アニメやアイドル、ゲームなどのグッズ販売では、中身を選べないランダム商品や、購入数・購入店舗によって特典が付く販売方法がよく見られます。開封するまで何が出るか分からない楽しさがある一方、「推しを手に入れるために何個も買わされる」「商品ではなく特典のために大量購入することになる」と批判されることもあります。
ランダム販売や購入特典そのものを一律に良い・悪いと決めるのは難しく、娯楽として楽しめる設計になっているか、それとも消費者に過度な購入を促す設計になっているかで評価は大きく変わります。販売する側のメリットと購入する側の心理を分けて考えると、この商法がなぜ支持され、同時に嫌われるのかが見えてきます。
ランダム商法・特典商法とは?
ランダム商法とは一般に、複数種類のキャラクターや絵柄などが用意されているものの、購入時にはどれが入っているか選択できない販売方法を指します。たとえば全10種類の缶バッジを1個購入し、開封して初めてキャラクターが分かる商品が典型例です。
特典商法と呼ばれるものには、商品を購入すると限定ポストカードが付く、店舗ごとに異なる特典が付く、一定金額以上の購入でノベルティがもらえるといった形式があります。CDや映像作品、書籍、ゲーム、キャラクターグッズなど幅広い分野で使われています。
両者は組み合わされることもあります。たとえば「商品1点購入につき全8種類からランダムで特典1枚」という形式です。この場合、欲しい特典を確実に入手できないため、同じ商品を複数購入する動機が生まれます。
ランダム販売には「開封する楽しさ」というメリットがある
ランダム商品が支持される最大の理由は、商品を開ける瞬間そのものを娯楽にできることです。欲しかったキャラクターが一度で出ればうれしく、友人同士で一緒に開封すればイベントのようにも楽しめます。
販売側にとっても、キャラクターごとの人気差による売れ残りをある程度抑えながらシリーズ全体を販売できる利点があります。また「もう1個だけ買ってみよう」という追加購入につながりやすく、通常の選択式販売より販売数を増やせる可能性があります。
そのため、ランダムという仕組み自体が直ちに消費者にとって悪いとはいえません。1個の価格が無理なく楽しめる範囲で、どの種類が出てもある程度満足できる商品なら、「くじ引き感覚」を含めて商品価値と考えることもできます。
問題になりやすいのは「推しが出るまで買う」心理
一方、ランダム商法が批判される大きな理由が、欲しいものを選んで購入できない点です。全10種類の商品で特定の1種類だけが欲しくても、1回で入手できる保証はありません。重複すれば同じ商品を何個も持つことになります。
たとえば1個700円の商品を「推しが出るまで」と買い続け、10個購入すれば7,000円です。それでも狙った種類が必ず出るとは限りません。最初は700円の買い物だったはずが、いつの間にか数千円、数万円になることもあり得ます。
特に注意したいのが、すでに使った金額を理由に購入を続けることです。「ここまで5,000円使ったのだから、今やめるともったいない」と考えて追加購入すると、支出が膨らみやすくなります。過去に使ったお金ではなく、次の1個にその金額を払いたいかで判断するほうが冷静です。
特典商法は「本体より特典が欲しい」ときに問題が見えやすい
特典商法にも、予約特典や初回購入特典など、ファンに付加価値を提供する側面があります。もともと購入予定だったCDに限定ポストカードが付くのであれば、購入者にとって純粋なメリットになるでしょう。
しかし、「A店では特典A、B店では特典B、C店では特典C」という販売方法になると、すべての特典を集めたい人は同じ商品を複数購入することになります。さらに特典自体がランダムなら購入数が増える可能性は高まります。
ここで評価の分かれ目になるのが、商品本体を複数所有する価値があるかです。特典だけを目的として同じCDや本を何十個も購入し、本体が不要になるような状況では、資源の無駄や過度な消費を促しているという批判が生じやすくなります。
法律上は「ランダムだから違法」と単純にはいえない
ランダム商品や購入特典については、販売方式の具体的な内容によって景品表示法などとの関係が問題になる場合があります。しかし、「ランダム販売である」「購入特典が付いている」という理由だけで一律に違法になるわけではありません。
消費者庁は景品類について、顧客を誘引するための手段として、事業者が自己の供給する商品・サービスの取引に付随して提供する物品や金銭などを規制対象としています。また景品の提供方法によって、一般懸賞、共同懸賞、総付景品などの規制があります。[参照]
なお、どの販売方法が景品表示法上の「景品類」に当たるのか、どの規制が適用されるのかは具体的な販売条件によって変わります。「特典付きだから違法」「ランダムだから規制対象」と短絡せず、個別の仕組みを見る必要があります。
消費者側は「コンプリート」より予算上限を先に決める
ランダム商品を楽しむなら、購入前に上限を決めておく方法が有効です。「推しが出るまで」では終点がありませんが、「今日は3個まで」なら最大支出額が決まります。
たとえば1個600円なら3個で1,800円です。3個で出なかった場合は追加購入せず、公式に選択購入できる別商品を探したり、ルールを守って友人と交換したりする方法もあります。中古市場を利用する場合は価格や商品の状態、偽造品などにも注意が必要です。
特典についても「全部そろえなければならない」と考える必要はありません。趣味は本来楽しむためのものなので、購入後に金銭的な後悔が強く残る状態になっているなら、一度購入方法を見直すサインと考えられます。
販売側にも消費者が選びやすい仕組みが求められる
ランダム性を残しながら負担を抑える方法も考えられます。たとえば一定数購入すると重複しないセット販売、全種類セットの併売、ランダム商品とは別にキャラクターを選べる商品を用意するといった設計です。
特典についても、同一商品を大量に購入しなければ収集できない仕組みだけではなく、購入者が特典を選択できる方式などがあれば、ファンの満足度と販売促進を両立しやすくなります。
短期的にはランダム性を強くしたほうが販売数を伸ばせる場合でも、「買わされた感覚」が積み重なるとブランドや作品への不満につながる可能性があります。ファンビジネスでは継続的な信頼も重要な価値です。
まとめ:ランダム・特典そのものより「過度な購入を促す設計か」がポイント
ランダム商法には、何が出るか分からない開封体験や交換を楽しめるメリットがあります。特典商法にも、購入者へ限定アイテムという付加価値を提供できる良さがあります。そのため、どちらも存在するだけで悪質な商法と断定することはできません。
一方、欲しい1種類を入手するために大量購入が必要になる設計や、同じ商品を何個も買わなければ特典を集められない設計には、消費者の支出を過度に増やしやすい問題があります。特にランダムと購入特典を組み合わせると、購入者が予定以上にお金を使いやすくなる点には注意が必要です。
消費者側では「推しが出るまで」ではなく購入個数・金額の上限を先に決めることが有効です。販売側には、ランダムの楽しさを残しながら選択販売や全種セットなどの逃げ道も用意することが望まれます。ランダム商法・特典商法を評価するときは、単純に賛成か反対かではなく、娯楽として楽しめる範囲と過度な消費を促す仕組みの境界を見ることが大切です。