日本の鳩レースに賞金は出る?ヨーロッパとの違い・日本鳩レース協会の賞品相当額と国際委託鳩舎を解説

ベルギーやオランダをはじめとするヨーロッパの鳩レースでは、高額な賞金を争うレースが知られています。そのため、日本の鳩レースでも優勝すれば賞金がもらえるのか気になる人は少なくありません。

結論からいうと、日本の鳩レースを一律に「賞金は一切出ない」と説明するのは、現在では正確ではありません。日本鳩レース協会が運営する国際委託鳩舎レースでは、順位に応じた「賞品相当額」が設定されている大会があります。一方、一般の競翔連合会・地区競翔連盟などで開催されるレースでは、賞杯・賞状・タイトルなど名誉を中心とした表彰も多く、ヨーロッパのような高額賞金レースが日本の鳩レース全体の標準というわけではありません。

また、レースで上位に入った鳩は血統・競翔実績が評価され、種鳩として高く評価されたり売買価格が上昇したりすることがあります。したがって、日本の鳩レースにおける「お金」は、単純な優勝賞金だけでなく、賞品、鳩の買い上げ、種鳩価値など複数の形で考える必要があります。

日本の鳩レースはどのような競技?

一般社団法人日本鳩レース協会によると、鳩レースは複数の愛鳩家がそれぞれ飼育するレース鳩を同じ放鳩地点へ集め、同時に放して、各鳩が自分の鳩舎まで帰還する速さを競う競技です。ゴール地点が全員同じではないため、単純な到着時刻ではなく、飛翔距離と所要時間から算出する「分速」で順位を決めます。[参照:一般社団法人日本鳩レース協会]

日本では全国各地に競翔連合会があり、日本鳩レース協会のレースへ参加する場合には原則としてこうした団体を通じて競技します。200km前後のレースから、500km、700km、900km、1000km以上という長距離レースまであります。

日本鳩レース協会では、農林水産大臣賞、アジア鳩協聯盟会長賞、グランプリ、グランドナショナルなど多くのタイトルが設けられており、単に現金を獲得するというより、「全国・地区で優秀な成績を残すこと」そのものが大きな価値となっています。[参照:日本鳩レース協会「主なレースについて」]

昔から「日本の鳩レースには賞金がない」と言われてきた理由

日本の鳩レースについて調べると、「日本には賞金レースがない」「勝っても名誉だけ」と説明している古い記事が多数見つかります。実際、長年にわたり日本の鳩レースはヨーロッパと比較して、賞金獲得よりも優勝杯、賞状、タイトル、血統価値などを重視する文化が強いと説明されてきました。

2011年の愛鳩家を紹介した記事でも、国内の鳩レースについて「賞金がなく、手間も金銭的にも負担が大きい」という趣旨の発言が紹介されています。また、日本鳩レース協会自身のベルギー鳩界に関する記事でも、ベルギーでは賞金が非常に大きく、日本とはレース環境が異なることが紹介されています。

ただし、こうした説明をそのまま2026年・2027年の制度へ当てはめて「日本には金銭的な授賞が一切ない」とするのは注意が必要です。現在の公式要綱を見ると、日本鳩レース協会の一部レースでは明確に「賞品相当額」が設定されています。

現在の八郷国際委託鳩舎レースには「賞品相当額」がある

日本鳩レース協会が茨城県石岡市で運営する「八郷国際委託鳩舎」では、全国の会員から若鳩を預かり、協会側が飼育・調教・訓練をして一連のレースを開催しています。いわゆるワンロフトレースに近い仕組みです。[参照:日本鳩レース協会「八郷国際委託鳩舎」]

2027年度の八郷国際委託鳩舎レース実施要綱では、レース順位に応じて「賞品相当額」が明記されています。委託羽数4,000羽以上の場合を例にすると、内容は次のようになっています。

レース 1位の賞品相当額 主な授賞範囲
日英親善・オータムカップ 5万円 2~70位は1万円
国際サクセス・国際ウィナー・国際ダービー 10万円 2位7万円、3位5万円など
国際親善・オリエンタルカップ・国際チャンピオン 15万円 2位10万円、3位7万円、以下100位まで設定

したがって、少なくとも現在の日本鳩レース協会の国際委託鳩舎レースには、順位に応じた経済的価値のある授賞が存在します。ただし公式要綱で使われている言葉は「賞金」ではなく「賞品相当額」です。ヨーロッパの賞金レースとまったく同じ仕組みだと理解しない方が正確です。[参照:日本鳩レース協会「2027年度 八郷国際委託鳩舎レース実施要綱」]

さらに上位入賞鳩には最大200万円の「買い上げ」制度もある

八郷国際委託鳩舎には、順位による賞品とは別に、上位入賞鳩を協会が買い上げる制度があります。これは賞金ではなく、優秀な鳩を協会が種鳩育成事業などのため取得する際の買い上げ代金です。

2027年度要綱では、国際親善鳩レースの1位鳩は100万円、オリエンタルカップ1位は150万円、国際チャンピオンレース1位は200万円という買上額が記載されています。2位、3位にも買上額が設定されています。

例えば国際チャンピオンレースで1位になった場合、「1位だから200万円の賞金を受け取る」という意味ではありません。上位入賞した鳩を協会が所有者の同意のもとで買い上げる価格が200万円という別制度です。この違いは非常に重要です。

賞杯・賞状・タイトルも日本の鳩レースでは重要

日本鳩レース協会の公式レースでは、経済的な授賞とは別に協会杯や賞状が授与されます。例えば国際親善鳩レースでは上位10位までに協会杯と賞状、その他の国際委託鳩舎レースでも上位に協会杯・賞状が授与されます。

さらに「農林水産大臣賞」「畜産局長賞」「アジア鳩協聯盟会長賞」「銘鳩賞」「協会賞」など、複数レースの成績や全国規模の順位を評価するタイトルがあります。2026年度の農林水産大臣賞でも全国9地区の優秀鳩が選出されています。[参照:日本鳩レース協会「令和8年度 農林水産大臣賞&畜産局長賞」]

愛鳩家にとっては、賞品そのものより「○○レース総合優勝」「全国タイトル獲得」という実績が重要になる場合があります。その実績が後の鳩の評価にも影響するからです。

一般の連合会レースでも必ず同じ賞品が出るわけではない

ここで注意したいのが、八郷国際委託鳩舎の制度を日本全国すべての鳩レースへ当てはめることです。日本鳩レース協会によると、実際のレースは全国各地の競翔連合会、地区競翔連盟、ブロック連盟などでも開催されています。

それぞれ大会規程や表彰方法が異なるため、どのレースでも優勝すれば15万円相当がもらえるわけではありません。賞杯・賞状・トロフィー・賞品などを中心とする大会もあり、具体的な授賞内容は所属する連合会や当該レースの規程を確認する必要があります。

つまり「日本の鳩レースに賞金は出ますか」という疑問に対しては、「大会による。日本全体がヨーロッパ型の高額賞金制ではないが、現在は賞品相当額が設定された公式レースもある」という説明が最も実態に近いでしょう。

ヨーロッパの鳩レースはなぜ賞金のイメージが強い?

鳩レース発祥・本場の一つであるベルギーでは、賞金を伴う競技文化が古くから発達しています。日本鳩レース協会もベルギーについて「レースの賞金が非常に大きい」と紹介しており、賞金圏内に入ることを意識したレース文化が形成されていることが分かります。[参照:日本鳩レース協会「世界の鳩界事情」]

ヨーロッパでは優秀な鳩そのものが国際的な商品価値を持ちます。優勝鳩や優秀な血統の種鳩が高額で取引されることもあり、レース賞金と鳩の資産価値が結び付いている点が特徴です。

そのため、同じ「鳩レース」という言葉でも、日本の愛鳩家がイメージする競翔会のレースと、欧州の賞金レースでは競技を取り巻く経済規模がかなり異なる場合があります。

中国などではさらに大規模な賞金レースもある

高額賞金の鳩レースはヨーロッパだけではありません。中国では一時期、鳩レースが大規模な競技・ビジネスとなり、シーズン全体で巨額の賞金が動く大会も報じられています。

特に多数の鳩を一つの鳩舎で飼育し、同じ条件で競わせるワンロフトレースは、国際的には高額賞金大会と結び付くことがあります。

日本の八郷・伊賀国際委託鳩舎も「一つの施設へ鳩を委託して競わせる」という点では共通点がありますが、海外の巨額賞金大会と同規模ではありません。日本ではスポーツ・愛鳩趣味としての性格が依然として強いと考えた方がよいでしょう。

「賞金を賭ける鳩レース」と「主催者から賞品が出るレース」は同じではない

鳩レースとお金の話では、賞品が設定されていることと、参加者同士がお金を賭けることを混同しないことも重要です。

日本の刑法185条には賭博罪が定められているため、参加者がお金を賭け、その勝敗によって財物を得るような仕組みは法的な問題を生じる可能性があります。[参照:e-Gov法令検索「刑法」第185条]

一方、スポーツ大会などで主催者が優勝者へ賞品や賞金を提供することが、直ちに賭博になるわけではありません。資金の出所、参加料との関係、参加者間で財物の得喪を争う仕組みかどうかなど、制度全体で判断されます。そのため「日本で賞金が出たら違法」という単純な理解も正しくありません。

鳩レースでは勝った鳩そのものの価値が上がる

鳩レース独特の特徴が、選手である鳩そのものを所有者が所有していることです。競馬で競走馬の血統が重視されるのと同じように、レース鳩でも父母・祖父母の血統と競翔成績が重要視されます。

例えば500km、700km、900kmという複数レースで安定して上位に入った鳩は、種鳩として高く評価される可能性があります。その子どもや兄弟にも注目が集まり、売買・オークションでの価格へ反映されることがあります。

そのため、賞品相当額10万円を受け取ることよりも、「国際チャンピオン優勝鳩」という実績によって鳩や血統の価値が大きく上がる方が、愛鳩家にとって重要なケースもあります。

鳩レースは賞金目的だけでは採算が合いにくい

日本で鳩レースを始める場合、「優勝賞品で飼育費を回収できる」と考えるのは現実的ではありません。鳩舎の設置、レース鳩の購入・作出、餌、薬品、脚環、訓練、レース参加費、輸送費など、継続的に費用がかかります。

さらに長距離レースでは鳩が帰還しないこともあります。日本鳩レース協会自身も、鳩レースは費用と手間がかかるものだと説明しています。[参照:日本鳩レース協会「国際委託鳩舎レース」]

そのため日本では現在も、賞品を稼ぐ職業的競技というより、優秀な鳩を作り、訓練し、遠距離から帰還させ、全国タイトルを目指す愛鳩スポーツという性格が強いといえます。

日本とヨーロッパの鳩レースを比較

項目 日本 ヨーロッパの一部地域
競技目的 競翔成績・タイトル・愛鳩趣味の色が強い スポーツに加え賞金競技の色が強い地域もある
賞金・賞品 大会により異なる。公式委託鳩舎では賞品相当額あり 賞金レースが広く知られている
表彰 協会杯、賞状、各種タイトル 賞金、タイトル、トロフィー等
鳩の売買 優秀血統・入賞鳩は価値が上がる場合がある 世界的な高額取引も行われる
高額賞金レース 海外ほど一般的ではない ベルギー等で長い歴史がある

もちろんヨーロッパでも国や団体によって制度は異なるため、「欧州ならすべて高額賞金」というわけではありません。それでも、日本と比較すると賞金を意識した競技文化が強い地域が存在することは確かです。

日本で鳩レースを始めたい場合は所属団体の規程を確認

実際に日本で鳩レースへ参加し、「どのレースなら何がもらえるのか」を知りたい場合には、日本鳩レース協会の公式サイトだけでなく、参加予定の競翔連合会・地区競翔連盟へ確認する必要があります。

レースごとに参加条件、距離、参加料、表彰、賞杯、賞品などは異なります。年度によって授賞内容が変更されることもあります。

国際委託鳩舎についても、日本鳩レース協会の実施要綱には「授賞内容は委託鳩数によって変更する場合があります」と記載されています。金額だけを見て参加するのではなく、その年度の正式な実施要綱を確認しましょう。

まとめ|日本にも賞品相当額のある鳩レースはあるが、欧州型の高額賞金レースとは違う

日本の鳩レースについては、長い間「賞金はなく、優勝の名誉を競うスポーツ」と紹介されることが多くありました。現在でも、全国の一般的な競翔レースでは協会杯・賞状・タイトルなどを重視する文化が中心であり、ヨーロッパのような高額賞金レースが日本中で行われているわけではありません。

しかし、2027年度の日本鳩レース協会・八郷国際委託鳩舎レースでは、1位5万円・10万円・15万円などの「賞品相当額」が正式な実施要綱に記載されています。したがって「現在の日本の鳩レースには金銭的価値のある賞品が一切ない」とするのは正確ではありません。[参照:日本鳩レース協会「2027年度 八郷国際委託鳩舎レース実施要綱」]

さらに同レースでは、上位入賞鳩について所有者の同意を前提とした買い上げ制度があり、国際チャンピオンレース1位鳩には200万円の買上額が設定されています。ただし、これは優勝賞金200万円ではなく、あくまで鳩そのものの買い上げ代金です。

したがって日本とヨーロッパの違いを簡潔に整理すると、ヨーロッパの一部では賞金を獲得すること自体がレース文化の大きな要素であるのに対し、日本は賞杯・タイトル・競翔実績を中心としつつ、一部の公式委託鳩舎レースでは賞品相当額や入賞鳩の買い上げ制度も用意されている、という理解が適切です。

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