交通事故の直後にはほとんど痛みがなかったのに、数日たってから首や腰に違和感が出てくることがあります。「事故から1~2週間もたっているのに、今ごろ痛くなることがあるのか」と疑問に感じるかもしれません。
交通事故後の首・腰の痛みについては、事故直後だけで自己判断せず、症状が出た時点で医療機関を受診することが重要です。日本損害保険協会も、事故直後には大したけがではないと思っていても、後から症状が発生したり重いけがが判明したりすることがあるとして、速やかな受診を案内しています。[参照]
交通事故の後から首や腰に痛みが出ることはある
交通事故では、衝突時の衝撃によって首や腰などへ負担がかかります。特に追突事故などで首に外力が加わった場合、一般に「むち打ち」と呼ばれる症状が問題になることがあります。
日本整形外科学会は、いわゆる「むち打ち症」は医学的な一つの傷病名ではなく、交通事故などによる頚部外傷に伴う局所症状の総称と説明しています。実際には外傷性頚部症候群(頚椎捻挫・頚部挫傷)、神経根症、脊髄損傷などさまざまな状態があり、専門的な診断が必要です。[参照]
したがって、「事故後の痛みだから全部むち打ち」「レントゲンで異常がなければ問題ない」と自己判断するのは適切ではありません。腰痛についても原因は一つではないため、事故後に新しい症状が出た場合には診察を受ける必要があります。
1~2週間後の痛みでも事故との関係を自己判断しない
事故から時間がたって症状が出た場合、「事故が原因なのか、それとも普段の生活で痛めただけなのか」という問題が生じます。これは症状が出た日だけでは判断できず、事故の状況、受傷部位、症状の経過、診察所見などから医師が評価することになります。
日本整形外科学会は、交通事故後にいわゆるむち打ち症が疑われる場合、神経学的所見を含む診察や、病状に応じてX線・MRIなどの精査が可能な整形外科医の診察を受けることを勧めています。[参照]
事故から1~2週間経過しているからといって「もう病院へ行っても意味がない」と考える必要はありません。ただし、時間が経過するほど事故と症状との関係について説明が難しくなる場合があるため、痛みや違和感が出たのであれば、さらに様子を見るのではなく早めに受診することが大切です。
首の痛み以外にしびれ・頭痛・めまいが出ることもある
交通事故後の頚部外傷では、症状が首の痛みだけとは限りません。日本整形外科学会は外傷性頚部症候群について、頚部痛のほか、肩こり、頭痛、めまい、手のしびれなどの症状を挙げています。[参照]
たとえば最初は「肩が少し重い」程度でも、その後に首を動かすと痛い、腕や手にしびれを感じるといった変化が起きる可能性があります。こうした場合も、症状を単なる肩こりとして済ませず、交通事故に遭った日時と事故後の経過を医師へ伝えましょう。
また、強い頭痛、意識がおかしい、手足に力が入らない・麻痺がある、歩行がおかしい、排尿や排便に異常があるなど重大な症状がある場合は、通常の予約受診を待たず緊急の医療評価が必要になることがあります。
受診が遅れると保険・損害賠償でも問題になることがある
交通事故後に時間がたってから受診すると、医学的な問題だけでなく、治療費などの補償をめぐって「その症状は本当に事故によるものなのか」が問題になる場合があります。
日本損害保険協会も、受診が遅れると交通事故によるけがであるか判断できず、治療費などの賠償を受けられなくなるおそれがあると注意しています。事故後に症状が現れた場合は、早めに医療機関を受診するとともに、相手方または自分の保険会社にも症状が出たことを連絡しておくとよいでしょう。[参照]
受診時には「いつから痛み始めたか」「事故直後はどうだったか」「首・腰のどこが痛むか」「しびれなど別の症状はあるか」を具体的に伝えます。領収書や診療関係の書類も保管しておきましょう。
物損事故として届けていた場合はどうする?
事故当日は痛みがなく、警察では物損事故として扱われていることもあります。その後にけがが判明した場合について、日本損害保険協会は、医療機関を受診したうえで人身事故扱いへの切り替えを行うことが大切と案内しています。[参照]
具体的な手続や必要書類については、事故を届け出た警察署へ確認してください。また保険会社にも「事故後に首・腰の症状が出て受診することになった」と早めに連絡します。
なお、症状が十分確認できない段階で示談を急ぐことにも注意が必要です。日本損害保険協会は、一度示談すると基本的に内容を変更・修正できないため、疑問や不安を解消してから示談するよう案内しています。
まとめ:事故後1~2週間で痛みが出たら「今さら」と考えず受診する
交通事故では、事故直後に大きなけがを感じなくても、後から症状が現れることがあります。首については、頚部痛だけでなく肩こり、頭痛、めまい、手のしびれなどを伴う場合もあり、「むち打ちだろう」と自己診断するのではなく整形外科などで評価を受けることが大切です。
事故から1~2週間後に首や腰の痛みを自覚した場合も、さらに数週間様子を見るのではなく、症状が出た時点で早めに医療機関を受診することが重要です。事故との因果関係は自分で決めつけず、事故日時、衝突状況、症状が始まった時期、その後の変化を医師へ正確に伝えましょう。
交通事故では受診までの期間が長くなると、治療費などの補償について事故との関係が問題になる可能性もあります。症状があれば医療機関を受診し、保険会社にも連絡し、物損事故として届けている場合は警察へ必要な手続を確認する、という順序で対応すると整理しやすくなります。