昔は正月なら飲酒運転しても見逃された?40年以上前の飲酒運転の法律・取締り・罰則の歴史を解説

「昔は飲酒運転に今ほど厳しくなかった」「正月くらいなら警察に止められても注意だけで帰された」といった昔話を耳にすることがあります。特に昭和の時代については、現在とは飲酒運転に対する社会の意識が大きく異なっていたという記憶を持つ人も少なくありません。

しかし、ここでは法律上どうだったのかと、当時の社会風潮や個別の取締りがどうだったのかを分けて考える必要があります。

結論からいうと、40年以上前の1980年代前半でも「正月三が日は飲酒運転をしてもお咎めなし」という法律上の特例はありませんでした。むしろ当時の警察資料でも、酒酔い・酒気帯び運転は悪質・危険な違反として取締りの対象になっていたことが確認できます。

飲酒運転は1960年の道路交通法制定時から禁止されていた

日本の飲酒運転規制は最近始まったものではありません。警察庁がまとめた飲酒運転対策の歴史によると、道路交通法が制定された昭和35年(1960年)の時点ですでに、一定以上のアルコールを身体に保有した状態での酒気帯び運転が禁止されていました。

当初は現在と制度が異なり、酒気帯び運転について禁止規定はあったものの、罰則が科されるのは酒酔い運転でした。その後、規制は段階的に強化されています。[参照:警察庁 交通事故との闘いの軌跡]

大きな転換点の一つが昭和45年(1970年)です。この改正ではアルコール濃度の高低にかかわらず飲酒運転を一律に禁止するとともに、酒気帯び運転にも罰則が設けられました。したがって「1980年代くらいまでは飲酒運転そのものが合法だった」という理解は正しくありません。

40年以上前の1980年代にも酒気帯び運転には罰則があった

例えば1983年前後を考えると、1970年の法改正からすでに10年以上が経過しています。当時の酒気帯び運転には3月以下の懲役または3万円以下の罰金という罰則が設けられていました。

酒酔い運転についてはさらに重く、1970年の改正で2年以下の懲役または5万円以下の罰金となり、1978年には行政処分の点数も引き上げられ、酒酔い運転は1回で免許取消しとなる15点になっています。[参照:警察庁 警察白書]

現在と比べれば罰金額や酒気帯びの基準などには違いがありますが、「昔は飲酒運転しても処罰されなかった」という制度ではなかったことは押さえておく必要があります。

「正月三が日は見逃す」という特例があったとは確認できない

では「普段は捕まるけれど、正月三が日だけは見逃された」という制度があったのでしょうか。少なくとも道路交通法上、正月だから飲酒運転の禁止や罰則が適用されなくなるという例外はありません。

元日、1月2日、1月3日であっても道路交通法は適用されます。「お屠蘇を飲む時期だから」「正月だから多少の酒は仕方がない」という理由で飲酒運転が合法になる制度ではありませんでした。

したがって、昔聞いた「正月なら警察に止められてもお咎めなしだった」という話が、全国一律の正式な制度や警察のルールだったと理解するのは適切ではありません。

ただし昔は飲酒運転への社会的な感覚が現在と違った

一方で、「昔は今より飲酒運転に寛容だった」という印象そのものには背景があります。現在に至るまで飲酒運転に対する罰則や行政処分は何度も強化されてきました。

例えば警察庁の資料では、1980年代にも無免許運転、酒酔い・酒気帯び運転、著しい速度超過、信号無視などを悪質・危険な違反として重点的に取り締まっていたことが確認できます。昭和58年警察白書では、昭和57年の交通取締りについて酒酔い・酒気帯び運転などに重点を置いたと記録されています。[参照:警察庁 昭和58年警察白書]

つまり、当時も警察は飲酒運転を取り締まっていました。ただし現在ほど社会全体で「飲んだら絶対に運転しない」という認識が徹底されていなかった時代があり、その社会風潮の違いが「昔は大丈夫だった」という記憶につながっている可能性があります。

「実際に見逃してもらった」という昔話は法律とは別問題

昔の体験談として「警察官に止められたけれど注意だけだった」「家が近いから帰された」といった話が残っている可能性はあります。しかし、そのような個人の体験談が事実だったとしても、それだけで当時の飲酒運転が合法だったことにはなりません。

法律上のルールと、数十年前の特定の場所・警察官・状況における個別対応は分けて考える必要があります。また、昔話は長い年月の間に「酒を飲んでいたが検査対象にならなかった」という話が「飲酒運転を見逃してもらった」という話へ変化している可能性もあります。

特に当時と現在では、酒気帯び運転として処罰対象になるアルコール濃度の基準も同じではありません。そのため、現在の基準や感覚だけを使って数十年前の個別事例を判断することもできません。

飲酒運転はその後さらに厳罰化された

昔と現在で大きく違うのは、飲酒運転に対する罰則や行政処分が長い年月をかけて強化されてきたことです。1987年には酒酔い運転・酒気帯び運転の罰則が引き上げられ、その後も重大な飲酒事故などを背景として規制が強化されました。

2002年には罰則や行政処分がさらに強化され、罰則対象となる酒気帯び運転の基準値も呼気1リットル当たり0.25mgから0.15mgへ引き下げられました。警察庁は、飲酒運転をはじめとする悪質・危険な運転への取締り、罰則、行政処分を長年にわたり強化してきた経緯を公表しています。[参照:警察庁]

このような歴史があるため、「昔と比べて今は非常に厳しくなった」という感覚は間違いではありません。しかし、それは「昔は合法だった」「正月なら免除された」という意味ではありません。

現在は飲酒運転だけでなく周囲にも厳しい責任がある

現在の飲酒運転に対する制度はさらに厳格です。警察庁によると、酒気帯び運転は所定のアルコール濃度以上で刑事罰の対象となり、行政処分についても免許停止や取消しにつながります。[参照:警察庁 飲酒運転を絶対にしない、させない]

さらに現在では運転者本人だけではなく、一定の場合には飲酒運転をするおそれがある人へ車を提供した人、酒類を提供した人、同乗した人などにも罰則があります。

そのため昔の体験談を聞いて「少しくらいなら現在でも大丈夫」と考えることはできません。アルコールの分解には個人差があり、前夜の飲酒によって翌朝にもアルコールが残る場合があるため、運転する予定がある場合は飲酒量や時間にも十分な注意が必要です。

まとめ:40年以上前でも正月なら飲酒運転OKという時代ではなかった

40年以上前の1980年代にも飲酒運転は道路交通法で規制され、酒気帯び運転や酒酔い運転には罰則・行政処分が存在していました。正月三が日だから飲酒運転をしてもお咎めなしになるという法律上の特例もありません。

一方、飲酒運転に対する社会の意識や罰則の重さは現在とはかなり異なり、その後何度も厳罰化されています。そのため、地域や時代によって「昔は今より緩かった」という体験談が語られること自体は不思議ではありません。

ただし「昔は取締りや社会の目が現在ほど厳しくなかった」という話と、「昔は正月なら合法だった」という話はまったく別です。警察庁の公的資料から確認できる制度の歴史を見る限り、少なくとも40年以上前の1980年代について「正月三が日は飲酒運転を見逃す正式な制度があった」とする根拠はなく、当時も飲酒運転は明確に取締りの対象でした。

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