駐車場で隣の車のドアをぶつけられる、いわゆる「ドアパンチ」の被害に遭い、相手がその場で修理代を支払うと言ったため警察を呼ばずに別れたものの、後日連絡が取れなくなるケースがあります。
相手の免許証、氏名・住所、電話番号、車のナンバー、損傷部分や事故状況の写真などが残っているのであれば、すぐに諦める必要はありません。ただし、警察へ連絡すれば自動的に修理代を回収してくれるわけではなく、警察への事故届と民事上の損害賠償・保険手続は分けて考える必要があります。事故時に届け出ていなかった場合でも、まず事故場所を管轄する警察へ事情を説明し、自分の保険会社にも速やかに連絡することが重要です。
ドアパンチでも警察へ事故の届出をするのが基本
車同士の接触によって車両が損傷した場合、「小さな傷だから」「相手が弁償すると約束したから」という理由だけで当事者間で処理するのは避けたほうがよいでしょう。日本損害保険協会も、交通事故が起きた場合には人身事故・物損事故のどちらでも警察へ届け出るよう案内しています。[参照]
事故現場ですでに別れてしまった場合は、事故が発生した場所を管轄する警察署などへ連絡し、「駐車場で車のドアをぶつけられたが、その場では相手が修理代を支払うと言ったため届出をせず帰った。その後、相手と連絡が取れなくなった」と事実関係をそのまま説明し、必要な手続を確認します。
相手の免許証やナンバープレートの写真、双方の車の損傷写真、事故現場の写真、相手とのSMSなどが残っている場合は削除せず保存しておきましょう。後から事故状況について認識の食い違いが生じた場合の重要な資料になります。
警察は修理代を取り立ててくれるわけではない
ここで注意したいのが、警察への届出と修理代の支払いは別問題だということです。警察は交通事故について必要な対応を行いますが、民事上の損害賠償について相手から修理代を取り立てて被害者へ支払わせる機関ではありません。
したがって、「警察へ届ければ相手が必ず修理代を振り込んでくれる」とは限りません。しかし、警察へ事故を届けておくことには大きな意味があります。保険手続などで交通事故証明書が必要になる場合があるからです。
日本損害保険協会も、事故発生後には警察への届出に加えて、相手方の住所・氏名・電話番号などを確認し、その後速やかに保険会社または代理店へ事故を連絡するよう案内しています。[参照]
自分の保険会社にも事故を連絡する
被害者側も自分が加入している自動車保険会社へ事故を報告しておきましょう。日本損害保険協会は、交通事故が起きた場合、自身が加入する自動車保険会社の事故受付センターや代理店へ連絡するよう案内しています。[参照]
連絡するときは、事故日時、場所、事故状況、相手の氏名・住所・電話番号・ナンバー、損傷状態、相手が修理代を支払うと話していたこと、その後連絡が取れなくなったことなど、分かっている情報を伝えます。
自分の契約に車両保険や弁護士費用特約などが付いている場合には、今回の事故で利用できるかも確認しておきましょう。利用可否や自己負担、等級への影響などは契約内容によって異なるため、実際の契約を保険会社に確認する必要があります。
相手の任意保険が分かれば対物賠償で対応される可能性がある
相手が任意の自動車保険に加入しており、今回の損害が補償対象となれば、一般的には対物賠償責任保険によって車の修理費などが扱われる可能性があります。日本損害保険協会も、対物賠償責任保険について、自動車事故によって他人の車や物を壊し、法律上の損害賠償責任を負った場合の損害を補償する保険と案内しています。[参照]
ただし、相手の免許証や車のナンバーを知っていることと、相手の任意保険会社が分かっていることは別です。相手本人が保険会社へ事故報告をしていなければ、保険会社から被害者へ連絡が来ないこともあります。
日本損害保険協会も、事故後に相手側保険会社から連絡が来ない理由として、加害者が保険会社へ事故を連絡していない場合や、そもそも任意保険に加入していない場合などを挙げています。[参照]
写真・SMS・見積書などの証拠はまとめて保存する
相手と連絡が取れなくなった場合には、事故の存在と損害額を説明できる資料を整理しておくことが重要です。特に、事故直後の車両位置、相手車両、自分の車の傷、相手車両のドアなど接触部分、ナンバープレートを撮影した写真があれば保存します。
さらに、「修理代を振り込みます」など相手が事故や支払いについて認めたSMS・メール・メッセージが残っていれば、それも保存します。スマートフォンだけに残さず、スクリーンショットやバックアップを取っておくと安心です。
修理工場では損傷状態を確認してもらい、見積書を取得しておくと、具体的にいくらの損害が発生しているのかを示しやすくなります。修理前の傷が分かる写真も残しておきましょう。
「写真がある=必ず全額払ってもらえる」とは限らない
相手がドアをぶつけた瞬間や損傷状態を写真などで記録していることは重要ですが、それだけで警察や保険会社が直ちに修理費全額の支払いを確定するわけではありません。
実際には、その傷が今回の事故で生じたものなのか、必要な修理範囲はいくらなのか、当事者間で事故状況に争いがないかなどが確認されます。また、相手が任意保険に加入していない場合には、相手本人へ損害賠償を求めることになる場合もあります。
そのため、証拠がある場合でも「もう確実に回収できる」と考えるのではなく、警察への届出、保険会社への事故報告、修理見積りの取得という順序で手続を進めることが大切です。
相手が無視を続ける場合は専門家への相談も検討する
電話やSMSを繰り返しても返答がなく、相手側の保険会社からも連絡がない場合には、自分の保険会社へ相談したうえで、弁護士費用特約を利用できるか確認する方法があります。修理費の金額によっては、弁護士への相談や民事上の請求手続を検討することもあります。
保険会社との対応について困った場合には、日本損害保険協会の「そんぽADRセンター」で交通事故や損害保険について原則無料の相談を受け付けています。[参照]
なお、相手と連絡が取れないからといって、自宅や勤務先へ押しかけたり、免許証の写真や氏名・住所をSNSへ公開したりすることは避けるべきです。取得した個人情報は事故処理・損害賠償のために適切に扱い、必要に応じて保険会社や専門家を通して手続を進めるほうが安全です。
まとめ:後日でもまず警察と自分の保険会社へ連絡する
駐車場でドアパンチされ、相手が修理代を支払うと言ったため警察を呼ばず、その後連絡が取れなくなった場合でも、そこで諦める必要はありません。相手の免許証、ナンバー、電話番号、事故・損傷の写真、SMSなどが残っているのであれば、重要な資料として保存してください。
まず事故場所を管轄する警察へ「当日は届け出なかったが、後日相手と連絡が取れなくなった」と事情を説明し、必要な事故届の手続を確認します。同時に、自分が加入する自動車保険会社へ事故を報告することが重要です。
ただし、警察へ届け出れば警察が修理代を回収してくれるわけではありません。修理代は民事上の損害賠償・保険の問題として進めます。相手側の保険で対応できる場合もあれば、自分の車両保険や弁護士費用特約を利用できる場合もあります。相手が無視を続ける場合は、写真やメッセージ、修理見積書などを整理したうえで、保険会社や弁護士などへ相談し、正式な請求方法を検討するのが適切です。