法律事務所の取扱分野なのに受任を断られることはある?有料相談・担当弁護士の変更・ホームページ表示の考え方

法律事務所のホームページに相談したい分野が「取扱分野」として掲載されていたため有料相談を予約したのに、面談の途中で「専門外なので受任できない」と言われると、相談者としては納得しにくいものです。さらに相談担当の弁護士が何度も席を外し、その時間を含めて相談料が発生したのであれば、「最初から断ってくれればよかった」「ほかの弁護士に代わってもらえないのか」と疑問を持つのも自然でしょう。

結論から整理すると、ホームページに取扱分野として掲載されていることは、その分野のすべての相談を必ず受任するという意味ではありません。また、複数の弁護士が所属する事務所であっても、相談担当者が受任できなかった場合に別の弁護士へ自動的に交代しなければならないという一般的な仕組みがあるわけでもありません。

一方で、実際にはその分野をほとんど扱っていないにもかかわらず、利用者に「この分野を扱っている事務所だ」と認識させる表示を続けているのであれば、広告表示として別の問題が生じる可能性があります。日弁連の弁護士業務広告に関する規程では、事実に合致しない広告や、誤導・誤認のおそれのある広告などが禁止されています。この記事では、有料法律相談と受任の違い、担当弁護士が分からないことを先輩に確認する意味、別の弁護士への引継ぎ、相談料への疑問、ホームページの取扱分野表示について順番に整理します。

法律相談を受けたことと事件を受任することは別

まず理解しておきたいのが、「法律相談」と「事件の受任」は別の契約・段階だという点です。法律相談は、相談者から事情を聞き、法律上の問題点や今後の対応について助言するサービスです。それに対して受任とは、その後の交渉、訴訟、申立てなどを弁護士が正式に依頼されて担当することを意味します。

そのため、有料相談を受けたからといって、その弁護士や法律事務所に必ず事件を引き受けてもらえるわけではありません。話を聞いた結果、利益相反、専門性、証拠関係、時間的余裕、事件の難易度、事務所の受任方針などから断られることはあります。

東京弁護士会の弁護士紹介制度でも、分野別の相談を受け付けながら、審査・選任の結果として弁護士を紹介できない場合があることが明記されています。つまり、「その分野を扱う窓口があること」と「特定の案件を必ず引き受けてもらえること」は制度上も別の話です。[参照:東京弁護士会「弁護士紹介センターとは」]

取扱分野に掲載されていても受任を断られる理由

例えばホームページに「不動産」「労働問題」「相続」「企業法務」などと掲載されていても、それぞれの分野にはさらに細かな専門領域があります。相続なら遺産分割、遺留分、相続税、国際相続、事業承継などがあり、不動産でも借地借家、建築紛争、境界問題、共有物分割などでは必要な経験が異なります。

そのため、事務所全体では「相続」を取り扱っていても、非常に特殊な国際相続については受任できないということがあります。また、その分野を担当できる弁護士がいても、利益相反がある、裁判期日が迫りすぎている、現在の案件数から対応できないなどの事情で断る場合もあります。

したがって、「取扱分野に載っているのに断られた」という事実だけで、直ちに不適切な事務所だと断定することはできません。問題になるのは、なぜ受任できないのか、相談受付の段階で確認できなかったのか、ホームページの表示が実態と合っているのか、といった具体的な事情です。

新人弁護士が途中で先輩に確認すること自体はおかしくない

相談中に担当弁護士が席を外し、先輩弁護士に確認している様子を見ると、「この人に任せて大丈夫なのか」と不安になるかもしれません。しかし、分からない点を曖昧なまま回答するより、経験のある弁護士に確認してから回答すること自体は必ずしも悪いことではありません。

法律問題には、条文だけではなく裁判例、実務運用、地域ごとの裁判所の取扱いなどまで確認しなければ正確な回答ができないものがあります。経験年数の短い弁護士が、自分だけで断定せず事務所内で確認することは、慎重な対応とも評価できます。

一方で、有料相談中に何度も長時間退席し、その時間について何の説明もなく相談時間として課金されていた場合には、利用者が不満を持つのは理解できます。確認することの適否と、その時間をどのように相談料へ反映するかは別の問題として考える必要があります。

10分以上席を外した時間も相談料になるのか

法律相談料には全国一律の料金があるわけではなく、各法律事務所が報酬基準を定めています。東京弁護士会は、弁護士が報酬を原則自由に定められる一方、報酬の種類、金額、算定方法、支払時期などを明示した報酬基準を備え、依頼者に示す必要があると案内しています。[参照:東京弁護士会「弁護士費用について」]

例えば「30分5,500円、以後15分ごとに2,750円」と定めている事務所であっても、弁護士が資料確認や所内相談のため退席した時間をどう扱うかについて、すべての事務所に共通する一律のルールがあるわけではありません。

ただし、相談者からすれば、10分以上待たされた時間まで課金されているのであれば確認する価値があります。「相談中に担当弁護士が合計○分程度退席していましたが、この時間も相談料の対象になっていますか」「当初の相談料の説明ではどのような扱いでしたか」と事務所へ問い合わせるのが第一歩です。

受任されなかったら相談料を払わなくてよい、とは限らない

「結局依頼を受けてもらえなかったのだから、相談料を返してほしい」と感じることもあります。しかし、有料法律相談の料金は一般に「事件を引き受けてもらうための成功報酬」ではなく、相談・法的助言というサービスに対する料金です。

そのため、最終的に受任に至らなかったという理由だけで、当然に相談料がゼロになったり全額返金されたりするとは限りません。実際、東京弁護士会の一般的な法律相談にも30分5,500円などの相談料が設定されており、相談後に必ず事件を受任する制度ではありません。[参照:東京弁護士会]

一方、「その事務所ではそもそも扱えない分野だった」「電話受付時に具体的な相談内容を伝えていた」「相談の大半が弁護士の退席時間だった」などの事情があるなら、返金や減額を求めて相談する余地はあります。返金義務があるかどうかは個別事情によるため、まず事務所側へ具体的に説明を求めるのが適切です。

弁護士が10人いても自動的に別の弁護士へ交代するわけではない

法律事務所に10人、20人と弁護士が所属している場合、「担当者が分からなければ、専門の人に代わればいいのでは」と考えるのはもっともです。実際、その場で別の弁護士が同席したり、後日担当者を変更したりする事務所もあります。

しかし、複数弁護士が所属しているからといって、相談担当者が受任できない事件をほかの弁護士へ必ず引き継ぐ義務が生じるわけではありません。各弁護士の担当分野、業務量、利益相反、勤務日、受任方針などによって対応は変わります。

また「同じ事務所内の別の弁護士なら相談内容をすぐ共有できる」と思いがちですが、誰が事件を受けるかについては事務所内部の判断があります。したがって、その場でバトンタッチしないこと自体は珍しい対応とは言い切れません。

ただし「事務所内に対応できる弁護士はいないのか」は聞いてよい

相談担当者から「自分の専門外なので受任できません」と言われた場合には、その場で「この事務所内に、この分野を担当している別の弁護士はいませんか」と確認して問題ありません。

ここで「○○弁護士なら対応可能なので相談を引き継ぎます」となることもあれば、「事務所として今回の種類の案件は扱えません」となることもあります。後者なら、ホームページに記載されている取扱分野と今回の案件が具体的にどう違うのかを尋ねると事情が分かりやすくなります。

例えば「労働問題は扱っていますが会社側のみです」「不動産事件は扱っていますが建築瑕疵訴訟は現在受任していません」など、表示上は同じ大分類でも対象が限定されていることがあります。

電話予約の段階で断れない場合もある

「受任できないなら電話で相談内容を聞いた時点で断ってほしい」と感じる人は少なくありません。実際、明らかに取扱対象外であることが受付段階で分かるなら、面談前に案内してもらえるほうが相談者にとって親切です。

ただし、電話受付をしているのが事務職員である場合、詳細な法律判断まで行うことはできません。また、相談者が電話で説明した内容だけでは問題の本質が分からず、契約書や証拠を確認して初めて特殊な案件だと判明することもあります。

したがって、「電話で断らなかった=受任可能だと保証した」という関係には通常なりません。一方で、予約時にかなり具体的な内容を伝えており、それでも「対応できます」と明確に案内された場合には、面談後の説明との食い違いについて尋ねてもよいでしょう。

ホームページの「取扱分野」はどこまで信じてよいのか

法律事務所のホームページにある取扱分野は、弁護士を探すうえで重要な情報です。しかし、「取扱分野」と「専門分野」「得意分野」「現在積極的に受任している分野」は必ずしも同じ意味ではありません。

例えば過去には扱っていたが現在の担当者が退職した、特定類型だけ受任を停止している、事務所全体では扱うものの相談担当者は経験がない、といったケースも考えられます。そのため取扱分野の記載だけでは、今回の具体的案件を担当できるかまでは分からないことがあります。

相談前には、「ホームページの○○という取扱分野を見ました。私の相談は△△という内容ですが、現在この種類の事件を受任している弁護士はいますか」と具体的に確認する方法が有効です。

実際に扱っていない分野を「取扱分野」と表示し続けてよいのか

ここは別の問題です。日弁連の「弁護士等の業務広告に関する規程」では、弁護士等が行う広告について、「事実に合致していない広告」「誤導又は誤認のおそれのある広告」「誇大又は過度な期待を抱かせる広告」などを禁止しています。

東京弁護士会も同規程について、事実に合致しない表示や、実際以上にその分野へ習熟しているような印象を与える表示などが問題になると説明しています。[参照:東京弁護士会「弁護士業務広告の注意点」]

第二東京弁護士会も、誤解を生む弁護士広告について、広告規程第3条が禁止する誇大広告などに該当する可能性があるとして注意喚起しています。[参照:第二東京弁護士会「誤解を生む弁護士広告にご注意ください」]

「一件断られた」だけでは広告違反とは判断できない

ただし、ホームページに取扱分野として書かれていた案件を一度断られただけで、「虚偽広告だ」と断定することも適切ではありません。前述のとおり、利益相反、担当者不足、期限、証拠、事件の特殊性など個別事情によって受任できない場合があるためです。

一方、電話で「当事務所はその分野をそもそもやっていません」と明確に回答されたにもかかわらず、現在もホームページでその分野を積極的に扱っているように表示しているのであれば、表示と実態との関係について疑問が生じます。

特に複数の法律事務所で同じ経験をした場合でも、「法律業界では普通だから仕方ない」と一括りにする必要はありません。それぞれの事務所に、掲載している分野と現在の受任対象がどのような関係なのか確認することができます。

「専門外」と「取扱分野ではない」は意味が違う

相談時に「専門外です」と言われた場合は、誰を主語としているのか確認すると分かりやすくなります。「私は専門外です」という意味なのか、「この事務所全体として専門外です」という意味なのかでは全く違います。

前者なら、同じ事務所に別の担当者がいる可能性があります。後者なら、「ホームページには取扱分野として掲載されていますが、現在は取り扱っていないという意味でしょうか」と確認できます。

この一言を確認するだけでも、「新人の担当者だけが対応できなかった」のか、「事務所の広告と現在の業務内容がずれている」のかを切り分けられます。

相談後に納得できない場合はまず事務所へ説明を求める

有料相談の内容や請求に納得できない場合、最初から懲戒などを考えるより、まず法律事務所へ問い合わせるのが現実的です。できれば感情的な表現を避け、事実を時系列に整理します。

例えば、「ホームページの○○分野を見て予約した」「予約時に△△という内容を伝えた」「面談では担当弁護士が何度か退席し、合計約○分待った」「最終的に専門外として受任を断られた」「相談料は○円だった」という形です。

そのうえで、「退席時間も課金対象だったのか」「事務所内の別の弁護士による相談へ振り替えられないか」「相談料の一部返金・減額は検討できないか」「ホームページの取扱分野と今回受任できなかった理由は何か」を尋ねると、争点が明確になります。

弁護士への苦情を受け付ける「市民窓口」もある

事務所へ確認しても納得できない場合には、対象弁護士が所属する弁護士会の相談窓口を利用できることがあります。例えば東京弁護士会では、所属弁護士の業務処理、報酬、言葉遣い、態度などに関する疑問や苦情を「市民窓口」で受け付けています。[参照:東京弁護士会「市民窓口」]

第二東京弁護士会でも、所属弁護士の業務処理内容、報酬、説明内容、態度などに関する疑問や苦情について無料の市民相談窓口を設けています。[参照:第二東京弁護士会「市民相談窓口」]

ただし、市民窓口は「相談料を必ず返金させてくれる窓口」ではありません。東京弁護士会は、必要に応じて懲戒手続や報酬・預り金等に関する紛議調停制度などを案内する窓口であり、個別事件の法律相談や弁護士の主張の正否を判定する場所ではないと説明しています。

ホームページ表示に疑問がある場合も記録を残しておく

「現在は取り扱っていないと言われたのに、ホームページには取扱分野として掲載されている」という場合には、そのページのURL、閲覧日、表示内容などを記録しておくと状況を説明しやすくなります。

ウェブページは後から変更される可能性があるため、必要であればスクリーンショットやPDF保存をしておきます。また、電話でどのような説明を受けたかも、日時と担当者名が分かれば簡単にメモしておきます。

弁護士会では、事実に合致しない広告や誤認のおそれのある広告を問題として扱っています。第二東京弁護士会では、業務広告に関する規程への違反が疑われる広告について情報提供を受け付ける仕組みもあります。[参照:第二東京弁護士会「非弁情報提供フォーム」]

次に法律事務所を探すときは「取扱分野」より一歩踏み込んで確認する

同じことを繰り返さないためには、予約時に単に「○○事件は扱っていますか」と聞くより、具体的な内容を短く説明して確認するのがおすすめです。

例えば「不動産問題を扱っていますか」だけではなく、「共有名義の土地について共有物分割請求を検討しています。この種類の事件を現在受任している弁護士はいますか」のように尋ねます。

そのうえで、有料相談なら「この相談は受任可能性を判断するための相談ですか」「担当予定の弁護士が相談を担当しますか」「専門外だった場合に別の弁護士へ変更できますか」「相談のみで受任できなかった場合も相談料は通常どおりですか」と確認しておくと、認識のずれを減らせます。

相談前に確認しておくとよい質問

特に専門性の高い案件では、予約時に次のような事項を確認すると安心です。

  • 今回の具体的な種類の事件を現在受任しているか
  • その分野を担当する弁護士が相談を担当するか
  • 担当者の経験が浅い場合に共同担当者が付くか
  • 事務所内で担当変更が可能か
  • 相談料はいくらで、延長料金はどう計算されるか
  • 資料確認や所内確認の時間も相談時間に含まれるか
  • 相談後に受任できない場合も通常どおり相談料が発生するか

すべての事務所が細かな質問に事前回答できるわけではありませんが、少なくとも相談者が何を期待しているのかを伝えられます。

また、弁護士会が運営する相談・紹介制度を利用する方法もあります。東京弁護士会では離婚、相続、労働、消費者問題、建築紛争、インターネット問題など分野別の弁護士紹介制度を設けています。[参照:東京弁護士会「紹介分野」]

まとめ|取扱分野に載っていても受任保証ではないが、表示と実態が違う場合は確認してよい

法律事務所のホームページに「取扱分野」として掲載されていても、その分野に属するすべての事件を必ず受任するという意味ではありません。事件の細かな内容、担当者の専門性、利益相反、期限、業務量などによって、有料相談の結果として受任を断られることはあります。

また複数の弁護士が所属していても、相談担当者が受任できなかった場合に別の弁護士へ自動的に交代する決まりがあるわけではありません。ただし、「事務所内に対応できる別の弁護士はいないか」「今回の案件はホームページにある取扱分野とどう違うのか」と確認することはできます。

新人弁護士が先輩へ確認すること自体も、正確な回答をするための慎重な対応になり得ます。一方、有料相談中に10分以上の退席が繰り返され、その時間まで課金されたのであれば、相談時間の計算方法について事務所へ説明を求めてもよいでしょう。受任されなかっただけで当然に返金されるとは限りませんが、予約時の説明や実際に提供された相談内容によっては減額・返金について話し合う余地があります。

さらに、「事務所ではその分野を実際には扱っていない」と明確に説明されたにもかかわらず、現在もホームページで取扱分野として表示している場合には、広告の実態について疑問が生じます。日弁連の広告規程は、事実に合致していない広告や誤導・誤認のおそれのある広告を禁止しています。

まずは法律事務所へ、受任できなかった理由、別の担当者の有無、退席時間を含む相談料の計算方法、ホームページ表示との関係を具体的に問い合わせることが適切です。それでも納得できない場合には、対象弁護士が所属する弁護士会の市民窓口などで、報酬や説明内容、対応について相談する方法があります。

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

上部へスクロール