車で事故を起こした直後は、まず加入している自動車保険会社へ事故連絡をするのが一般的です。しかし、その後に勤務先などから「修理費や賠償金はこちらで負担する」と言われ、保険を使う必要がなくなるケースもあります。
このような場合に重要なのは、「保険会社へ事故を連絡したこと」と「実際に保険金を請求して保険を使ったこと」は同じではないという点です。事故受付をしただけで、必ずそのまま保険金を受け取らなければならないわけではありません。
ただし、すでに保険会社が相手方と示談を成立させた、修理代を支払った、保険金が支払われたなど、手続きが進んでいる場合は事情が変わります。事故後に会社負担へ変更したい場合の考え方を順番に確認していきましょう。
事故を連絡した後でも保険を使わないことは可能
交通事故が発生すると、保険会社には事故日時、場所、事故状況、相手方、損害状況などを伝えます。これは事故を保険会社へ報告し、必要に応じて対応してもらうための手続きです。
しかし事故受付をしたからといって、その時点で必ず保険金が支払われるわけではありません。損害額が小さい場合などには、保険会社へ相談したうえで最終的に保険を使わず自己負担とするケースもあります。
そのため、事故後に勤務先が費用を負担することになった場合も、まだ保険金が支払われていない段階なら、まず担当者へ「今回は保険を使用しない方向に変更したい」と伝えて確認することが重要です。
事故受付だけなら通常はノンフリート等級が下がるわけではない
自動車保険では、事故を起こした事実そのものだけで翌年度のノンフリート等級が決まるわけではありません。一般的には、その事故についてどの補償から保険金が支払われたかによって、3等級ダウン事故、1等級ダウン事故、ノーカウント事故などの扱いが決まります。
したがって、保険会社に電話して事故受付番号が発行されたというだけで、直ちに「保険を使った事故」として3等級下がるとは限りません。保険会社へ連絡したものの最終的に対象となる保険金を請求しなかった場合は、通常、単なる事故連絡だけを理由として等級ダウン事故になるわけではありません。
「事故を報告すると等級が下がる」のではなく、実際にどの保険を使用したかを確認することがポイントです。人身傷害など、利用しても等級に影響しない補償もあるため、事故ごとに保険会社へ確認するのが確実です。
会社負担へ切り替えるなら早めに保険会社へ伝える
勤務中や会社の車で事故を起こし、会社が損害を負担することになった場合は、その決定を保険会社の事故担当者へ早めに伝えます。「会社負担になったので保険請求を取り下げたい」と説明すれば、現在どの段階まで手続きが進んでいるか確認してもらえます。
例えば、事故受付をして担当者が決まっただけで、相手への支払いや示談がまだ行われていなければ、比較的整理しやすいケースです。一方、保険会社がすでに修理工場へ保険金を支払っているなどの場合には、単純な取り下げでは済まない可能性があります。
会社側にも、何を負担するのかを明確にしてもらいましょう。自社車両の修理代だけなのか、相手車両の損害も含むのか、代車費用や治療費まで含むのかによって必要な対応が変わります。
相手がいる事故では勝手に示談しないことが重要
物損事故などで相手方がいる場合は、会社が払うことになったからといって、保険会社へ知らせず直接相手へ金額を提示して示談するのは避けたほうが安全です。
事故では、修理見積額だけでなく過失割合、代車費用、評価損などが争点になることがあります。人身事故なら治療期間によって損害額が大きく変わることもあります。
また、自動車保険の約款には事故発生後の通知や示談について定めがあります。相手方との話し合いを会社側へ切り替える場合も、先に保険会社へ連絡し、どこまで対応済みなのか確認してから進めるのが安全です。
すでに示談成立・保険金支払い済みなら簡単には戻せない
判断を急ぎたいのが、保険会社の対応がすでに進んでいる場合です。保険会社が事故を受け付けただけなのか、それとも相手方と示談交渉を進めているのかによって状況は大きく違います。
特に示談が成立し、保険会社から相手方や修理工場へ保険金が支払われている場合には、「やはり会社が払うので事故受付をなかったことにしてください」と簡単に戻せるとは限りません。
一方、事故受付直後で支払い前なら選択肢が残っている可能性があります。そのため会社負担が決まった時点で、事故担当者へ連絡することが大切です。
保険を使うか会社負担にするかは損害総額で考える
会社が負担してくれる場合は会社側の判断が前提ですが、個人が自己負担と保険利用を比較する場合には、今回支払う金額だけを見るのではなく、翌年度以降の保険料への影響も考えます。
例えば小さな物損事故で修理代が数万円程度なら、保険を使わず支払ったほうが、等級ダウンによる将来の保険料増加を考えると有利になる場合があります。反対に損害額が数十万円、数百万円と大きければ、保険を利用するメリットが大きくなる可能性があります。
保険会社や代理店に「今回保険を使った場合、翌年度以降の保険料はいくら程度になるか」を試算してもらい、負担額と比較する方法があります。
会社が払うという意味を必ず確認しておく
業務中の事故で勤務先から「会社で負担する」と言われた場合でも、その意味は会社によって異なります。会社所有車の修理だけを会社が負担し、相手方への賠償は自動車保険を使うというケースも考えられます。
逆に、会社が契約している自動車保険を使うという意味で「会社が対応する」と説明されている可能性もあります。この場合、個人で加入している保険を取り下げるという話とは別になります。
そのため、誰の保険を使うのか、相手方への賠償を誰が担当するのか、自社車両の修理費を誰が支払うのかを勤務先に確認しておくと行き違いを防げます。
まず確認するべき3つのポイント
保険会社へ連絡済みの事故について会社負担へ変更したい場合は、「保険金はまだ支払われていないか」「相手方との示談は成立していないか」「会社は具体的にどの損害を負担するのか」の3点を確認すると状況を整理しやすくなります。
保険会社へは事故受付番号や証券番号を用意し、担当者へ会社負担になった経緯を伝えます。そのうえで、保険請求を取り下げられる段階なのか、すでに何らかの保険金支払いが発生しているのかを確認します。
事故内容によって扱いは異なるため、単に電話受付の担当者へ「キャンセルしてください」と伝えるだけではなく、事故担当者から現在の処理状況について説明を受けておくと安心です。
まとめ|事故連絡をしただけなら保険を使わない選択へ変更できる可能性がある
事故後に自動車保険会社へ連絡したものの、その後に勤務先が費用を負担することになった場合、事故受付をしただけの段階であれば、保険を使用しない方向へ変更できる可能性があります。
保険会社への「事故連絡」と、保険金が支払われる「保険使用」は区別して考えることが重要です。事故を報告しただけで必ず等級が下がるわけでもありません。
ただし、すでに保険会社が示談を成立させていたり、相手方・修理工場などへ保険金を支払っていたりすると、単純に取り下げられない場合があります。会社負担が決まったらできるだけ早く保険会社の事故担当者へ連絡し、「まだ保険金は支払われていないか」「請求を取り下げられるか」「等級への影響はあるか」を確認するのが確実です。