交通事故の評価損(格落ち)は請求できる?5年落ち・修理費90万円の車と弁護士特約を徹底解説

交通事故で車をきれいに修理できても、事故歴・修復歴が残ることで中古車市場での価値が下がることがあります。この価値低下について加害者側へ請求する損害が、一般に「評価損」「格落ち損」と呼ばれるものです。

評価損は実際に裁判でも認められている損害ですが、事故車なら必ず支払われるわけではありません。また「修理費の20%」などの割合が法律で一律に決められているわけでもありません。車の年式、走行距離、車種、事故による損傷部位、修復歴の有無などを総合的に見て判断されます。

例えば、過失割合が相手100%・自分0%、初度登録から5年程度、事故前の車両価値が約200万円、修理費が約90万円というケースでは、評価損を検討する余地は十分あります。ただし「90万円×20%=18万円が自動的にもらえる」という仕組みではないため、どのような証拠をそろえて交渉するかが重要になります。

交通事故の「評価損」とは何か

日弁連交通事故相談センターは、事故で壊れた車について、修理後も機能上・外観上の問題が残った場合や、事故歴が付いたことによって価値が下がった場合など、事故前の車両価額と修理後の車両価額との差を「評価損」と説明しています。事故歴による価値低下について賠償を認めた裁判例もあります。[参照] 日弁連交通事故相談センター「よくある質問」

分かりやすいのは、車体の骨格部分まで損傷したケースです。事故前には修復歴のない中古車として売却できたのに、事故後は修復歴が査定に影響するのであれば、外見上きれいに直っていても商品価値が下がる可能性があります。

一方、バンパーの小さな傷を交換しただけのようなケースと、ピラーやフレームなど車体骨格に関係する部分を修理・交換したケースでは、評価損の認められやすさが同じとは限りません。単に「修理代が高かった」という事実だけで判断するのではなく、何をどの程度修理したのかを見る必要があります。

過失割合10対0なら評価損を請求できる可能性がある

被害者側に過失がない、いわゆる10対0の事故であれば、認められた損害について被害者側の過失分を差し引く過失相殺は基本的に問題になりません。そのため評価損そのものが認められれば、被害者側の過失割合によって減額されるケースとは事情が異なります。

ただし、「10対0だから評価損も必ず認められる」という意味ではありません。過失割合と、評価損が発生しているかどうかは別の論点だからです。

相手方保険会社から修理費90万円の支払いを認められていたとしても、「修理費は支払うが評価損は認めない」という対応になることはあり得ます。その場合は、評価損が実際に発生することを資料によって示しながら交渉することになります。

5年落ち・車両価値200万円・修理費90万円ならどう考える?

初度登録から5年程度の車だからという理由だけで、評価損が直ちに否定されるわけではありません。ただ、新車に近い車と比べれば、一般に経年による価値低下がすでに進んでいるため、年式は評価損を判断する重要な要素になります。

一方、事故前の車両価値が約200万円ある車に約90万円の修理が必要になったのであれば、修理費は事故前価値の約45%に相当します。金額だけを見ても軽微な修理とは言いにくく、具体的な損傷内容を詳しく確認する価値があります。

さらに人気車種で中古車としての流通価値が高く、事故前に修復歴がなく、今回の事故で骨格部分にまで損傷が及んだのであれば、評価損を主張する材料は増えます。逆に、修理費の大部分が高価な外装部品・灯火類・センサー類の交換によるもので、車体骨格には影響していない場合には、修理費90万円という数字だけから高額な評価損が当然に発生するとはいえません。

「修理費の20%=18万円」が相場とは限らない

評価損について「修理費の10%」「20%」「30%」といった数字を見かけることがあります。実際に修理費を基準として一定割合の評価損を認定した裁判例は存在します。しかし、法律に「評価損は修理費の20%」と定められているわけではありません。

例えば裁判所が公開している裁判例には、車両のフロントピラーが交換を要する状態となり、修復歴として考慮されること、初度登録時期や車格などを踏まえて、修理費相当額の10%を評価損として認めた事例があります。[参照] 裁判所公開資料

別の裁判例でも評価損が争われ、修理費との割合や車両の交換価値・下取価格の低下などが検討されています。[参照] 裁判所公開裁判例

したがって、修理費90万円の場合に「20%なら18万円」という金額を交渉上の一つの目安として考えることはできますが、18万円が法的に保証された相場ではありません。10%なら9万円、20%なら18万円、30%なら27万円となりますが、実際の認定額は個別事情によって変わります。

評価損が認められやすくなる主な要素

評価損の判断では、一つの条件だけではなく複数の事情が考慮されます。特に重要なのは、事故によって中古車市場で実際に商品価値が低下すると説明できるかどうかです。

確認項目 評価損を検討する際のポイント
年式 比較的新しい車か
走行距離 年式に対して走行距離が少ないか
車種・車格 中古車市場で価値が高い車、人気車、高級車などか
事故前の状態 事故前に修復歴がなかったか
損傷部位 フレーム、ピラーなど骨格部分に影響しているか
修理内容 交換・板金・修正した部位と修理規模
事故後の市場価値 事故歴・修復歴による査定価格への影響を証明できるか

特に5年目の車の場合は、「5年だから無理」「人気車だから必ず認められる」と単純化せず、走行距離や修理箇所まで含めて評価する必要があります。

修理費90万円なら修理見積書の「部位」が重要

評価損を考える際、修理費の総額だけを見るのではなく、修理見積書や作業明細を確認することが重要です。例えば同じ90万円でも、事故の内容によって意味が大きく異なります。

一例として、バンパー、ヘッドライト、フェンダー、センサーなど高額部品を多数交換して90万円になった場合と、フロントピラー、サイドメンバー、フロアなど車体骨格に関係する部分の修正・交換を伴って90万円になった場合では、中古車査定への影響が異なる可能性があります。

そのため相手方保険会社へ評価損を請求する前に、修理工場へ「今回の修理は中古車査定上の修復歴に該当する可能性があるか」「骨格部分の交換・修正があるか」を確認しておくと、争点を整理しやすくなります。

相手保険会社に評価損を請求するとどうなる?

評価損は、相手方保険会社へ請求すること自体は可能です。ただし請求した金額がそのまま認められるとは限らず、保険会社側から評価損の発生自体を否定されたり、請求額より低い金額を提示されたりする可能性があります。

その場合、「人気車だから18万円払ってほしい」と主張するだけではなく、車検証、事故前の車両状態、走行距離、修理見積書、修理明細、事故写真、骨格部位の損傷状況、査定資料などを用意して具体的に説明するほうが有効です。

日弁連交通事故相談センターも、事故歴による価値低下は争いになりやすい問題として評価損に関する相談を受け付けています。保険会社の回答に納得できない場合は、示談を成立させる前に専門家へ確認する方法があります。[参照] 日弁連交通事故相談センター

弁護士を入れると評価損は取れるようになる?

弁護士へ依頼したからといって、それまで存在しなかった評価損が自動的に発生するわけではありません。最終的には車の状態や証拠、過去の裁判例などを基に評価損の有無と妥当な金額を検討します。

一方、保険会社が評価損を否定している場合に、弁護士が事故状況、修理内容、車両価値、裁判例などを整理して法的根拠を示しながら交渉することには意味があります。必要であれば訴訟を含めた選択肢も検討できます。

特に10対0事故では、自分の保険会社に賠償責任がないため、自分の保険会社による示談交渉サービスを利用できないことがあります。日本損害保険協会も、被害者にまったく過失がなく賠償責任が生じていない場合、自身の対人・対物賠償保険による示談交渉サービスを利用できず、このような場合に備えて弁護士費用特約が用意されていると説明しています。[参照] 日本損害保険協会

弁護士費用特約があるなら相談する価値は高い

弁護士費用特約は、自動車事故で相手方に法律上の損害賠償請求をするために弁護士へ相談・依頼した場合、その費用を契約上の限度額まで補償する仕組みです。補償内容や上限、対象事故などは契約によって異なります。[参照] 日本損害保険協会「交通事故による賠償問題の解決方法」

今回のように評価損だけが争点となり、仮に請求額が18万円前後だとすると、通常なら弁護士費用との費用対効果も考える必要があります。しかし利用できる弁護士費用特約があるなら、自己負担を抑えて専門家へ相談できる可能性があります。

ただし、特約の対象範囲や弁護士費用の支払基準は保険契約によって異なります。日本損害保険協会も、利用可能かどうかは事故状況・契約内容によって異なるため、事前に保険会社へ確認するよう案内しています。依頼前に「この事故で弁護士費用特約を使えるか」「評価損の請求も対象になるか」「自分で選んだ弁護士でもよいか」を確認すると安心です。

評価損を請求するなら示談成立前に資料をそろえる

評価損を検討している場合、評価損について未解決のまま「これですべて解決」という内容の示談を成立させないことが重要です。日本損害保険協会も、一度示談が完了すると基本的に示談内容の変更・修正はできないため、提示内容に納得できるか慎重に判断するよう案内しています。[参照] 日本損害保険協会

具体的には、車検証、購入時期と購入価格が分かる資料、走行距離、事故写真、修理見積書・明細書、修理箇所の写真、事故前の修復歴の有無、中古車査定への影響を示す資料などを整理しておきます。

そのうえで、相手方保険会社の評価損に対する回答と根拠を確認します。「評価損は一切認めない」と回答された場合でも、それだけで法的に評価損が存在しないと確定するわけではありません。資料を持って交通事故を扱う弁護士に相談し、請求の見込みを判断してもらう方法があります。

5年目の人気車・修理費90万円なら何を確認すべきか

仮に「過失0%、5年目の人気車、事故前評価200万円、修理費90万円」という条件なら、まず修理費の20%を機械的に計算するより、修理内容を確認するほうが先です。

  1. 修理見積書・修理明細を入手する
  2. 骨格部分の修理・交換があるか確認する
  3. 事故前に修復歴がなかったことを確認する
  4. 走行距離やグレードなど車両条件を整理する
  5. 事故による査定価格への影響を確認する
  6. 相手保険会社へ評価損を正式に請求する
  7. 否定または大幅減額されたら弁護士費用特約の利用を検討する

例えば修理内容にピラーやフレームなど重要な骨格部分が含まれているなら、その事実は弁護士へ必ず伝えるべきです。裁判所が公開している事例にも、ピラーの交換によって修復歴として考慮されることを理由の一つとして評価損を認定したものがあります。

逆に骨格への損傷がなく、事故歴による市場価値の低下を裏付ける資料もない場合には、「修理費90万円だから評価損18万円」という計算だけでは交渉が難しくなる可能性があります。

まとめ|評価損18万円は請求候補にはなるが「修理費の20%」が自動的に認められるわけではない

交通事故によって修理後も車の商品価値が下がる場合、修理費とは別に評価損を請求できる可能性があります。事故歴による価値低下について評価損を認めた裁判例もあるため、評価損という損害そのものが架空のものというわけではありません。

ただし、修理費90万円×20%=18万円という計算が法律上の固定相場になっているわけではありません。年式、走行距離、車種、車格、事故前の状態、損傷部位、修復歴、中古車市場への影響などを総合的に判断します。

5年目でも事故前評価が約200万円ある人気車で、90万円規模の修理が発生しているのであれば、評価損について確認・請求してみる価値はあります。特に骨格部分まで損傷して修復歴が付くケースなら、修理内容を詳細に整理することが重要です。

過失0%で弁護士費用特約も利用できるのであれば、相手方保険会社との示談を成立させる前に、修理見積書などを持って交通事故に詳しい弁護士へ相談するのが現実的です。弁護士を入れれば必ず18万円以上になるとは限りませんが、評価損の成立可能性と適切な請求額を個別事情から判断してもらえます。

弁護士へ依頼する前に、加入している保険会社へ弁護士費用特約の適用条件を確認しておきましょう。また、日弁連交通事故相談センターでは交通事故の民事上の法律問題について弁護士による無料相談も実施しています。[参照] 日弁連交通事故相談センター

※本記事は一般的な交通事故の評価損に関する情報を整理したもので、個別事件について評価損が認められることや具体的な金額を保証するものではありません。実際の請求可否・金額は事故状況、車両状態、修理内容、証拠、交渉・裁判の結果などによって異なります。

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