突然、警察を名乗る相手から「あなたの銀行口座に送金があり、話を聞きたい」と電話が来れば、身に覚えがないほど不安になるものです。しかし、この連絡だけで犯罪への関与や逮捕などが決まったと考える必要はありません。事件やトラブルに関係する振込履歴の中に口座が出てきたため、事実関係を確認したいというケースも考えられます。
一方で、近年は警察官をかたる特殊詐欺が問題になっており、スマートフォンに表示された電話番号が実在する警察署の番号だから本物、と判断することもできません。警察庁は、実在する警察署等の電話番号を発信者番号として偽装表示させる手口を確認したと注意喚起しています。[参照:警察庁]
したがって、まず行うべきことは「自分が疑われているのか」を推測することではなく、連絡してきた相手が本当に警察官なのかを独立した方法で確認し、そのうえで事情聴取の目的を確認することです。
口座への送金について警察が事情を聞く理由とは
犯罪捜査では銀行口座の入出金履歴が手掛かりになることがあります。例えば詐欺事件で被害者から振り込まれたお金が複数の口座を経由していた場合、捜査の過程で送金先や資金移動に関係した口座が確認されることがあります。
金融庁が公開する振り込め詐欺救済法の概要でも、詐欺などで振込先となった口座だけでなく、そこから資金が移転した先の口座も「犯罪利用預金口座等」の対象となり得る仕組みが示されています。[参照:金融庁]
ただし、ある口座に犯罪関連資金が振り込まれたという事実と、その口座名義人が犯罪を行ったということは同じではありません。第三者から送金された理由、送金者との関係、取引の内容などを確認しなければ判断できないからです。
事情を聞かれる=容疑者とは限らない
警察が事件について話を聞く対象は被疑者だけではありません。事件の被害者、目撃者、取引相手など、事情を知っている可能性がある人から話を聞くこともあります。警察庁の犯罪被害者向け資料でも、捜査の過程で事情聴取や証拠品の提出などが行われることが説明されています。[参照:警察庁]
例えばネットオークションやフリマ、商品の個人売買、副業などで過去に受け取った代金について、その送金元が後から別の事件に関係していることが判明するケースも考えられます。その場合、受取人へ「この入金は何の代金だったのか」と確認することには捜査上の意味があります。
したがって「仕事の都合がつく日を教えてほしい」と日程調整を求められたという事情だけから、逮捕される、犯罪者扱いされている、と結論付けることはできません。反対に、電話口の雰囲気が穏やかだったから重要な話ではない、と判断することもできません。
電話番号が本物でも必ず警察からとは限らない
特に注意したいのが発信者番号です。着信履歴に表示された番号を検索し、実在する警察署の電話番号と一致したとしても、それだけで本人確認を終えてはいけません。
警察庁は2025年、警察本部や警察署などの実在する電話番号を偽装して表示させる特殊詐欺について注意喚起しました。実際の事例では、警察の代表番号が表示された電話から「あなた名義の口座が事件に関係している」などと言われ、最終的に金銭を振り込ませる手口が確認されています。[参照:警察庁「警察に偽装した電話番号に注意!」]
つまり「ネット検索したら番号が警察署と一致した」という確認だけでは不十分です。いったん電話を切り、自分で警察署の公式サイトなどから代表番号を調べ、その番号へ自分から電話する方法が安全です。
本物か確認するときの具体的な手順
警察を名乗る電話を受けたら、相手の言った番号へそのまま折り返すのではなく、まず「警察署名・所属部署・担当者の氏名」を確認しておきます。事件や問い合わせを識別するための情報を教えてもらえる場合には、それもメモしておきます。
次に電話を切り、都道府県警察の公式サイトなどから該当する警察署の代表番号を自分で調べて電話します。「○○課の○○さんという方から連絡を受けたので、在籍と用件を確認して折り返したい」と伝えれば確認できます。
不安が残る場合には警察相談専用電話「#9110」へ相談する方法もあります。警察庁も、警察官をかたる電話に不安を感じた場合には#9110へ相談するよう案内しています。[参照:警察庁 SOS47]
本物の警察だった場合は何を確認される?
本当に捜査上の事情聴取であれば、問題となっている入金について「この送金者を知っているか」「何の代金として受け取ったのか」「いつ、どのような取引をしたのか」など、事実関係を確認される可能性があります。
例えば身に覚えのない入金なら、そのまま「知らない」「取引した記憶がない」と説明することになります。過去の商品売買などに心当たりがあれば、取引記録、メッセージ、領収書、振込履歴などが確認材料になる場合があります。
この段階では記憶を無理に埋めようとしないことが重要です。分からないことを推測で答えるより、「現時点では覚えていないので履歴を確認したい」と正確に説明するほうが適切です。
銀行口座の履歴を先に確認しておく
警察から口座への送金について話を聞きたいと言われたのであれば、本人確認が取れた後、どの時期・どの取引についての話なのか確認すると準備しやすくなります。
インターネットバンキングや通帳で入出金履歴を確認し、覚えのない入金がないかを見ておきましょう。心当たりのある取引なら、フリマアプリ、オークション、SNS、メール、仕事上の請求などと照合します。
ただし、相手が本物だと確認できていない段階で、電話口で口座の暗証番号、インターネットバンキングのパスワード、ワンタイムパスワードなどを伝えてはいけません。警察庁も、警察官が電話などで暗証番号等を教えるよう求めることはないと注意喚起しています。[参照:警察庁]
「口座を調査するから送金して」はニセ警察を疑う
本物の警察への確認が特に重要なのは、ニセ警察詐欺で銀行口座が話題にされることが多いためです。「あなたの口座が犯罪に使われている」「資金洗浄事件に関係している」「資産を調べる必要がある」と不安をあおり、別口座への送金を要求する手口があります。
「資金を確認するため指定口座へ振り込んで」「安全な口座へ移して」「インターネットバンキングで送金して」などと要求された場合は、その指示に従わないでください。警察庁は、口座調査などを理由として金銭を振り込ませるニセ警察詐欺について繰り返し注意を呼びかけています。[参照:警察庁 ニセ警察詐欺に注意]
SNSへ移動するよう求められたり、ビデオ通話で警察手帳や逮捕状らしきものを見せられたりした場合にも注意が必要です。警察庁は、警察官・検察官をかたってビデオ通話を利用する詐欺についても注意喚起しています。[参照:警察庁]
口座が凍結される可能性はある?
事件に利用された疑いのある口座については、状況によって金融機関が取引停止などの措置を取る制度があります。振り込め詐欺救済法では、金融機関が犯罪利用預金口座等である疑いがあると認めた場合に取引停止等の措置を講じる仕組みが定められています。
しかし、警察から事情を聞きたいという連絡があっただけで、必ず口座が凍結されるわけではありません。どのような送金なのか、口座がどのように使われたのかなど具体的事情によって異なります。
万一、銀行から利用制限などの連絡も来ている場合には放置せず、銀行の公式窓口へ自分から連絡して理由と必要な手続きを確認しましょう。
まとめ:まず警察署へ自分から電話して本人確認をする
警察から「あなたの口座に送金があり、話を聞きたい」と連絡された場合、それだけでは本人が犯罪を疑われているのか、単に取引関係者として事情を確認したいのかは判断できません。事件に関係する資金の流れを確認するため、口座名義人へ事情を聞く可能性はあります。
一方、現在は実在する警察署の電話番号を偽装表示する特殊詐欺も確認されています。そのため「着信番号を検索したら本物だった」だけではなく、いったん電話を切り、公式情報から調べた警察署の代表番号へ自分から電話して、部署と担当者を確認することが重要です。
本物だと確認できたら、事情聴取の日時や持参する資料を確認し、分かる範囲で入出金履歴や過去の取引を整理しておきます。身に覚えがなければ、その事実をそのまま説明すればよく、分からないことを推測して話す必要はありません。反対に、金銭の送金、暗証番号・パスワードの提供、SNSへの移動などを要求された場合には応じず、警察署の公式窓口や#9110へ改めて確認することが安全です。