故の責任割合や損害賠償額などを決めて解決することです。実際には任意保険へ加入していれば、当事者本人同士ではなく保険会社を介して進むことが一般的です。[参照]
たとえば修理費が50万円で相手100%と合意すれば、原則としてその50万円を相手側が負担するという形が考えられます。一方、自分20%・相手80%と決まれば、自車の損害について相手へ請求できる額も原則として過失割合の影響を受けます。
示談が成立すると、基本的には後から内容を変更することが難しくなります。日本損害保険協会も、一度示談すると通常は内容を変更できないため、疑問がある場合は合意前に確認するよう案内しています。[参照]
物損だけなら「腹が立ったこと」への慰謝料は原則別に考える
事故に遭えば、時間を取られ、車を傷つけられ、相手の態度にも腹が立つのは自然です。しかし損害賠償として請求できる範囲と、感情的に納得できないことは分けて考える必要があります。
日本損害保険協会が示す損害項目でも、人身事故では治療費・休業損害・慰謝料などが挙げられる一方、物損事故では自動車などの修理費が代表的な損害として示されています。[参照] 一般的な物損事故で「嫌な思いをした」「対応に時間を取られた」という理由だけから慰謝料が当然に支払われるわけではありません。
なお事故直後は痛みがなくても、後から首や腰などに症状が出ることがあります。本当に痛みや違和感が生じた場合は我慢せず、事故との関係を説明して早めに医療機関を受診し、警察や保険会社にも相談してください。
車に傷や凹みができても必ず「事故車」になるわけではない
日常会話では事故で修理した車をまとめて「事故車」と呼ぶことがありますが、中古車査定における修復歴車とは意味が異なります。ドアやフェンダーなど外板の傷・凹みを板金交換しただけで、必ず修復歴車になるわけではありません。
一方、事故によって車体の骨格部分まで損傷し、修正・交換などを行った場合には修復歴として扱われる可能性があります。そのため「右側面に大きな傷と凹みがある」という情報だけでは、修復歴車になるかは判断できません。
修理工場には、表面上の傷だけでなく、ピラー、サイドシルなど車体構造部分まで損傷していないか確認してもらいましょう。修理後の価値低下、いわゆる評価損が問題になるケースもありますが、事故に遭った車すべてについて自動的に一定額が支払われるものではなく、車種・年式・走行距離・損傷や修理の程度などによって個別に検討されます。
自分の保険を使うと必ず等級が下がるわけではない
事故を自分の保険会社へ「連絡しただけ」で、直ちにノンフリート等級が下がるわけではありません。等級への影響は、実際にどの補償から保険金を受け取るかによって判断されます。
相手側が100%賠償し、自分の車両保険などから事故保険金を受け取らなければ、自分の車両保険を使わずに解決できる可能性があります。一方、過失割合に争いがあり、自分の車両保険を先に利用して修理する場合などは、翌年度以降の等級や事故有係数適用期間に影響する可能性があります。
車両保険を利用するか迷う場合は、「今回使うと次年度以降の保険料がいくら程度増えるか」「相手から回収できる見込みはどうか」を自分の保険会社に確認してから決めるとよいでしょう。弁護士費用特約についても、利用による等級への影響を契約先へ確認しておくと安心です。
まとめ:修理を急ぐ前に保険会社へ連絡し、証拠を保存する
優先側を直進中に、一時停止規制のある側道から出てきた車に側面を衝突された場合、相手側の過失が大きくなる可能性はあります。しかし「一時停止無視だから必ず10対0」と事故現場だけで決めるのではなく、道路状況、衝突位置、速度、回避可能性、ドライブレコーダー映像などから過失割合を検討します。
警察への届出が終わったら、自分の任意保険会社へ事故を報告し、ドラレコ映像と現場・車両の写真を保存します。そのうえで相手側の任意保険会社を確認し、修理工場の見積もりを取って、修理費や過失割合について話を進めるのが一般的です。
また自分が完全な無過失を主張する場合、自分の保険会社が相手との示談交渉を代行できないことがあります。そのときは弁護士費用特約の有無を確認しておくと役立ちます。示談とは単に「修理代を払ってもらうこと」ではなく、過失割合や賠償額などを合意して事故の民事上の問題を解決する手続です。
事故直後は相手の態度への怒りも強くなりやすいものですが、賠償交渉では感情よりドラレコ映像、写真、修理見積書、事故証明など客観的な資料が重要になります。相手本人と感情的に交渉するより、保険会社や必要に応じて弁護士を窓口にし、修理と適正な損害賠償の確保に集中することが結果的に負担を減らしやすい対応です。