スマートフォンへ非通知の着信が何度も続くと、「誰がかけているのか」「警察へ被害届を出せば調べてもらえるのか」と不安になることがあります。非通知とは、基本的に発信者番号を受信者の画面へ表示しない仕組みであり、「電話会社にも発信元が分からない」という意味ではありません。
ただし、非通知電話が数回あったというだけで警察が直ちに携帯電話会社へ照会し、発信者を特定してくれるわけでもありません。犯罪に該当する疑い、電話の頻度・内容、脅迫やストーカー行為との関連、被害の程度などを踏まえて警察が捜査の必要性を判断します。
また、「被害者のスマホを解析すれば非通知番号が表示される」という単純な仕組みでもありません。重要になるのは端末だけではなく、着信日時などの証拠、通信事業者側に残っている可能性のある通信記録、事件性などです。この記事では、繰り返される非通知電話について警察がどこまで対応できるのか、スマホ解析で分かること、相談前に保存しておきたい証拠を解説します。
非通知電話とは「発信番号を相手に表示しない」電話
電話をかける際、発信者番号を通知しない設定や「184」を付けた発信などを利用すると、受信側には「非通知」「Unknown」などと表示されることがあります。
この場合、受信したスマートフォンの通常の着信履歴には発信者の電話番号が表示されません。そのため受信者自身が着信履歴を開いても、そこから相手の番号を確認することは基本的にできません。
しかし、受信者の画面で番号が非表示になっていることと、電話網の中に発信に関する情報が一切存在しないことは別問題です。通信事業者はサービス提供や料金計算、設備運用などのため一定の通信関連情報を取り扱っており、適法な捜査が行われる事件では捜査機関が必要な情報について照会等を行うことがあります。
警察へ相談すれば必ず相手を特定してくれるわけではない
非通知電話が何度かあったことを警察へ相談すること自体は可能です。ただし「不快だから発信者を調べてほしい」と申し出れば、必ず捜査が始まって発信者を特定してもらえるという制度ではありません。
警察が捜査を行うには、犯罪が行われた疑いなど捜査を必要とする事情が重要になります。たとえば短期間に大量の無言電話が繰り返されている、電話で殺害や危害を示唆された、元交際相手からのストーカー行為の一部として電話が続いている、といった事情があれば事件性は高くなります。
反対に、非通知着信が数回記録されているだけで、通話にも出ておらず相手や目的も不明というケースでは、直ちに犯罪として捜査されないこともあります。まず相談記録を残し、着信が続く場合に追加情報を提供するという流れになることもあります。
「被害届を出したら警察は動く?」はケースによって違う
被害届は、犯罪による被害があったことを捜査機関へ申告するためのものです。そのため「被害届を出した=必ず捜査開始・犯人特定・逮捕」となるわけではありません。
警察は申告された内容、証拠、犯罪の成否、緊急性などを確認します。非通知電話についても、具体的な犯罪に該当する事情があれば捜査対象となる可能性があります。
まだ犯罪に当たるか分からない段階でも相談はできます。緊急の事件・事故ではない警察への相談について、警察庁は警察相談専用電話「#9110」を案内しています。生命・身体への危険が迫っている、今まさに脅迫されているなど緊急の場合は110番を利用します。
繰り返す無言電話はストーカー規制法の対象になる場合もある
相手との関係によっては、繰り返される無言電話や連続電話がストーカー規制法の問題になることがあります。
警察庁は、ストーカー規制法における「つきまとい等」の一例として、無言電話や、拒否されたにもかかわらず連続して電話をかける行為を挙げています。ただし、ストーカー規制法が適用されるためには、恋愛感情その他の好意の感情、またはそれが満たされなかったことへの怨恨など、法律上の要件があります。
そのため、知らない人物が単なるいたずら目的で電話しているケースが自動的にストーカー規制法になるわけではありません。一方、元交際相手や一方的に好意を寄せる人物が何度も非通知電話をかけている場合には、過去の関係も含めて警察へ説明することが重要です。
無言電話だけでも記録を残しておく価値がある
警視庁はストーカー被害への防犯対策として、無言電話や連続電話について日時・内容などを記録・保存し、着信記録や着信画面の写真を残すことを案内しています。
これは発信者が分からない非通知電話でも同じです。「非通知だから証拠にならない」と着信履歴を消してしまうより、日時と回数を残すほうが後から状況を説明しやすくなります。
たとえば「8月20日午前1時03分、1時08分、1時15分」「8月21日午後11時台に7回」という形で並べれば、単発の着信なのか継続的な嫌がらせなのかを第三者が判断しやすくなります。
スマホを解析すれば非通知の電話番号が分かる?
一般的なスマートフォンでは、非通知着信を受けた際に発信者番号そのものが端末へ通常表示されません。そのため、スマホの着信履歴を専門家が解析すれば必ず隠された電話番号が復元できる、というものではありません。
端末側には「非通知着信が○月○日○時○分にあった」といった情報が残っていても、発信番号そのものが端末へ提供されていなければ、端末だけを調べても番号を取り出せない場合があります。
捜査で発信者を追う場合には、スマホに残った記録だけでなく、通信事業者が保有している契約者情報や通信関連記録など、別の情報源が重要になることがあります。
警察は通信会社へ情報を照会できる場合がある
犯罪捜査では、警察が民間事業者へ必要な情報について照会する制度があります。個人情報保護委員会も、刑事訴訟法197条2項に基づいて警察などの捜査機関から顧客情報について照会が行われる場合があることを公式FAQで説明しています。
同FAQでは、このような捜査関係事項照会への回答は個人情報保護法上の「法令に基づく場合」に該当し、事業者が本人の同意を得ずに情報提供できるとされています。
つまり事件性が認められて適法な捜査が行われれば、警察が必要に応じて通信事業者などへ照会等を行うことはあり得ます。ただし、どの情報を取得できるか、保存されているか、どの手続が必要かは個別の事件や情報の種類によって異なります。
[参照] 個人情報保護委員会「警察からの捜査関係事項照会への回答」
非通知でも通信会社なら必ず犯人が分かるとは限らない
「非通知でも電話会社には全部見えているから、警察なら100%特定できる」と考えるのも正確ではありません。
通常の国内電話回線から単純に番号を非通知設定して発信したケースと、海外通信、IP電話、各種通信サービス、番号表示を偽装する技術などが関わるケースでは追跡の難易度が異なります。また、通信記録には保存期間などの問題もあります。
警察庁は特殊詐欺について、実在する警察署などの電話番号を偽装して着信画面へ表示させる手口も確認しています。つまりスマホ画面に表示された番号だけで本当の発信元を断定できないケースも存在するということです。
通信会社へ個人が頼めば相手の番号を教えてもらえる?
非通知電話を受けた本人が携帯電話会社へ電話して、「誰からだったか番号と契約者名を教えてほしい」と頼んでも、通常は相手の契約者情報を自由に開示してもらえるわけではありません。
電話番号や契約者情報などは個人情報や通信の秘密に関係する情報であり、通信会社が利用者の希望だけを理由に第三者の情報を開示できるものではないためです。
一方、警察による適法な犯罪捜査では、法律に基づく照会や令状を伴う手続などが利用される場合があります。つまり「本人が通信会社から直接教えてもらう」のと「警察が事件捜査として必要な情報を取得する」のは別の仕組みです。
警察に相談するときに持っていきたい記録
非通知電話が繰り返されている場合、相談時には「最近たくさん来ます」という説明だけでなく、具体的な記録をまとめると状況が伝わりやすくなります。
| 保存するもの | 内容 |
|---|---|
| 着信履歴 | 非通知着信が表示されている画面を削除せず保存 |
| スクリーンショット | 日時・回数が分かる状態で撮影 |
| メモ | 何月何日、何時何分、何回かかってきたか |
| 通話内容 | 出た場合に何を言われたか、無言だったか |
| 留守番電話 | 音声が残っていれば消さずに保存 |
| 関連メッセージ | 同じ時期のSMS・SNS・メールなど |
| 心当たり | 元交際相手、トラブル相手などがいれば経緯 |
| 生活への影響 | 睡眠妨害、仕事への支障、外出への恐怖など |
特に「着信頻度」と「いつから始まったか」は重要です。数週間の記録を一覧化すれば、嫌がらせの継続性が分かりやすくなります。
知らない非通知電話には無理に出なくてもよい
相手を突き止めたいからと、非通知電話へ毎回出たり、相手を挑発したりする必要はありません。相手が単なるいたずら目的なら、反応することで電話が増える可能性もあります。
電話に出てしまった場合も、自分の氏名、住所、勤務先、家族構成などを教えないようにしましょう。警察官、金融機関、公的機関などを名乗って金銭や口座情報を要求してきた場合は、一度電話を切り、相手から指定された番号ではなく公式の連絡先を自分で確認します。
警察庁も、不審な電話について不安を感じたら#9110などへ相談するよう案内しています。
非通知着信拒否を使う方法もある
発信者を調べる必要がなく、とにかく非通知電話を止めたい場合は、スマートフォンや通信会社が提供している着信拒否機能を利用する方法があります。
端末によっては不明な発信者を消音したり、番号を通知しない電話を拒否したりできます。また固定電話向けには、番号通知を求めるサービスなども提供されています。
警察庁も特殊詐欺対策として番号表示・非通知拒否サービスや、防犯機能付き電話の活用を紹介しています。ただし重要な電話が非通知でかかってくる可能性がある人は、拒否設定の影響を確認してから利用しましょう。
いたずら電話でも内容によっては犯罪になる可能性がある
「面白半分で電話しているだけなら犯罪にはならない」とは限りません。電話で具体的な危害を告げれば脅迫などが問題になる可能性がありますし、相手との関係や行為態様によってストーカー規制法、各都道府県の迷惑防止条例などが問題になることもあります。
また、短期間に大量の電話をかけ続け、相手の生活や業務を著しく妨害するようなケースでは、単なる一度のいたずら電話とは法的評価が変わる可能性があります。
どの犯罪に当たるかは電話の内容・回数・目的・当事者関係などによって変わるため、自分で罪名を決めてから警察へ行く必要はありません。「いつから」「どれくらい」「どんな内容」という事実をそのまま相談することが重要です。
「何回かかってきたら警察が動く」という明確な回数基準はない
非通知電話が5回なら問題なく、10回なら犯罪になる、といった全国一律の回数基準があるわけではありません。
警察庁資料でも、ストーカー規制法における電話の「連続して」とは短時間・短期間に何度も行う意味であり、具体的には個々の事案で判断されるとされています。
たとえば一晩で数十回の無言電話が来るケースと、半年間に5回程度の非通知着信があるケースでは状況が違います。また電話だけでなく、待ち伏せやSNSメッセージなど別の行為が同時に起きていれば危険性の評価も変わります。
相手に心当たりがあるなら警察へ伝える
非通知電話だけでは発信者が見えませんが、「別れた直後から始まった」「職場でトラブルになった翌日から毎晩かかってくる」など、時期と出来事が一致している場合があります。
このような心当たりがある場合は、断定せず「○○という人物とトラブルがあり、その翌日から非通知着信が始まった」という形で警察へ伝えます。
自分で相手の家へ行ったり、SNSで実名を挙げて犯人扱いしたりすることは避けましょう。実際には別の人物だった場合、別のトラブルへ発展する可能性があります。
電話に脅迫内容があったら音声を保存する
電話に出た際、「殺す」「家に行く」「家族に危害を加える」など具体的な脅しがあった場合は、単なる迷惑電話として放置しないほうがよいでしょう。
留守番電話に音声が残っていれば削除せず保存し、端末で通話録音を利用できる場合は法律や端末仕様を確認したうえで証拠として残すことも検討できます。録音がなくても、電話直後に言われた内容をできるだけ正確にメモします。
今まさに相手が自宅へ向かっているなど生命・身体への差し迫った危険がある場合は#9110ではなく110番への通報を検討してください。
警察相談と被害届は同じではない
「警察へ行く=その場で被害届を出さなければならない」と考える必要はありません。まず相談して状況を説明し、事件としてどのような対応が考えられるか確認する方法があります。
警察相談専用電話#9110は、犯罪や事故が発生しているか明確でないものの警察へ相談したい場合にも利用できます。各都道府県警察の相談窓口につながります。
相談した日時、担当部署、説明した内容などを自分でも記録しておくと、その後電話がエスカレートした際に「以前から継続している」と説明しやすくなります。
スマホを初期化したり履歴を消したりしない
不安になって電話番号を変更したりスマートフォンを初期化したりしたくなる場合がありますが、警察へ相談する予定なら、先に必要な記録を保存しておくことが重要です。
特に着信履歴、留守番電話、SMS、相手と思われる人物とのSNSメッセージなどは証拠になる可能性があります。スクリーンショットを撮り、可能であれば別の端末やクラウドなどにもバックアップします。
電話番号を変更する必要があるほど深刻なケースでは、変更前の番号や着信履歴も記録したうえで警察や通信会社へ相談するとよいでしょう。
状況別の対応を整理
| 状況 | 考えられる対応 |
|---|---|
| 非通知着信が数回あるだけ | 履歴保存、非通知拒否、様子を見る |
| 毎日・深夜に何度も続く | 日時を記録し#9110や警察署へ相談 |
| 無言電話が連続する | 着信履歴を保存し、当事者関係も含め警察へ相談 |
| 元交際相手の可能性があり他のつきまといもある | ストーカー被害として早めに警察へ相談 |
| 脅迫・危害予告がある | 録音・メモを保存し警察へ。緊急なら110番 |
| 詐欺を疑う内容 | 個人情報や金銭を渡さず電話を切って#9110等へ相談 |
特に、着信回数が徐々に増えている場合や電話以外の嫌がらせが始まった場合は、早い段階で相談したほうが状況を共有できます。
まとめ:非通知でも捜査で発信者を追える可能性はあるが、スマホ解析だけで分かるわけではない
非通知電話は、発信者番号が受信者のスマートフォンへ表示されないようにした電話です。そのため着信履歴を見ても、自分で相手の電話番号を確認することは基本的にできません。
一方、「非通知だから警察にも絶対に発信元が分からない」という意味でもありません。事件として捜査が必要と判断された場合には、警察が法律に基づいて通信事業者などへ必要な情報について照会等を行うことがあります。個人情報保護委員会も、刑事訴訟法197条2項に基づく警察の捜査関係事項照会によって事業者が顧客情報を提供する場合があることを案内しています。
ただし、非通知着信があるというだけで警察が必ず通信会社を調査して相手を特定してくれるわけではありません。犯罪性、頻度、電話の内容、脅迫の有無、ストーカーとの関連などを踏まえて対応が判断されます。
また「警察がスマホを解析すれば非通知番号が簡単に復元される」という理解も正確ではありません。端末側に番号自体が記録されていなければ、スマホだけでは番号が判明しないことがあります。事件捜査では、端末の着信記録と通信事業者側の情報などを組み合わせて調べることがあります。
繰り返す電話に困っている場合には、まず着信履歴を消さず、日時・回数のスクリーンショットを残す、留守番電話や通話内容を保存する、関連するSMS・SNSも保管することが重要です。警視庁も連続する無言電話などについて日時・内容・着信記録を保存するよう案内しています。
単なる迷惑電話なのか事件性があるのか判断できない場合は警察相談専用電話「#9110」へ相談できます。元交際相手などによる無言電話・連続電話の場合はストーカー規制法の対象になる可能性もあります。危害を加えるという脅迫がある、現在相手が自宅付近にいるなど緊急性がある場合には110番を検討してください。
発信者を自分で突き止めようとして不審な人物へ連絡したり、SNS上で犯人だと断定したりするより、記録を残して警察と通信会社へ相談するほうが安全です。