戸籍上の下の名前を変更する「名の変更許可」を家庭裁判所へ申し立てると、裁判官との面接や事情聴取が必ず行われるのか気になる人は少なくありません。結論からいうと、申立人が必ず家庭裁判所へ出向いて面接を受けると決まっているわけではありません。裁判所の公式案内では、必要に応じて書面照会、参与員による聴取、裁判官による審問などを行い、その結果をもとに許可するかどうかを判断するとされています。[参照] 裁判所「家事事件Q&A」
ただし、「面接は絶対にない」と考えるのも適切ではありません。申立ての理由や提出資料だけでは判断できない場合などには、裁判所から呼出しを受け、直接事情を尋ねられることがあります。大切なのは、面接の有無そのものより、なぜ改名が必要なのかを客観的な資料と一貫した説明によって示せるよう準備することです。
下の名前の改名で面接・審問は必須なのか
家庭裁判所の公式な説明を見る限り、すべての「名の変更許可」事件について一律に対面での面接・審問を実施する制度にはなっていません。裁判所は、申立て後の手続について「必要に応じて」書面照会、参与員による聴取、裁判官による審問を行うと案内しています。
また、裁判所が公開している名の変更許可申立書の案内にも、実際に申立てを受けた家庭裁判所では、判断のために「さらに書面で照会したり、直接事情をおたずねする場合があります」と記載されています。つまり、直接の事情聴取は「必ず」ではなく、事件ごとの審理に応じて行われるものと理解できます。[参照] 裁判所「名の変更許可の申立書」
したがって、「改名申請=全員が裁判官と面接する」と考える必要はありません。一方で、裁判所から呼出しが来た場合には応じる必要があります。
家庭裁判所はどのように改名の可否を判断するのか
戸籍上の「名」を変更するためには、単に新しい名前を使いたいという希望だけでは足りません。戸籍法107条の2に基づき、家庭裁判所から名の変更について許可を得る必要があります。
裁判所は「正当な事由」について、名を変更しなければ社会生活に支障を来す場合をいい、単なる個人的な趣味、感情、信仰上の希望などだけでは足りないと説明しています。[参照] 裁判所「名の変更許可」
そのため、審理の中心になるのは「この人は新しい名前が好きなのか」ではなく、現在の戸籍名のままでは社会生活上どのような支障があり、なぜ変更する必要があるのかという点です。
「面接」「事情聴取」「審問」はすべて同じもの?
一般にはまとめて「面接」と表現されることがありますが、裁判所の正式な案内では「書面照会」「参与員による聴取」「裁判官による審問」などの言葉が使われています。
| 手続 | おおまかな内容 |
|---|---|
| 書面照会 | 裁判所から質問事項などが送られ、書面で事情を回答する |
| 参与員による聴取 | 必要に応じて参与員が申立人などから事情を聴く |
| 審問 | 裁判官が申立人などから直接事情を確認する |
| 追加資料の提出 | 判断に必要な証拠や資料を追加で求められることがある |
したがって、インターネット上の体験談で「面接があった」「面接なしだった」という情報を見つけても、それだけで自分の手続も同じになるとは限りません。申立ての内容や提出資料、担当する家庭裁判所で必要と判断された審理によって進み方が変わります。
面接・審問が行われる場合に確認されること
直接事情を尋ねられることになった場合でも、就職面接のように自分を良く見せるための場ではありません。裁判所が名の変更を認めるために必要な事実関係を確認する手続と考えると分かりやすいでしょう。
具体的には、改名を希望する理由、現在の名前によって生じている社会生活上の支障、変更を希望する名前、通称を使用している場合にはその使用期間や使用状況など、申立書に記載した内容に関連する事情が確認される可能性があります。
例えば「長期間にわたり別の名前を社会生活で使用してきた」という理由なら、その通称をいつごろから、学校・勤務先・郵便物・知人関係などでどのように使用してきたのかが重要になります。単に回答を暗記するより、申立書と証拠資料の内容を整理し、事実をそのまま説明できるようにしておくことが重要です。
通称を長年使っている場合は証拠資料が重要
裁判所は名の変更許可の標準的な添付書類として、「名の変更の理由を証する資料」を挙げています。特に通称名を永年使用してきたことを理由に申し立てる場合、事情を尋ねる日などに資料の提示を求められることがあります。
裁判所の案内では、永年使用を理由とする場合の資料例として、通称が使用されている郵便はがき・封筒、学校の卒業証書の写し、名簿などが示されています。ポイントは、最近作った資料だけではなく、ある程度の期間にわたってその名前が実際の社会生活で使用されてきたことを確認できる資料を揃えることです。
例えば数年前の郵便物、学校や職場などの資料、最近の郵便物というように時系列で資料を整理しておけば、継続して通称を使用していることを説明しやすくなります。ただし、何年使えば必ず許可されるという一律の年数基準が公表されているわけではなく、最終的には個別事情を家庭裁判所が判断します。
改名理由によって審理の内容も変わる
名の変更を希望する事情は人によって異なります。長年使用している通称への変更だけでなく、現在の名によって社会生活上深刻な支障が生じているなど、さまざまな事情が考えられます。
そのため「この理由なら面接なし」「この理由なら必ず呼ばれる」という一律の基準を作ることはできません。同じように見える改名理由でも、提出された資料だけで事実関係が十分確認できるケースと、本人からさらに事情を聴く必要があるケースがあります。
インターネット上の改名体験談は参考にはなりますが、他人の事例から自分も同じ進行になると判断しないほうが安全です。手続について確実な情報が必要な場合は、申立先となる住所地を管轄する家庭裁判所の案内を確認するのが基本です。
名の変更許可を申し立てる基本的な流れ
名の変更を希望する本人が15歳以上の場合、原則として本人が申立人となります。15歳未満の場合は法定代理人が代理します。申立先は申立人の住所地を管轄する家庭裁判所です。
裁判所が案内する標準的な必要書類等には、申立書、戸籍謄本(全部事項証明書)、名の変更の理由を証する資料、収入印紙800円分、連絡用の郵便切手などがあります。郵便料については裁判所ごとに異なるため、申立先で確認する必要があります。
- 名の変更許可申立書を作成する
- 戸籍謄本や改名理由を証明する資料を準備する
- 住所地を管轄する家庭裁判所へ申し立てる
- 必要に応じて書面照会や事情聴取・審問、追加資料提出などに対応する
- 家庭裁判所が許可・不許可を判断する
- 許可後、市区町村役場へ名の変更届を提出する
なお、家庭裁判所から許可を受けただけで戸籍上の名前が自動的に書き換わるわけではありません。許可後には、市区町村役場で名の変更の届出をする必要があります。
裁判所から呼出状や照会書が来たら放置しない
面接が必須ではないからといって、家庭裁判所から届いた連絡を無視してよいわけではありません。裁判所は公式に、照会や呼出しがあった場合には必ず応じるよう案内しています。
例えば申立書を郵送した後、裁判所から照会書が届く場合があります。また、追加資料を提出するよう求められたり、家庭裁判所へ来るよう指定されたりする場合もあります。
事情があって指定された日時に出頭できない場合は、そのまま欠席するのではなく、通知書などに記載された担当係へ早めに連絡し、対応方法を確認するのが適切です。
「面接がない=許可されやすい」とは限らない
もう一つ注意したいのが、面接や審問の有無と許可の可能性を単純に結びつけないことです。面接なしで処理されたから必ず許可、呼び出されたから不許可になりそう、という意味ではありません。
家庭裁判所が確認したい事情があれば直接話を聴くことがありますし、提出書類や書面照会などによって必要な事情を把握できる場合もあります。審理方法そのものから結論を予測するのは難しいと考えたほうがよいでしょう。
改名申立てで準備すべきなのは「面接を避ける方法」ではなく、正当な事由を裏付けられる資料を集め、申立書・証拠・本人の説明に食い違いがない状態にすることです。
まとめ|下の名前の改名で面接は絶対ではないが、呼出しを受ける可能性はある
戸籍上の下の名前を変更する「名の変更許可」では、申立人全員に必ず対面の面接・事情聴取が行われるわけではありません。裁判所の公式案内でも、書面照会、参与員による聴取、裁判官による審問などを「必要に応じて」行う仕組みとされています。
一方、個別の事情を確認する必要があると家庭裁判所が判断すれば、直接事情を尋ねられる場合があります。裁判所から照会や呼出しを受けた場合は、それに応じる必要があります。
つまり、「改名には絶対に面接がある」も「書類だけで必ず終わる」も正確ではありません。申立て後の審理方法は個々のケースによって異なるため、面接の有無を心配するより、改名しなければ社会生活上どのような支障があるのかを整理し、それを裏付ける資料を準備することが重要です。
手続の最新情報や必要書類は、裁判所の「名の変更許可」公式案内[参照]と、実際に申立てを行う住所地管轄の家庭裁判所で確認すると確実です。